12 トリオ英語: 12 Trio)は、チェコの鉄道車両メーカーであるイネコン・トラムアメリカ合衆国路面電車(ストリートカー)向けに展開する路面電車車両部分超低床電車)である。この項目では、非電化区間向けに蓄電池を搭載した121 トリオ(121 Trio)についても解説する[1][2][3][4]

イネコン 12 トリオ
Inekon 12 Trio
イネコン 121 Trio
Inekon 121 Trio
基本情報
製造所 イネコン・トラム
製造年 2006年 -
投入先 ポートランド・ストリートカーポートランド
シアトル・ストリートカー英語版シアトル
DCストリートカー英語版ワシントンD.C.
主要諸元
編成 3車体連接車
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600、750 V
架空電車線方式
設計最高速度 70 km/h
車両定員 114人(乗車密度5人/㎡時)
156人(乗車密度8人/㎡時)
編成重量 29.0 t
編成長 20,130 mm
全幅 2,460 mm
全高 3,460 mm(集電装置下降時)
床面高さ 780 mm(高床部分)
350 mm(低床部分)
車体 普通鋼、ステンレス鋼
車輪径 610 mm
固定軸距 1,880 mm
台車中心間距離 11,800 mm
主電動機出力 90 kw
編成出力 360 kw
備考 主要数値は[1][2][3]に基づく。
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概要 編集

シュコダ・トランスポーテーションとの合弁事業で製造した"シュコダ03T"や、イネコン・トラムが手掛けたヨーロッパ向けの"01 トリオ英語版"を基に、台枠の強化を始めとするアメリカ向けの仕様変更がなされた形式。両運転台式の3車体連接車で、動力台車を有する両端の車体とジョイントで接続された中間のフローティング車体が床上高さ mmの低床構造となっている部分超低床電車で、編成全体の低床率は50%である[5]

車体の材料にはCKD Kutna Hora社によって作られたプレス加工を施した圧延鋼板を採用し、前面は積層グラスファイバーが、屋根は防錆のためステンレス鋼が使用される。内装はバリアフリーに適した構造になっており、中間車体にフリースペースが2箇所設置されている他、運転手乗務員への連絡が可能なインターホンが備わっている。また、中間車体の乗降扉下部には車椅子使用客向けの自動収納式スロープが存在する。空調装置は冷暖房双方に対応している[5]

2基の電動機が搭載された動力台車には油圧ブレーキが設置され、車輪の摩擦状態を自動的に分析し制動を調節する機能を有する。また、台車には車体にかかる負荷に関わらず車高・床面高さを一定に保つ油圧空気式サスペンションが設置されている。制御装置を始めとする大半の電気機器は屋根上にあり、コンテナへの収納などメンテナンスの容易さを重視した配置となっている[5]

車両の組み立てのほとんどはチェコオストラヴァにあるイネコンの工場で行われ、ドイツ・ブレーメン港を経てアメリカへ到着した後の工事は券売機の設置など微細なものに限られる[5]

導入 編集

ポートランド 編集

 
12 トリオ(ポートランド・ストリートカー)

ポートランド路面電車であるポートランド・ストリートカー向けの3両(008-010)は2006年に製造が行われ、翌2007年から営業運転に投入されている[3]

シアトル 編集

 
121 トリオ(シアトル・ストリートカー)

シアトル路面電車であるシアトル・ストリートカー英語版は、2007年12月12日の開業に併せて3両(301-303)の12 トリオを導入した。更に2011年には架線が存在しない区間でも蓄電池を用いて走行可能な121 トリオが6両(401-406)導入され、2015年にもAmazon.comの支援の元で増備された1両(407)が運行を開始している[6][7]

ワシントンD.C. 編集

 
12 トリオ(DCストリートカー)

12 トリオの最初の発注元となったワシントンD.C.路面電車DCストリートカー英語版へは3両(101-103)が2007年に製造されたが、建設の遅れから2009年12月までオストラヴァの工場に保管され、ワシントンD.C.到着後も長期の試運転に用いられた。DCストリートカーの車両として営業運転を開始したのは2016年2月27日からである[1][8][9]

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b c BI-DIRECTIONAL VERSION TRIO 12”. Inekon Group a.s.. 2019年10月18日閲覧。
  2. ^ a b BI-DIRECTIONAL VERSION TRIO 12 - BASIC TECHNICAL DATA”. Inekon Group a.s.. 2019年10月18日閲覧。
  3. ^ a b c Mary Webb (2009-4-1). Jane's Urban Transport Systems 2009-2010. Janes Information Group. 526. ISBN 978-0710629036 
  4. ^ 宇都宮浄人「海外のLRT事情・LRTをめざすチェコ ~路面電車製造の老舗の現状」『路面電車EX vol.13』、イカロス出版、2019年6月20日、107頁、ISBN 9784802206778 
  5. ^ a b c d How Are Inekon Trams Manufactured For USA Cities!”. Inekon Group a.s.. 2019年10月18日閲覧。
  6. ^ Seattle Streetcar”. Inekon Group a.s.. 2019年10月18日閲覧。
  7. ^ Seattle accelerates its light rail plans”. Tramways & Urban Transit (2016年8月22日). 2019年10月18日閲覧。
  8. ^ “Czechs trial Washington trams”. Tramways & Urban Transit magazine (Light Rail Transit Association): 278. (2007-7). 
  9. ^ Mile Taplin (2014-2). “"Washington, D.C.", in "New tramways for 2014"”. Tramways & Urban Transit magazine (Light Rail Transit Association): 56. 

外部リンク 編集