バスター

野球・ソフトボールでバントの構えからヒッティングに移行する打法

バスターとは、野球ソフトボールにおいて打者バントの構えで打席に立ち、投手が投球動作に入ってからヒッティングに切り替える打法のこと。

解説 編集

バスターという呼び方は和製英語で、英語ではslash buntfake bunt and swingbutcher boyslug buntなどと言う。日本でこの名称が使われるようになったのは、元日本教育テレビ(現在のテレビ朝日)アナウンサーの太田眞一によると、1965年昭和40年)に読売ジャイアンツアメリカ合衆国フロリダ州ドジャースのベロ・ビーチキャンプに参加した時の出来事に始まる。ジャイアンツのヘッドコーチであった牧野茂が当時ドジャースの三塁コーチだったプレストン・ゴメス英語: Preston Gómezと一緒に練習を見ていた際に、バントの構えからヒッティングをする選手を見たゴメスが「Oh! Bastard!」と繰り返し言うの聞き、このバントの構えからのヒッティングをアメリカでは「バスター」と呼ぶのだと勘違いした。牧野がこの意味でこの言葉を持ち帰ったことで、日本の野球界に誤用が広まったということである。後に太田がゴメスにこの言葉の意味を尋ねたところ「冷やかし半分で『結構やるじゃないか』と褒める意味だった」ということである[1]。太田によれば「バスターは勘違いで広まってしまった、誤った野球用語である」としている[1]

日本では、バスターの名称が広まる以前は「プッシュ打法」とも呼ばれていた[2]

バントを敢行すると気付かれた場合、相手チームはバントを阻止するためにバントシフトと呼ばれる守備陣形を敷くことがある。この際にバントからバスターに切り替え、シフトの変更によって生じた隙を狙うことがよく見られる。他に、バントだと思わせることで打者にとって打ちやすい球種を投げさせる目的で使用されたり、バスターとヒットエンドランを組み合わせたバスターエンドランと言う戦術もよく用いられる。

投手からリリースされた球をよく見ることができ、テイクバックを小さくしないと振り遅れやすい事から自然とコンパクトなスイングになるため、長打は望みにくいが選球眼に難がある選手には有効な打法とされる。また、フォームの矯正やタイミングの微調整を目的にバスターを用いる場合もある。

なお、バスターから本塁打を打った例はNPBでは数例記録されており、2006年平成18年)9月2日の広島市民球場でのヤクルト広島戦にてリック・ガトームソン林昌樹から[3]2015年(平成27年)6月12日のQVCマリンフィールドでのロッテ巨人交流戦にて清田育宏マイルズ・マイコラスから[4]2016年(平成28年)7月10日のヤフオクドームでのソフトバンク楽天戦にて細川亨ジェイク・ブリガムから[5]2020年令和2年)9月25日の明治神宮野球場でのヤクルト対阪神戦にて荒木貴裕能見篤史から[6]、それぞれバスターを敢行して放った打球が本塁打となっている。

バスターとの技術的な関連性は低いが、福留孝介松本哲也鬼崎裕司など、バッティングの際に利き手と反対の手でバットの中程を保持する構えを取る選手は、近藤和彦の天秤打法とバスターの中間的な構えであるとして、「天秤バスター打法」と呼ばれることがある[7]

脚注 編集

関連項目 編集