アルコFA
アルコFAは、アメリカン・ロコモティブ(アルコ)が製造した車軸配置B-Bの貨物用電気式ディーゼル機関車のシリーズである。車体はアルコ、電装品はゼネラル・エレクトリック(GE)が担当し、ニューヨーク州スケネクタディで1946年から1959年にかけて製造された。
アルコFA | |
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基本情報 | |
製造所 |
車体:アメリカン・ロコモティブ(アルコ) 電装品:ゼネラル・エレクトリック(GE) モントリオール・ロコモティブ・ワークス |
型名 | FA-1、FB-1、FA-2、FB-2、FPA-2、FPB-2、FCA-3、FPA-4、FPB-4 |
製造年 | 1946年 - 1959年 |
製造数 | 1,354両 |
主要諸元 | |
軸配置 | B-B |
軌間 | 1,435 mm |
長さ | 16.18 m |
機関車重量 | 110 - 116t |
燃料搭載量 | 4,500 L |
動力伝達方式 | 電気式 |
機関 |
ALCO244型×1基 (FPA-4/FPB-4はMLW 251B型) |
出力 | 1,500 - 1,800馬力(1,100 - 1,300 kW) / 1000 rpm |
外見は同時期に製造されたアルコPAとほぼ同じで、キャブ・ユニットと呼ばれる箱形車体であり、片運転台のAユニット(FA)と運転台のないBユニット(FB)がある。デザインはGEのレイ・パテン(Ray Patten)による。
旅客列車牽引用に蒸気発生装置を搭載したFPA/FPBもラインナップされ、シリーズ合計で1,354両が製造された。アメリカ合衆国、カナダ、メキシコで使用された。数両が動態保存されている。
概要
編集本シリーズのバリエーションは以下の通りである。
形式 | 設計名称 | 搭載エンジン | 出力(馬力) | 両数 | 製造期間 |
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FA-1 | DL-208,A,B | 244 | 1500 | 412 | 1946/1-1950/10 |
FA-1 | DL-208C | 244 | 1600 | 21 | 1950/3-1950/6 |
FB-1 | DL-209,A,B | 244 | 1500 | 233 | 1946/1-1950/10 |
FB-1 | DL-209C | 244 | 1600 | 16 | 1950/3-1950/8 |
FA-2,FPA-2 | DL-212,A | 244 | 1600 | 395 | 1950/10-1956/6 |
FB-2,FPB-2 | DL-213,A | 244 | 1600 | 227 | 1950/10-1956/6 |
FPA-4 | DL-218 | 251B | 1800 | 36 | 1958/10-1959/5 |
FPB-4 | DL-219 | 251B | 1800 | 14 | 1958/10-1959/3 |
各形式の違いは、主として出力の増強によるものである。FPA-4/FPB-4は、アルコのカナダ子会社、モントリオール・ロコモティブ・ワークス(MLW)で製造された、カナダ向けの車両である。
多くの機器はPAと共通である。FA-1/FB-1とFA-2/FB-2との外観上の差異は、ラジエターシャッターの位置である。前者は車体後部にあり、後者は車体前部にある。これは、蒸気発生装置をラジエターの後部に搭載できるように設計変更されたためである。FPA-4/FPB-4は、そのラジエターが下部方向に拡大されている。FPA-4/FPB-4は高速旅客列車牽引に使用され、1990年代までVIA鉄道で使用された。
FAをPAとともに特徴づけるのは、長く直線的な前頭部に長方形のフィルターを備え、その中にヘッドライトを収めたスタイルである。スリット形状のグリル、運転席側窓から流線型に下部へとカーブした飾り帯も特徴的である。
PAも含め、デザインとしてはフェアバンクス・モースのエリービルトの強い影響下にある。エリービルトはアルコのパートナーでもあるGEが製造したもので、前述のとおり、FAのデザインはそのGEのデザイナーであるレイ・パテンによる。そのため、多くの人が、エリービルトのデザインから直線を強調し、より力強い外観にしたものがFAのデザインとなったと信じている。
アルコの244型V型12気筒4ストロークディーゼルエンジン(131,288cc、直径229mm×行程267mm)は信頼性に欠け、FAとPAでGM-EMDが席巻しているディーゼル機関車市場に割り込むことができなかった。GEとの協業が終了したのも、エンジンの信頼性の低さが原因であった。FPA-4/FPB-4で採用された新型の251型エンジンは大きく進化しており、信頼性も向上したが、時既に遅く、アルコが失ったシェアを奪い返すまでには至らなかった。251型エンジンが広く使用されるようになったころ、GEは自社で開発したU25Bでディーゼル機関車市場に乗り込んでいた。GEは機関車メーカーとしてアルコに取って代わり、アルコは1969年に市場から撤退することになった。
保存車両
編集20両ほどが、博物館や史学会で保存されている。いくつかの保存鉄道では動態で保存されている。グランド・キャニオン鉄道、ナパ・バレー鉄道、クヤホガ・バレー・シーニック鉄道はMLW製のFPA-4をVIA鉄道より購入し、2008年現在も運行している。
輸出車両
編集アルコの輸出用機関車として知られる1953年設計のDL500は、FA-2をベースとしている。最初の25両は244型エンジンを1,600馬力(1,200kW)で使用していた。その後、251B型エンジンを搭載し、1,800馬力(1,300kW)となったのはFAと同様である。台車は車軸配置C-Cを基本としていたが、B-BやA-1-A台車もオプションとして用意されていた。
DL500は1953年5月から1967年12月まで、アルコ、A.E.グッドウィン、MLWで合計369両が製造された。
アルゼンチンの新アルゼンチン国鉄が保有するサン・マルティン将軍鉄道では2020年現在でも使用されており、オーストラリアではA.E.グッドウィンがライセンス生産した標準軌の2両がニューサウスウェールズ州営鉄道(New South Wales Government Railways)の44形として[1]、片運転台・両運転台の車両が1600mm広軌の南オーストラリア鉄道(South Australian Railways)の930形として使用された。[2]
脚注
編集- ^ “NSWRTM - 4490”. nswrtm.org. 2007年7月22日閲覧。
- ^ “National Railway Museum - Port Adelaide - 930 class”. nationalrailmuseum.org.au. 2007年7月22日閲覧。