ウサギと猟犬(ウサギとりょうけん、: Hare and hounds)は、2人のプレイヤーがウサギ側と猟犬側に分かれて勝敗を競うアブストラクトゲームである。中世北欧で流行した[1]。英語ではHare gamesとも呼ばれる。

ウサギと猟犬の初期配置。この盤面上で駒を移動させる。

遊び方

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以下は、ウサギと猟犬のルールである[2]。便宜上、駒が置ける場所(画像では円と正方形によって表されている)のことを「点」と呼称する。

  • ゲームは2人のプレイヤーによって、専用の盤上で行われる。
  • まず、プレイヤーはウサギ側と猟犬側に分かれる。先手は猟犬側である。
    • ウサギ側は駒を1つ、猟犬側は3つ持つ。
  • プレイヤーが自身の手番になった場合、自身の駒を1回動かして手番を終了する。
    • ウサギ側の場合、駒を隣接している点に移動させる。
    • 猟犬側の場合、動かしたい駒を1つ選び、その駒を隣接している点に移動させる。ただし、後ろ(進行方向と逆の方向)へ動くことはできない。
    • 既に他の駒がある点に駒を移動させることはできない。
  • 以下の条件を満たした場合、勝敗が決する。
    • ウサギが全ての猟犬より後ろ(進行方向と逆)の点に移動した場合、ウサギ側の勝利となる。
    • ウサギが移動できる全ての頂点を猟犬によって塞がれ、ウサギが移動できなくなった場合、猟犬側の勝利となる。
    • 千日手(一般的なゲームにおいては20手で勝敗が決しなかった状態)になった場合、ウサギ側の勝利となる。

また、ウサギと猟犬には亜種も存在する。以下は、変更されたルールの一例である[3]

  • ウサギ側の駒は盤上に置かず、ゲーム開始時にウサギ側のプレイヤーが好きな場所に駒を置く。
  • ウサギ側の駒は盤の端ではなく、中央からスタートする。
  • ウサギ側が繰り返し3回同じ位置に移動すると、猟犬側の勝利となる。

歴史

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このゲームは伝統的なゲームであり[3]、中世の北欧で流行した[1]が、今日ではほとんど忘れ去られている。ラトビアでは1300年ごろに作成された小さな盤が2つ発見されており、そのうちの1つは先に説明した盤と同じ形状であった。

形式は様々あるが、3つの駒と1つの駒を使用するという点はほぼ全てに共通している。

駒の種類は様々であり、必ずしもウサギと猟犬の駒を使用するわけではなく、また名称も多い。以下に、ウサギと猟犬の呼称の例を示す。括弧内はその参考日本語訳やその名称が用いられている国である。

  • Hare games(ウサギゲーム)
  • Hare and hounds(ウサギと猟犬、イギリス
  • Game of Dwarves(ドワーフのゲーム、イギリス)
  • The Devil among tailors(仕立て屋の中の悪魔、イギリス)
  • Catch the Giant(巨人を捕らえろ)
  • Haretavl(ウサギのボードゲーム、デンマーク
  • Hare och hund(ウサギと子犬、スウェーデン
  • Trevolpa(スウェーデン)
  • Volpalejden, Valpleken(スウェーデン)

普仏戦争中から終結後のフランスでは、軍事関係者の間でThe Soldiers' Game(兵士のゲーム)という名称で人気を博した[3]

数学的な分析

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ウサギと猟犬はチェッカーチェス将棋などと同じく組み合わせゲーム理論英語版で研究されているゲームのひとつである。通常のウサギと猟犬の場合、猟犬が必勝であることがエルウィン・バーレカンプジョン・ホートン・コンウェイリチャード・ケネス・ガイ英語版の3人によって証明されている[2]

脚注

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  1. ^ a b 橋本 2024, p. 3.
  2. ^ a b 橋本 2024, p. 4.
  3. ^ a b c Mats Winther (2008年5月). “Hare games - traditional European hunt games” (英語). 2023年5月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月9日閲覧。

参考文献

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