キール・ロワイヤル

シャンパンをベースとするカクテル

キール・ロワイヤルは、カクテルの1種。キールに使われる白ワインを、シャンパンに変えたもの [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] 。 ただし、シャンパンはスパークリング・ワインの1種であることから、キール・ロワイヤルを、辛口のスパークリング・ワインとカシス・リキュールで作ったものと定義する場合もある [16] [17] [18] [19] 。 なお、キール・ロワイヤルは英語風に、ロイヤル・キールと呼ばれることもある [5] [20] 。 また、シャンパンを使用するキールなので、単にシャンパン・キールと呼ばれることもある [20]

キール・ロワイヤル

歴史 編集

「キール・ロワイヤル」は、「王のキール」という意味。キールが普及してきてから誕生したカクテル [21] であり、キールが誕生したのが第二次世界大戦後なので、キール・ロワイヤルが誕生したのも第二次世界大戦後となる。

名称にこそ「キール」と付くが、キールがフランス産まれのカクテルであるのに対し、キール・ロワイヤルは隣国のオーストリア産まれのカクテルであり [22] [21]ウィーンにあるインターナショナルと言う店のフーベルト・ドヴォルシャック(フーベルト・ドボルシャーク)の創作と言われている [22] [9] [16] [17]

一度開栓したシャンパンなどのスパークリング・ワインを、再び密栓できるシャンパン・ストッパーと言う器具が登場したのも第二次世界大戦後のことだが [23] 、この器具の出現によって、開栓した直後でないとその価値を失うスパークリング・ワインを幾分長持ちさせられるようになった。結果、キール・ロワイヤルをはじめとするシャンパンなどのスパークリング・ワインを使ったカクテルを、シャンパン・ストッパーの登場以前よりは気軽に作ることができるようになり、これがキール・ロワイヤルの普及にも一役買ったという指摘もある [24]

カクテルは、一般的に年代が降るにつれて辛口になってゆく傾向があるが 、このキール・ロワイヤルも例外ではなく、旧来は、フルート型シャンパン・グラスに、「シャンパン : カシス・リキュール = 125ml:25ml」くらいだったが、最近は、同じくフルート型シャンパン・グラスに、「シャンパン : カシス・リキュール = 135ml:15ml」くらいで作るといった具合に、甘味が減っているという報告もある [25]

標準的なレシピ 編集

  • シャンパン : カシス・リキュール = 4:1 〜 9:1

作り方 編集

カシス・リキュールを注いだフルート型シャンパン・グラスに、よく冷やしたシャンパンを注ぎ、ごく軽くステアすれば完成。なお、一般的なコールドドリンク(冷たいタイプのカクテル)とは違って、このカクテルの作成過程には、氷を使用して材料を冷却する工程が無い上、グラスにも氷が入っていないので、カシス・リキュールも含めて、材料はあらかじめ良く冷やしておくことが望ましい。同様にグラスもよく冷やしておく方が、より望ましい。

備考 編集

  • シャンパンは、辛口のものを用いるのが良いとされる[5]
  • シャンパンではなく、スパークリング・ワインでも良いとされることもある[26][9][11]。しかし、スパークリング・ワインを用いるのは、あくまでシャンパンの代用としてである[6][27][28][15]。シャンパンを使うのがフォーマルなキール・ロワイヤルとするならば、スパークリング・ワインを使った場合は、カジュアルなキール・ロワイヤルだと言える[9]
  • シャンパン以外のスパークリング・ワインを使用する場合も、やはり辛口のものが指定される場合がある[16][17]
  • シャンパンに限らず、スパークリング・ワインは、開栓すると急速に劣化する(炭酸二酸化炭素となって逃げてしまう)ので、開栓直後のものを使用する。したがって、このカクテルを店などで注文すると、場合によってはシャンパン1本分の代金も支払うことになる場合がある。
  • カシス・リキュールは、しばしば「クレーム・ド・カシス」(Creme de Cassis) が指定される[5][6][27][8][9][29][11][12][21][4][28][15][30][17][18][19]
  • なお、キール・ロワイヤルの場合も、キールと同様に、クレーム・ド・カシスの分量は、「(クレーム・ド・カシスの量は)涙3滴ぐらいだ」とフランス人は言ったりもする[31]
  • グラスは、シャンパン・グラスではなく、ワイン・グラスを用いる例もある[22][21][29][11][32]

バリエーション 編集

  • カシス・リキュールを、スロー・ジンに変えると、「フォーティーセカンド・ストリート」(42nd Street)となる。
  • カシス・リキュールを、フランボワーズ・リキュール(キイチゴのリキュール)に変えると、「キール・インペリアル」(Kir Imperial)となる[9][10][11][32]

関連したカクテル 編集

ラズベリー・シロップ30mlを、適量の無色透明の炭酸飲料(サイダー)で割った、「偽物のキール・ロワイヤル」という意味のフォー・キール・ロワイヤル(Faux Kir Royal)と呼ばれるカクテルも存在する [33] 。 フォー(Faux)はフランス語である。フォー・キール・ロワイヤルは、ノンアルコールカクテルなので、全ての材料が酒であるキール・ロワイヤルとは別なカクテルであり、バリエーションのカクテルとも言えない。フォー・キール・ロワイヤルにはレモン・スライスが飾られる場合もある [33]

関連項目 編集

出典 編集

  1. ^ 野村 正樹 『カクテルの飲り方(やりかた)』 p.134 PHP研究所 1997年7月31日発行 ISBN 4-569-55703-1
  2. ^ 上田 和男 監修 『カクテル・ハンドブック』 p.76 池田書店 1997年7月31日発行 ISBN 4-262-12007-4
  3. ^ 稲 保幸 『カクテルガイド』 p.138 新星出版 1997年4月15日発行 ISBN 4-405-09629-5
  4. ^ a b 稲 保幸 『カクテル こだわりの178種』 p.181 新星出版 1998年7月15日発行 ISBN 4-405-09640-6
  5. ^ a b c d 岡 純一郎 監修 『カクテルベスト100』 p.183 西東社 1991年7月30日発行 ISBN 4-7916-0927-1
  6. ^ a b c 上田 和男 『カクテル』 p.136 西東社 2001年3月15日発行 ISBN 4-7916-0994-8
  7. ^ 上田 和男 『カクテル Handy Book』 p.31 西東社 2001年3月15日発行 ISBN 4-7916-0977-8
  8. ^ a b 久保村 方光 監修 『イラスト版 カクテル入門』 p.193 日東書院 1997年4月1日発行 ISBN 4-528-00681-2
  9. ^ a b c d e f 福西 英三、花崎 一夫、山崎 正信 『新版 バーテンダーズマニュアル』 p.293 柴田書店 1995年10月31日発行 ISBN 4-388-05765-7
  10. ^ a b 澤井 慶明 監修 『カクテルの事典』 p.60 成美堂出版 1996年12月20日発行 ISBN 4-415-08348-X
  11. ^ a b c d e 永田 奈奈恵 監修 『ポケットガイド カクテル』 p.37 成美堂出版 1998年1月20日 ISBN 4-415-08549-0
  12. ^ a b 中村 健二 『カクテル』 p.149 主婦の友社 2005年7月20日発行 ISBN 4-07-247427-4
  13. ^ 若松 誠志 監修 『ベストカクテル』 p.157 大泉書店 1997年9月5日発行 ISBN 4-278-03727-9
  14. ^ 後藤 新一 監修 『カクテル・ベストセレクション100』 p.124 日本文芸社 1996年5月20日発行 ISBN 4-537-01747-3
  15. ^ a b c 後藤 新一 監修 『カクテル123』 p.145 日本文芸社 1998年12月15日発行 ISBN 4-537-07610-0
  16. ^ a b c 福西 英三 『カクテルズ』 p.31 ナツメ社 1996年9月1日発行 ISBN 4-8163-1744-9
  17. ^ a b c d 福西 英三 『カラーブックス 887 カクテル教室』 p.12 保育社 1996年5月31日発行 ISBN 4-586-50887-6
  18. ^ a b 花崎 一夫 監修 『ザ・ベスト・カクテル』 p.152 永岡書店 1990年6月5日発行 ISBN 4-522-01092-3
  19. ^ a b 花崎 一夫 監修 『カクテルハンドブック(ニューセレクション132)』 p.134 永岡書店 1997年11月10日発行 ISBN 4-522-31073-0
  20. ^ a b 福西 英三 『カラーブックス 563 カクテル入門』 p.93 保育社 1982年3月5日発行 ISBN 4-586-50563-X
  21. ^ a b c d 稲 保幸 『カクテル・レシピ1000』 p.176 日東書院 2005年7月10日発行 ISBN 4-528-01412-2
  22. ^ a b c 稲 保幸 『カクテルガイド』 p.139 新星出版 1997年4月15日発行 ISBN 4-405-09629-5
  23. ^ 福西 英三 『カラーブックス 887 カクテル教室』 p.115 保育社 1996年5月31日発行 ISBN 4-586-50887-6
  24. ^ 福西 英三 『カラーブックス 887 カクテル教室』 p.116 保育社 1996年5月31日発行 ISBN 4-586-50887-6
  25. ^ 永瀬 正人 『カクテル ポケットブック』 p.96 旭屋出版 1999年2月10日発行 ISBN 4-7511-0155-2
  26. ^ 稲 栄作 『カクテルレシピ1380』 p.85 柴田書店 1989年6月1日発行 ISBN 4-388-05502-6
  27. ^ a b 上田 和男 『カクテル Handy Book』 p.30 西東社 2001年3月15日発行 ISBN 4-7916-0977-8
  28. ^ a b 後藤 新一 監修 『カクテル・ベストセレクション100』 p.126 日本文芸社 1996年5月20日発行 ISBN 4-537-01747-3
  29. ^ a b 澤井 慶明 監修 『カクテルの事典』 p.151 成美堂出版 1996年12月20日発行 ISBN 4-415-08348-X
  30. ^ 福西 英三 『カラーブックス 563 カクテル入門』 p.95 保育社 1982年3月5日発行 ISBN 4-586-50563-X
  31. ^ 堀井 浩一 『つくる・飲む・楽しむ カクテール』 p.191 文研出版 1986年4月5日発行 ISBN 4-580-90230-0
  32. ^ a b 山本 祥一朗 監修 『カラー図解 カクテル』 p.78 成美堂出版 1994年12月10日発行 ISBN 4-415-07873-7
  33. ^ a b 成美堂出版 編集 『カクテル大事典800』 p.271 成美堂出版 2003年10月1日発行 ISBN 4-415-02264-2

主な参考資料 編集

  • 永田 奈奈恵 監修 『ポケットガイド カクテル』 成美堂出版 1998年1月20日 ISBN 4-415-08549-0
  • 岡 純一郎 監修 『カクテルベスト100』 西東社 1991年7月30日発行 ISBN 4-7916-0927-1
  • 稲 保幸 『カクテル・レシピ1000』 日東書院 2005年7月10日発行 ISBN 4-528-01412-2
  • 永瀬 正人 『カクテル ポケットブック』 旭屋出版 1999年2月10日発行 ISBN 4-7511-0155-2
  • 澤井 慶明(監修)、永田 奈奈恵(カクテル指導) 『カクテルの事典』 成美堂出版 1996年12月20日発行 ISBN 4-415-08348-X
  • 福西 英三 『カラーブックス 563 カクテル入門』 保育社 1982年3月5日発行 ISBN 4-586-50563-X
  • 福西 英三 『カラーブックス 887 カクテル教室』 保育社 1996年5月31日発行 ISBN 4-586-50887-6
  • 福西 英三、花崎 一夫、山崎 正信 『新版 バーテンダーズマニュアル』 柴田書店 1995年10月31日発行 ISBN 4-388-05765-7