ミカン科オレンジ(Citrus × sinensis)の木に咲くオレンジの花は、芳香のあるで、歴史上さまざまに利用されてきた。

オレンジの花と果実

フロリダ州州花である。

特徴 編集

 
Citrus sinensis メアリー・エミリー・イートン、1917年、ナショナル・ジオグラフィック

色は白か薄いピンクの両性花であり、香気が強く蜜も多いため蜜源植物となっている[1]萼片花びらは三回対称性または五回対称性を示す。雄しべは2重に並んでおり、外輪の雄しべは花びらと同じ位置にある。雌性生殖器官は、2つから5つ以上の心皮が合体した1個の雌しべからなる。1本の木から最大で6万個の花を咲かせるが、実を付けるのはそのうちの1パーセントでしかない[1]

言語 編集

イタリア語ではZagara(ザガラ)と呼ばれており、アラビア語で「輝き・白い輝き」を意味するzaharaと、「花」を意味するzahrから来ている。[2][3]

文化 編集

オレンジの木は、花と実を同時に付ける不可思議さから、古来より魔法神性と結びつけられてきた[4]。オレンジの実は多産を、そしてオレンジの白い花は純潔を象徴するとされ、西洋美術では聖母マリアアトリビュートのひとつとされている[5]。 その象徴性から、縁起物として結婚式ブーケヘッドリース英語版に使用される。

オランダの画家ヤン・アントニス・ファン・ラーヴァンスティンは、1663年に真珠と高価なエナメル製のオレンジの花で飾られた精巧な冠を頭に乗せたプリンセス・オブ・リーニュの肖像を描いた。[6]

オランダの画家ピーエル・クラースは、『七面鳥のパイのある静物』(1627年)の中で、くちばしにオレンジの花をくわえた置き物の鳥を描いた。[6]

1840年に結婚式を挙げたヴィクトリア女王は、レースのウェディングドレスの上にダイアモンドのティアラではなく、かぐわしいオレンジの花を飾った。[6]

ジョン・コーディ・ジェファーソンは、1870年代に「無色の花冠」はもういい加減やめたらどうかと言い、「黄色っぽい白のオレンジの花だけを身につけて見劣りしない美しい娘など千人にひとりもいない」のだから、「緑、紫、赤や深紅の色鮮やかな花冠をつけたほうがいい」と提案した。[6]


用途 編集

香水の製造に使用され、媚薬としても記述されていた[7]。香料としてオレンジの花の精油ネロリがある。ネロリの副産物として製造されているオレンジ花水は、水蒸気蒸留法を確立した中世アラビアでバラ水と共に愛好され[8]フランス料理スペイン料理中東料理英語版デザートなどへの香りづけとして利用されている。

開花期にの巣を設置すると、オレンジの花の蜂蜜(シトラスハニー)の製造と受粉が行われる。この蜂蜜は、非常に貴重でフルーティーな味わいと香りがする。

スペインでは、花を乾燥させたものがオレンジ花として飲まれている。

薬用 編集

鎮静効果が神経によって引き起こされる不快感や不眠を解消するのに利用されている。オレンジ花水やオレンジ花茶は伝統的な失神月経の不快感の治療薬として用いられる[9]

シナノキ属カモミールなどの他のハーブと組み合わせた茶は、伝統的な胃の痛みや頭痛の治療薬として知られている。

ギャラリー 編集

脚注 編集

  1. ^ a b ラスロー 2010, pp. 13–14.
  2. ^ Ferri, Fiorella (1999). Manuale delle feste. Hermes Edizioni. ISBN 9788879381611 Un riferimento letterario si trae da Flaubert, Gustave (1995). Madame Bovary. Guaraldi. p. 81. ISBN 9788880490319. Era un filo di ferro del suo bouquet da sposa. I boccioli di fiori d'arancio si erano ingialliti per la polvere...
  3. ^ Fiori d'arancio - dalla guida di NozzeItalia”. 2017年3月4日閲覧。
  4. ^ クラリッサ・ハイマン『オレンジの歴史』<「食」の図書館> 大間知知子訳 原書房 2016年 ISBN 9784562053247 p.124.
  5. ^ ラスロー 2010, pp. 237–241.
  6. ^ a b c d 『オレンジの歴史』株式会社原書房、2016年7月27日、96-99頁。 
  7. ^ Jeff Klinkenberg, Seasons of Florida
  8. ^ 山崎なつ子 『近世ヨーロッパの芳香蒸留水: 治療する貴婦人のホームメイド薬』 Kindle版、2017年
  9. ^ Hierbas para el dolor menstrual”. 2017年3月4日閲覧。

参考文献 編集

  • ピエール・ラスロー 著、寺町朋子 訳『柑橘類の文化誌:歴史と人の関わり』オーム社、2010年。ISBN 9784903532608 

関連項目 編集