女らしさ

女性及び女児としての特有の文化や性質

女らしさ(おんならしさ)または女振り(おんなぶり)[1]手弱女(たおやめ)らしさ[2]とは[3][4][5]、「それが女性及び女児の特性(あるいは特徴・要件等)である」と特定の話者や特定の集団が想定している固定観念群のこと。「男らしさ」に対置される観念である。

バレエで表現された女らしさ。
イスラム世界での女らしさ。絨毯織りは女性の仕事。絨毯織りに限らず、織り仕事全般が女性の仕事。働き者である、ということが女性らしいことである。そして、人目にふれる場所では、肌を隠し、ヒジャブヴェール)をかぶるのが女性らしい。画像はトルココンヤ
よく働くこと、働き者であること、が女性らしさだ、とされている文化圏は多い。畑仕事に精を出す女性。画像はルワンダのもの。

概説 編集

「女らしさ」は、文化圏、地域、宗教の教派、歴史、時代、世代、家庭環境、個人の嗜好などの影響を受けつつ形成され、多様である。同一地域、同一文化圏であっても、時代とともに変化してゆくことは多く、ある人が思い描く「女らしさ」も、年齢や経験とともに変化してゆくことは多い。

例えば、日本では「男は度胸、女は愛嬌」というが、これは女性は愛嬌があるほうが女らしくて魅力的だ、つまり、女性というのは、愛想が良くあるべきだ、とか、笑顔を見せてひとに感じ良く振る舞うほうが女性としての魅力がある(そうあるべきだ)、という考え方である。

一概には言えないが、要素ごとに、文化的に醸成されたものである、とする見解や、生物学的差異に由来するもの、とする見解がある。例としては、前者を指摘する場合は、(しつけ)や社会環境(前述の文化・地域・宗教・歴史・家庭環境 等)による人格形成への影響などを指摘する見解がある。後者を指摘する場合は、ホルモンの違い、(その結果として生じる)脳の性差などで性格・性向が規定されている可能性を指摘する見解がある。文化人類学者などは文化的な面に比重を置いて言及し、生物学者などは生物学的な面に焦点を当てて他の面を見落としてしまうことが多い。いずれにせよ、全ての要素を一般化して説明することは困難である[要出典]

なお、コミュニケーションのしかたについては、Deborah TannenやJulia T. Woodらによって、男女差(「男らしさ」(「男のやりかた」)「女らしさ」(「女のやりかた」)があることが指摘されている。それが相互不理解、相互誤解のもとにもなっているという。詳しくは 記事「コミュニケーション#コミュニケーションの男女差」を参照のこと。

「女らしさ」の具体例 編集

  • 淑やかで上品態度服装話し方外見雰囲気等である。
  • 嫋やかで気立てが優しい。
  • 細やか。優しい。
  • 感情が豊か。
  • 感受性がある。
  • 慎ましく繊細である。
  • 優美可憐なもの愛らしいものを好む。
  • 自分の子供を護ろうとする本能が強い。いわゆる「母性」。
  • 安全を好む。無謀なこと・無駄に危険なことを避ける。
  • よく働く。日本でかつて人口の大半を占めていたのは農家であり、「よく働くこと」「働き者」が、良き女性・魅力的な女性の要件であった。

身体ポーズや体型の「女らしさ」 編集

意識調査 編集

21世紀前期前半の若者 編集

文部科学省の外郭団体である財団法人「一ツ橋文芸教育振興会」と「日本青少年研究所」は、2003年(平成15年)秋に日本米国韓国中華人民共和国の高校生各千人を対象にアンケート調査を行い、2004年(平成16年)2月にその結果を発表した。この結果にもとづき、読売新聞は、日本では「女は女らしくすべきだ」を肯定した生徒が28.4%であり、他国(米58.0%、中71.6%、韓47.7%)よりも「突出して低い」と報じた。また、「男は男らしく」を肯定した人も43.4%と、4か国で唯一半数以下であると指摘した[6]

なお、上記の新聞記事が引用し、日本青少年研究所が公開している調査報告書には、単純集計結果と男女別集計結果が記されている。この報告書における男女別集計結果によれば、調査対象者と各項目を肯定した者の男女比は下記のとおりである[7]

調査対象と調査結果(「肯定」は「全くそう思う」と「まあそう思う」の割合の合計。単位は%)
 日本  米国  中国(大陸)  韓国
男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
調査対象 35.0 64.8 47.6 52.1 45.7 54.0 52.9 47.1
女は女らしくすべきだ 肯定 38.9 22.5 61.0 55.5 75.4 68.0 61.3 32.3
男は男らしくすべきだ 肯定 49.2 40.4 65.1 62.4 83.0 79.7 67.4 40.9

『読売新聞』2004年(平成16年)2月20日朝刊の社説は、「日本青少年研究所」が公開した4カ国対象の意識調査において、「女は女らしくすべきだ」を肯定した日本の生徒が少なかった事などにもとづき、「教育界で流行している『ジェンダーフリー』思想の影響を見て取ることができる。」とし、その社説の最後で「調査結果は、倒錯した論理が広がったときの恐ろしさを示している。」と結論づけた[8]

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ 「女振り」の意味や使い方 わかりやすく解説 ...”. コトバンク. 2023年3月17日閲覧。
  2. ^ 手弱女(たおやめ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年2月21日閲覧。
  3. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “女らしい”. コトバンク. 2020年6月13日閲覧。
  4. ^ 三省堂大辞林』第3版. “女らしい”. コトバンク. 2020年6月13日閲覧。
  5. ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “女らしい”. コトバンク. 2020年6月13日閲覧。
  6. ^ 読売新聞読売新聞社、2004年2月17日朝刊。2020年6月13日閲覧。
  7. ^ 高校生の生活と意識に関する調査”. 公式ウェブサイト. 財団法人日本児童教育振興財団内 日本青少年研究所 (2004年2月). 2020年6月13日閲覧。
  8. ^ 「社説」『読売新聞』読売新聞社、2004年2月20日朝刊。2020年6月13日閲覧。

関連文献 編集

外部リンク 編集