クォークの閉じ込め(クォークのとじこめ、: quark confinement)とは、クォークを単独では取り出すことが出来ないという物理現象[1]

概要

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クォークは「色」(カラー)を持っており、強い力の作用によって、全体として「白色」となるような色の組み合わせ、すなわち「」・「」・「」や、「反赤」・「反青」・「反緑」のような3個のクォークの組み合わせ(バリオン)、あるいは、「赤」・「反赤」、「青」・「反青」、「緑」・「反緑」のような2個のクォークの組み合わせ(メソン)でしか存在することが出来ない。なお、「色」(カラー)とは、光の三原色を混ぜると白色に見えるという現象との類似性から名付けられたものであり、実際のクォークに光学的な意味でのがあるわけではない。

量子色力学の帰結としてクォークの閉じ込めが起こるのは、強い力を媒介するゲージ粒子であるグルーオンもまた色荷を持つことが原因である。クーロン力の場合、二つの電荷をもった粒子が離れるにしたがって、それらの間の電場は急速に減少するので、電子原子核の束縛を離れて自由になることが出来る。これに対して、強い力の場合、二つのクォークが離れるにしたがって、グルーオン場は細い色価のチューブ(あるいはストリング)を形成し、そのためクォークの受ける力は距離にかかわらず一定の値を維持する。エネルギーと距離のであるので、二つのクォークが引き離されると、それらの持つエネルギーは距離に比例して増大していく。そして、さらに二つのクォークが引き離されていくと、単純にそれ以上引き離すよりも、その間の真空から新たにクォークと反クォークの対を生成し2つの「白色」の粒子になる方が、必要なエネルギーが低くなってしまうのである。

加速器によるコライダー実験では、クォークが大きなエネルギーを得て、互いに引き離される状態が生ずる。その結果、それらのクォークの間の真空のいくつかの点で、複数のクォーク-反クォーク対の生成が起きる。こうして、クォークが加速器で作られるとき、検出器の中で独立のクォークが観察されるかわりに、たくさんの「白色」の粒子(メソンやバリオン)がクラスター状になった「ジェット」が観測されることになる。この過程は、ハドロナイゼイション英語版、フラグメンテーション、あるいはストリング・ブレイキングと呼ばれており、素粒子物理学において知られている最小のプロセスのひとつである。


弦理論

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クォークの閉じ込めについての現代における理論的説明は上記の通りだが、量子色力学の発展以前の1970年南部陽一郎レオナルド・サスキンド、ホルガー・ベック・ニールセンは弦理論を提唱した。かいつまんで述べると、物質の根源は点ではなく弦(ひも)であり、クォークは粒子ではなく弦(ひも)の端部であるというものである。すなわち、ひもをいくら切っても、端部だけを取り出す事は不可能であり、切られたひもにはそれぞれ端部が存在するというのである。その後の量子色力学の発展により、ハドロンを記述する理論としての弦理論は衰退したが、後に超弦理論を生み出す基礎となった。

脚注

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関連項目

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