つわり
概要編集
通常は胎盤が完成する妊娠3、4か月から5か月頃(10週から20週くらいといったところか)にかけて自然に治まることが多いが個人差があり、稀に出産直前まで続いたり、一旦治まった後にぶり返す場合もある。
以前は妊娠高血圧症候群に分類されていたが、現在では直接的に生死にかかわる症状とは考えられていない。しかしながら、重症化するとまったく飲食が出来ず衰弱したり、昏睡に至ることもある。脱水症状が進み尿からケトン体が検出されるほど重症化した場合には、ウェルニッケ脳症の発症を予防するために、輸液やビタミン剤補給などによる入院治療が必要となる。治療が必要になった場合は妊娠悪阻といわれる。
妊娠悪阻があまりにも重篤で母体に危険がある場合などには、医師が中絶を勧めることもある。
原因編集
ホルモンの一種であるヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG) が関係しているとの説[1]、妊娠で体質がアルカリ性から酸性に変わるため、など諸説あるが、医学的には立証にいたっていない。また、症状は心理的な要因にも大きく左右されるとの説もある。
症状編集
つわりの症状は多彩で個人差が大きく原因も解明されていないため[2]、一般的なつわりの症状を記す。
これらの症状は、早朝空腹時に強く出る傾向があると考えられている。このことから英語ではMorning sicknessと言う。なお、スポーツドリンクのような液体すら飲めない場合、脱水症状を原因とする腎不全や静脈血栓塞栓症を引き起こし母体の命に関わるため、点滴が必要となる[3]。そのため、病院やクリニックへ治療を受ける必要がある[3]。また、過剰な嘔吐はマロリー・ワイス症候群や極度の栄養失調はウェルニッケ脳症などが発症する恐れもある[3]。
対策編集
医学的介入編集
つわりは妊娠5週頃から出現し、16週頃には軽快するのが通常であるが、妊娠後期や出産直前まで続くケースもある。この期間は胎児の器官形成期であるため、安易な薬物投与は胎児奇形を招く(催奇性)リスクがある。日本における代表例として、1960年代のサリドマイドによる妊婦への副作用がある[8]。吐き気止めとして用いられる消化管機能改善薬のメトクロプラミド(プリンペラン®)は催奇形性は確認されていないものの[9]、妊娠第一期までの少量・短期間投与に留めるべきと考えられている。漢方薬が比較的安全に投与可能といわれており、よく利用されている。点滴治療では維持液にビタメジン、タチオンなどを加えることが多い。
脚注編集
- ^ hCG自体がどのような作用をしてつわりを起こすかは未だ解明されていない。
- ^ a b c d e f “「“つわり”について」の調査結果~妊娠と共にやってくる“つわり”という試練を乗り越えよう!~”. PR TIMES (2015年9月1日). 2021年10月4日閲覧。
- ^ a b c d “「つわりが酸素缶で改善」は本当?「重症のつわりは命に関わる」医師が伝えたいこと”. BuzzFeed News (2021年3月17日). 2021年10月4日閲覧。
- ^ Obstetrics & Gynecology, 97(4), April 2001, 577-582,
- ^ Obstetrics & Gynecology, 103(4), April 2004, 639-645,
- ^ Obstetrics & Gynecology, 105(4), April 2005, 849-856,
- ^ Midwifery, 25(6), December 2009, 649-653
- ^ “警告後も広告、胎児に薬害被害 製薬会社の回収不十分”. 日本経済新聞 (2020年8月9日). 2021年10月4日閲覧。
- ^ “メトクロプラミドの妊娠第1期服用は安全”. ケアネット (2009年6月24日). 2021年10月4日閲覧。