広軌

1,435mmを超える軌間

広軌(こうき、broad gauge)は、鉄道線路のレール(軌条)間隔を表わす軌間標準軌の1435mm(4フィートインチ)を超えるものをさす。

軌間は、広ければ広いほど安定性が高くなり横風に対する安全性は増す。ただし、曲線での左右の車輪の回転数の差は軌間が広いほど大きいため、最小半径は大きくしなければならない。左右の車輪を独立して回転できるようにすることで、この問題を克服したタルゴのような例もある。

速度の向上との関連性については、蒸気機関車の場合、動輪直径を大きくできるため軌間は広いほうが有利であるが、電気機関車などの近代的動力車であれば、多少の軌間の違いはそれほど大きなハンデにはならないとされる。その例として、スペインの鉄道では、営業最高速度が220 km/hの在来線が広軌であるのに対し、350 km/hでの営業運転を計画しているAVE(高速新線)はフランス国鉄への直通運転を考慮したこともあるが、標準軌で建設されている。

広軌鉄道を保有している国編集

 
各国の軌間
緑色が広軌

イギリスの鉄道では、グレート・ウェスタン鉄道1838年以来2140mm(7フィート¼インチ)の広軌の先駆けであり、1890年代までこの軌間を維持していた。

今日でも多くの国が広軌鉄道を保有している。

1524mm(5フィート)[1]編集

ソビエト連邦諸国[2]編集

2022年ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ウクライナは旧ソ連圏の5フィート軌間(1520㎜)から欧州標準軌 (1435㎜)への改軌を同年5月末の会議で表明した[3]

旧ソビエト連邦ではない国編集

両国は旧ソビエト連邦構成共和国ではないが、モンゴルの独立と国造りはソ連の支援を受けており、フィンランドはロシア帝国旧領であった。

1581mm(5フィート2¼インチ)編集

1588mm(5フィート2½インチ)編集

1600mm(5フィート3インチ)編集

ほか

1665mm編集

  • ポルトガル(計画されている高速鉄道では標準軌を予定している[4]

1668mm(5フィート5½インチ)編集

1676mm(5フィート6インチ)編集

インドでは、1800mm以上の広軌を主張する技術者と標準軌を主張するインド政府側で意見の対立があり、妥協案として1676mmとなったという。

グレート・ウェスタン鉄道では、イザムバード・キングダム・ブルネルの考案した2140mmゲージにより、車両の安定性を増し、高速化できることを期待したが、同社は初期の機関車の設計に問題があり、広軌の利点を幾分損なうこととなった。また、懸架装置の発展が早く進み、どのみち10年か20年のうちに標準軌での速度が広軌での速度に追いつくことになった。1600mmと1676mm軌間においては、幅の広い分だけ蒸気機関のシリンダを大きくでき、出力を増やすことができたが、標準軌でもシリンダを外側に配置することでこの問題を解決することができた。

米国のピッツバーグフィラデルフィアの路面電車・地下鉄の軌間は、米国内で軌間の統一がなされていなかった19世紀中頃に建設された馬車鉄道の軌間に由来する。その後、19世紀終わりまでに幹線鉄道の軌間は標準軌へ統一されたが、市街鉄道の場合、市街の併用軌道上への貨物列車の進入を阻止したいという市当局の思惑から、標準軌と異なる軌道幅が支持され、20世紀初頭建設の路面電車を含め、5フィート前後の様々な軌間が採用される結果となった。

ナチス・ドイツでは、ブライトシュプールバーンと呼ばれる、軌間3000mmの巨大列車計画があった。

日本における広軌の定義編集

日本では地方鉄道法により、私鉄も旧国鉄線の1067mmの狭軌を超える軌間の敷設が制限されたため、狭軌が日本の標準軌間になっていた。このため1067mmを超える軌間を全て広軌と呼ぶのが一般的だった時期がある。このため、現在でも過去と同様に1435mm軌間を広軌と表現する場合もあり、近畿日本鉄道ではそれを公式の呼称としている。混同を防ぐために、1067mmは国鉄標準軌、1435mmは国際標準軌という表現も用いられていた。

国鉄分割民営化後は、国際的な広軌との混同を防ぐため、公式文書で1435mm軌間を標準軌と記述するのが基本になり[8]、広軌とは表現しなくなった。

日本国内に国際的な広軌(軌間が1435mmを超える)営業用路線は、2017年時点、(国土交通省管轄の普通鉄道では)存在しない。

工場構内鉄道として製鉄所で広軌を採用したケースがある。1676mm軌間がJFEスチール東日本製鉄所・京浜地区(旧称・扇島地区)に用いられているほか、1435mm軌間も各地の製鉄所で用いられている[9][10](いずれも非電化)。製鉄所構内で広軌や標準軌を採用した理由は、高炉で製造された銑鉄の輸送は製鋼工場までの閉じた輸送なことと、製鉄所が立地する埋め立て地の軟弱地盤で重量物を安定輸送する設計が容易なことによる。

特殊鉄道や非指定鉄道(国土交通省管轄外の鉄道)では、広軌を導入しているケースがある。ゴムタイヤ式地下鉄では広島高速交通が1700mm(案内輪間隔 2900mm)、札幌市営地下鉄が走行輪間隔で南北線が2230mm、東西線東豊線が2150mmである。宮ヶ瀬ダムインクラインは1600mm、野辺山宇宙電波観測所パラボラアンテナ運搬軌道は4000mmである。

脚注編集

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  1. ^ 現在フィンランド以外は1520mmと登録。
  2. ^ かつてのロシア帝国が外敵の侵略を困難にするために互換性の無い広軌を採用したが、米国技師案によるとの説もある。
  3. ^ 「ウクライナ 鉄道レール幅変更方針 ロシア型から欧州型へ」東京新聞』朝刊2022年6月17日(国際面)2022年7月6日閲覧
  4. ^ Chris Jackson (2006年2月1日). “High speed lines will drive forward Refer's long-term strategy”. レールウェイ・ガゼット・インターナショナル. 2010年11月11日閲覧。
  5. ^ ユージン・フォーター 編/小池滋 監訳『世界の鉄道』(集英社、1979年)442頁
  6. ^ ユージン・フォーター 編/小池滋 監訳『世界の鉄道』(集英社、1979年)452頁
  7. ^ 従来より軽量な車両が従来より長い高架区間で強風で煽られて横転・転覆することを防ぐために従来のアメリカ合衆国各鉄道よりも広い軌間としている。
  8. ^ 近年は新幹線網の拡大で多くの地域に1435mm軌間が広まり、かつてほど特殊でなくなった。
  9. ^ 1435mm軌間もJFEスチール西日本製鉄所・福山地区や新日鐵住金君津製鉄所・堺製鉄所などで採用。
  10. ^ 鉄道ピクトリアル』 No.797(2007年12月号)「製鉄所の鉄道」、No.805(2008年7月号)「続・製鉄所の鉄道」石本祐吉

関連項目編集