ディストーション・シンセシス

エレクトリック・サウンドを生成するシンセシス技術のカテゴリ

ディストーション・シンセシスとは、非線型電子回路や数学で既存の音を変更し、より複雑な音を生成するサウンド・シンセシス技術のカテゴリである。[注釈 1][1]

いくつかのサウンド・シンセシス手法は、複雑な音響を多数の発振器で実現しているが、ディストーション手法は複数の発振器を使うよりも多くの倍音を含んだ周波数スペクトルを生成する。

コンピュータ音楽をマックス・マシューズ (Max Mathews) と共に開拓したフランスの作曲家ジャン=クロード・リセは、ディストーション手法の適用における注目すべき先駆者の一人だった。

ディストーション手法には以下が含まれる: FMシンセシス,[2] ウェーブシェーピング・シンセシス,[3][4] 離散総和式シンセシス (DSF).[5]

FMシンセシス 編集

周波数変調シンセシス (FM)は発振器のキャリア周波数を他の信号による変調で歪ませる。歪み具合は周波数変調指数英語版で制御される。[6]

フェーズディストーション・シンセシス (PD) として知られる手法は、FMシンセシスと類似している。

ウェーブシェーピング・シンセシス 編集

ウェーブシェーピング・シンセシスは、元となる信号波形 を非線型の振幅応答 で変更する。[7][8]

 

この手法は帯域制限英語版された(訳注: 結果として alias freeな)スペクトルを生成することができ、index function  で連続的に制御できる。

この手法の簡単な例は、オーディオ・アンプのオーバードライブ(過大入力)で生じるクリッピング歪み英語版である。

(ウェーブテーブル・シンセシス (異なる波形を並べたテーブルで音色変化を実現する合成手法) は、この手法と混同すべきではないが、ウェーブシェーピング・シンセシスの特別な場合 —— 元波形が鋸状波英語版の場合 —— と同一である[要説明][要出典])

離散総和式シンセシス 編集

離散総和式 (DSF: Discrete summation formulas) シンセシスとは、目的の波形形状を実現するために、多数の数の総和や加算のための数式を使用するアルゴリズム的合成手法である。[9][要検証] このパワフルな手法は、たとえばFM音声合成と同様な方法で3つのフォルマントを持つ音声を合成できる。[10][要検証] DSFは 調波非調波による、帯域制限英語版もしくは制限なしのスペクトルを合成可能であり、指数 (index)で制御できる。[要説明] Roads 1996の指摘にあるように、複雑なスペクトルのディジタル・シンセシスを2,3のパラメータに削減する事で、DSFはよりずっと経済的になる。[11][要説明][要検証]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ これらのテクニック(ディストーション・シンセシス)は「変調シンセシス」と呼ばれることもある; 例えば Roads 1996, p. 213–262の第6章Modulation Synthesisは、変調シンセシスをおおよそ下記のように分類している:

出典 編集

  1. ^ Roads, Curtis (1996). “6. Modulation Synthesis”. The computer music tutorial. MIT Press. pp. 213–262. ISBN 978-0-262-68082-0. https://books.google.co.jp/books?id=nZ-TetwzVcIC&pg=PA213 
    (邦訳: Roads, Curtis; 青柳, 龍也 (2001), “第6章 変調合成”, コンピュータ音楽: 歴史・テクノロジー・アート, pp. 173–212, ISBN 9784501532109, https://books.google.co.jp/books?id=GYGq5qspUqYC&pg=PA173 )
  2. ^ Dodge 1997, p. 115-138
  3. ^ Roads, Curtis (June, 1979). “A Tutorial on Non-Linear Distortion or Waveshaping Synthesis”. Computer Music Journal (MIT Press) 3 (2): 29–34. JSTOR 3680281. 
  4. ^ Dodge 1997, p. 139-157
  5. ^ Dodge 1997, p. 158-168
  6. ^ J. Chowning (1973). “The Synthesis of Complex Audio Spectra by Means of Frequency Modulation”. Journal of the Audio Engineering Society 21 (7).  (PDF)
  7. ^ Arfib, D. (1979), “Digital synthesis of complex spectra by means of multiplication of non-linear distorted sine waves”, Journal of the Audio Engineering Society 27 (10) 
  8. ^ Le Brun, Marc (1979), “Digital Waveshaping Synthesis”, Journal of the Audio Engineering Society 27 (4): 250–266 
  9. ^ Moorer, J. A. (November 1976), “The Synthesis of Complex Audio Spectra by Means of Discrete Summation Formulae”, Journal of the Audio Engineering Society 27 (4): 717–727 
  10. ^ T. Stilson; J. Smith (1996). “Alias-free digital synthesis of classic analog waveforms”. Proc. Int. Comp. Music Conf. (ICMC’96 Hong Kong): 332–335. CiteSeerx10.1.1.60.4437. 
  11. ^ Roads 1996, p. 260–261 (邦訳: Roads & 青柳 2001, p. 210–211)

参考文献 編集

  • Dodge, Charles; Thomas A. Jerse (1997). “5. Synthesis Using Distortion Techniques”. Computer Music: Synthesis, Composition, and Performance. New York: Schirmer Books. pp. 115–168. ISBN 0-02-864682-7 
  • Chowning, John; Bristow, David (1986). FM Theory & Applications - By Musicians For Musicians. Tokyo: Yamaha. ISBN 4-636-17482-8