エブスコ・インフォメーション・サービス

図書館リソースの提供企業。学術、K-12、公共図書館、法曹、企業、政府を対象とする。

エブスコ・インフォメーション・サービス(: EBSCO Information Services)とは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州イプスウィッチに本社を置く企業である。親会社はアメリカ第3位の規模を持つ非上場企業エブスコ・インダストリーズ英語版である(本拠地:アラバマ州バーミングハム)。バーミングハム・ビジネス・ジャーナル刊『2013 Book of Lists』によれば、年間売上は2億ドル近くに及ぶ(2012年時点[1])。

エブスコ・インフォメーション・サービス
EBSCO Information Services
種類
エブスコ・インダストリーズ英語版傘下
業種 情報サービス英語版
設立 1984年
本社 アメリカ合衆国マサチューセッツ州イプスウィッチ
主要人物
ティム・コリンズ (社長)
Tim Collins
製品
  • エブスコ・ディスカバリー・サービス(EDS)
  • エブスコホスト
  • エブスコ・eブックス
  • エブスコ・ヘルス
  • ダイナメド・プラス
ウェブサイト www.ebsco.com

エブスコは学術、医学高校までの学校教育(K-12)公共図書館法曹企業政府を対象とする市場において図書館リソースを提供している。自社製品には完全電子リソース管理システムであるEBSCONET(エブスコネット)の他、EBSCOhost(エブスコホスト)がある。後者は有償のオンライン研究サービスで、375もの全文データベースや60万件超の電子書籍、事項索引、ポイントオブケア医療リファレンス、ずらりと並んだ歴史的なデジタルアーカイブで構成される。2010年、機関向けにエブスコ・ディスカバリーサービス(EBSCO Discovery Service=EDS)という雑誌のポートフォリオを検索するサービスを開始した[2]

歴史編集

1944年にエブスコ・インダストリーズ(EBSCO Industries Inc.)の子会社として設立された。親会社の商号でもある「エブスコ」とは創業者エルトン・ブライソン・スティーブンズ・シニア(英語)の名前に由来し、欧文表記 Elton B. Stephens Co. の頭字語である。『フォーブス』誌によれば売上高や従業員数でアラバマ州最大級の非上場企業の1社で、アメリカ全国でも200位内に入る[3]。売上高は1億ドル(1997年)から2006年には2億ドルまで増加した。

当社は1984年創業時に「エブスコ・パブリッシング」と称した。1984年に印刷媒体『ポピュラーマガジン・レビュー』Popular Magazine Review を創刊すると、300以上の雑誌の記事の抄録の出版を開始したが、エブスコ・インダストリーズに買収された1987年にエブスコ・パブリッシングEBSCO Publishing)に社名変更した。社員数は2007年時点でおよそ750人を数える[4]

40以上もの事業を手がける多角経営として、企業の吸収合併は2003年のホィットストン出版(Whitston Publishing データベース提供の同業者)を端緒に[5]オンライン・コンピュータ図書館センター(英語)からネットライブラリー(NetLibrary 2010年)を買収、ついで2011年にH・W・ウィルソン社(H. W. Wilson Company)を経営統合する[6][7][8]。同じエブスコ子会社で情報サービス分野のエブスコ・インフォメーション・サービス(EBSCO Information Services)との統合は2013年7月1日であった[9]ベイカー・アンド・テイラー(英語)傘下からYBP(ヤンキー・ブック・ペドラー)図書館サービスを2015年に買収し、のちにゴビ図書館ソリューション(GOBI Library Solutions)と改称する[10][11][注釈 1]

エブスコの部門のうちメタプレス(Metapress 1998年創業)はオンライン出版プラットフォーム(英語)を創設し[13]、顧客が作成した印刷媒体の学術誌コンテンツをオンラインに収載[14]、やがて世界有数の学術コンテンツのホストに成長[15]すると、版元180社超[16]から出版物3万1千点を預かった[17]。Atypon は2014年にメタプレスをエブスコから買収するとプラットフォームを廃止、顧客は自社のリテラタム(Literatum)に登録させ[18][19]、コンテンツの移籍は2015年5月21日であった[20]

2013年7月1日にはエブスコ・インフォメーション・サービスと合併、「エブスコ・インフォメーション・サービス」が存続会社になった[21]

製品編集

データベース

さまざまな図書館データベースサービスを提供[22]。メドライン(MEDLINE)、イーコンリット(EconLit)といったデータベースの多くは、コンテンツ提供者とのライセンス契約に基づいてサービスを行う。加えて、出版者から預かったコンテンツをエブスコがデータベース用に編纂するものもさまざまな学術分野にわたり[注釈 2]、アカデミックサーチ(Academic Search)、マスターファイル(MasterFILE)、エンバイロンメント・コンプリート(Environment Complete)ほかがある。また設定の一つとして、有償制のデータはアンペイウォール(Unpaywall)を経由するとオープンアクセスの情報として表示させる選択肢がある[23]

Discovery(ディスカバリー):

この製品は機関ごとに情報リソースの統一索引をカスタマイズして作成するため、全てのコンテンツに単一の検索ボックスからアクセスできる。システムが使うメタデータは機関の内外両方のソースから採集し、その後、検索子を割り振ってデータベースに反映する。

eBooks(イーブックス):

幅広い主題の電子書籍とオーディオブックを提供している。総点数は前者が100万点、後者が9万点、版元は1500社超という[24]

DynaMed(ダイナメド):

医師その他、医療関係者がケアの現場で使用する医療参照ツールである。『Journal of Clinical Epidemiology(英語)の分析では(2012年時点)、オンラインの医療参照ツール10件中ダイナメドの順位は1位であった[25]。調査会社 KLAS が実施した「臨床意思決定支援リソース」分析によると、疾病参照製品分野で報告書2期にわたり性能の総合評価で最高をマーク。K社の専門は、医療分野のサービス提供者のパフォーマンスを監視して報告することにある[26]
ダイナメドに登録すると、エブスコ傘下のネットライブラリー(NetLibrary)経由でデジタル著作権管理対処済み音声ファイル(英語)同種のオーディオブック(英語)が利用できる。この市場ではオーバードライブ社英語版デジタル・ライブラリ・リザーブ英語版と競合している。

環境と慈善イニシアティブ編集

エブスコは2箇所に広大なソーラーパネルを設け、公用車をハイブリッドに変更し、本社に環境対策の「グリーンチーム」を結成したほか、同社が公開するグリーンファイル(GreenFILE)という無料データベースを利用すると、人類が環境に与える影響を調べることができる。2008年にはアメリカ合衆国環境保護庁ニューイングランド支庁より環境功労賞(Environmental Merit Award)を受賞、2009年アースデイISO 14000に基づく「グリーンを進める知識イニシアティブ」の一環として専門図書館協会(Special Library Association)より「グリーン・チャンピオン」に選出された[27]

エブスコの社会活動イニシアティブには(先進国と発展途上国の)情報格差解消への貢献が含まれ、オープン・ソサエティ財団との共同作業で39カ国の発展途上国の大学向けに本格的な研究データベースを提供している[28]。2012年、ジェームズとジュリー・T・スティーブンス夫妻はエブスコの社会活動に対して、評価を受けた[29]

その他の活動編集

保守的な宗教団体「全国性的搾取告発センター」National Center on Sexual Exploitation(旧称「Morality in Media」)はエブスコをデータベースが「性に関する用語の検索に使われる可能性がある」と名指しで批判した[30]。これに対して指摘を真摯に受け止めるとしつつ、「学生が当社のデータベースを使いポルノグラフィその他あからさまなコンテンツを検索した事例は承知していない」と応じた[30]

主な出版物編集

発行年順。

  • Carlisle, Rodney(編)The 50 states Third edition. Carl L. Bankston III, 他、セーラム・プレス(エブスコ・インフォメーション・サービス傘下・以下同じ)、2013年。国立国会図書館書誌ID:026675826OCLC 859269134LCC 2012376250
  • Shally-Jensen, Michael(編)Countries, peoples & cultures. 初版、イプスウィッチ:セーラム・プレス、ニューヨーク州アメニア:グレイハウス出版、2015年。国立国会図書館書誌ID:027668613OCLC 915978837。全9巻。
  • Moglia, Paul.(編)Adolescent health & wellness. 初版、イプスウィッチ:セーラム・プレス、2015年。国立国会図書館書誌ID:027677065OCLC 919173490LCC 2016427992
  • Richman, Sharon.(監修)Ortiz, Dawn.(編)Nutrition. 初版、イプスウィッチ:セーラム・プレス〈Salem health〉、2016年。全3巻。国立国会図書館書誌ID:029746029OCLC 954536544LCC 2017300161
  • Dutch, Steven I.(編)Encyclopedia of climate change 第2版、セーラム・プレス、アメニア:グレイハウス出版、2016年。国立国会図書館書誌ID:028508261OCLC 962875313
  • Mack-Shelton, Kibibi ; Shally-Jensen, Michael(編)Racial & ethnic relations in America. 第2版、セーラム・プレス、2017年。全3巻。国立国会図書館書誌ID:028926393OCLC 982387206
  • Evans, Robert C.(編)LGBTQ events 第2版、セーラム・プレス〈Great events from history〉、2017年。全2巻。国立国会図書館書誌ID:029169703OCLC 1012804190
  • Carmichael, Robert S.(編)Notable natural disasters. 第2版、イプスウィッチ:セーラム・プレス、アメニア:グレイハウス出版、2017年。全3巻。国立国会図書館書誌ID:029342436OCLC 985344459LCC 2018459493
  • Great athletes of the twenty-first century. セーラム・プレス、アメニア:グレイハウス出版、2018年。全3巻。国立国会図書館書誌ID:029323552
  • Watnick, Beryl.(編)Education today : issues, policies & practices. セーラム・プレス、2018年。国立国会図書館書誌ID:029942919OCLC 1029814994

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 2017年現在の社長はティム・コリンズ(Tim Collins)[12]
  2. ^ エブスコが書誌データを加工して提供するものは、次を含む(アルファベット順)。America: History and Life、Art Index、Art Abstracts、Art Full Text、Business Source、Clinical Reference Systems、Criminal Justice Abstracts、Education Abstracts、Environment Complete、Health Source、Historical Abstracts、History Reference Center、MasterFILE、NetLibrary、Primary Search、Professional Development Collection、USP DI。

出典編集

  1. ^ “Birmingham's largest private companys” (英語). Birmingham Business Journal. (2012). http://www.bizjournals.com/birmingham/blog/2012/06/birminghams-largest-private-companies.html/. 
  2. ^ “The New and Improved EBSCO Information Services” (英語). Information Today. (2013). http://newsbreaks.infotoday.com/NewsBreaks/The-New-and-Improved-EBSCO-Information-Services-89991.asp/. 
  3. ^ “The Largest Private Companies” (英語). Forbes. (2006年11月9日). オリジナルの2007年5月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070509032000/http://www.forbes.com/lists/2006/21/biz_06privates_The-Largest-Private-Companies_Company_5.html 2014年2月20日閲覧。 
  4. ^ Brynko, Barbara (2011) (英語), Collins: EBSCO's Mission of Growth, http://www.infotoday.com/it/mar11/Collins-EBSCOs-Mission-of-Growth.shtml 
  5. ^ “EBSCO acquires Whitston Publishing Company” (英語). Library Technology Guides. (24 September 2003). http://librarytechnology.org/news/pr.pl?id=16581 2016年4月2日閲覧。. 
  6. ^ EBSCO Publishing and The H.W. Wilson Company Make Joint Announcement of Merger Agreement, (英語), hwwilson.com, (2011年6月1日), http://www.hwwilson.com/news/newsPressDetails.cfm?pressID=161 2011年8月24日閲覧。 
  7. ^ Barrett, William P. (1997年12月29日). “Mousetrapped” (英語). Forbes. https://www.forbes.com/forbes/1997/1229/6014058a.html 2019年6月5日閲覧。 
  8. ^ “H.W. Wilson Company” (英語). The New York Times. http://cityroom.blogs.nytimes.com/tag/hw-wilson-company/ 
  9. ^ “EBSCO Publishing and EBSCO Information Services merge” (英語) (プレスリリース), EBSCO Industries, (2013年5月22日), https://www.ebsco.com/news-center/press-releases/ebsco-publishing-and-ebsco-information-services-merge 2020年7月13日閲覧。 
  10. ^ “EBSCO acquires YBP” (英語). The Bookseller. (2015年2月23日). https://www.thebookseller.com/news/ebsco-acquires-ybp 2018年3月5日閲覧。 
  11. ^ GOBI Library Solutions” (英語). EBSCO. 2018年3月5日閲覧。
  12. ^ About: Leadership” (英語). EBSCO Information Services. 2016年10月14日閲覧。
  13. ^ Digital Facilitators” (英語). infotoday.com. 2016年9月23日閲覧。
  14. ^ “Taylor and Francis Journal Host” (英語). EContent. (2003年1月10日). http://www.econtentmag.com/Articles/News/News-Item/MetaPress-to-Become-Primary-Host-for-Taylor-and-Francis-Group-Journals-3921.htm 
  15. ^ ALA TechSource launches new Web site” (英語). ALA.org (2009年6月5日). 2016年9月23日閲覧。
  16. ^ Statistics Dissemination Project” (英語). oecd.org. 2016年9月23日閲覧。
  17. ^ UK Federation Providers” (英語). ukfederation.org.uk. 2016年9月23日閲覧。
  18. ^ Atypon Systems acquires Metapress from EBSCO Online, Inc.” (英語). Atypon Systems, Inc. (2014年4月14日). 2015年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月17日閲覧。
  19. ^ “Atypon acquires EBSCO Online platform” (英語). Business Wire. (2014年4月14日). http://www.businesswire.com/news/home/20140414006397/en/Atypon-Systems-Acquires-Metapress-EBSCO-Online 
  20. ^ Atypon completes Metapress transition to Literatum” (英語). Atypon (2015年5月27日). 2018年11月20日閲覧。
  21. ^ “EBSCO Publishing and EBSCO Information Services merge” (英語) (プレスリリース), EBSCO Industries, (2013年5月22日), http://www2.ebsco.com/EN-US/NEWSCENTER/Pages/ViewArticle.aspx?QSID=666 2013年6月3日閲覧。 
  22. ^ Title Lists” (英語). EBSCO Information Services. 2016年4月2日閲覧。
  23. ^ Unpaywall | EBSCO Apps & Cloud Services > Apps and Integrations for EBSCO Discovery Service” (英語). cloud.ebsco.com. DISCOVERY & SEARCH (NEW). EBSCO Discovery Service (2021年12月13日). 2022年1月1日閲覧。
  24. ^ EBSCO eBooks and audiobooks” (英語). 2018年2月26日閲覧。
  25. ^ Prorok, J. C.; Iserman, E. C.; Wilczynski, N. L.; Haynes, R. B. (September 10, 2012). “The quality, breadth, and timeliness of content updating vary substantially for 10 online medical texts: an analytic survey” (英語). Journal of Clinical Epidemiology 65 (12): 1289–95. doi:10.1016/j.jclinepi.2012.05.003. PMID 22974495. 
  26. ^ “Clinical Decision Support 2013: Sizing up the competition”. KLAS Research. (2013年12月). http://www.www.klasresearch.com/store/ReportDetail.aspx?Productid=863 [リンク切れ]
  27. ^ “A Small Company with Big Ideas for the Environment” (英語). Business & the Environment with ISO 14000 Updates. (2007). http://www.ebscohost.com/uploads/imported/thisTopic-dbTopic-889.pdf/. 
  28. ^ “EBSCO: A Plan for All Seasons” (英語). Information Today. (2011). http://www.infotoday.com/it/dec11/Benchley-Partnerships-in-Progress.shtml#EBSCO/. 
  29. ^ “Outstanding Philanthropists: James 'Jim' and Julie T. Stephens” (英語). Birmingham Business Journal. (2012). http://www.bizjournals.com/birmingham/print-edition/2012/11/09/2012-national-philanthropy-day-awards.html?page=all/. 
  30. ^ a b Jackie Zubrzycki, Do Online Databases Filter Out Enough Inappropriate Material?, Education Week (July 14, 2017).

関連項目編集

関連文献編集

外部リンク編集