グレンスミスの日記」(グレンスミスのにっき)は、吸血鬼一族の物語を描いた萩尾望都ファンタジー漫画作品『ポーの一族』シリーズのうち、『別冊少女コミック』1972年8月号に掲載された短編作品、およびそこに登場する架空の書物の名称である。

『ポーの一族』シリーズの第3作にあたり、前作「ポーの村」の続編でもある。

解説

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「ポーの村」に登場したグレンスミスの死後、末娘のエリザベスの苦難と悲哀に満ちた半生を描いた作品で、主人公のエドガー・ポーツネルは冒頭とラストの1ページずつとラストの手前の1コマにしか登場せず、シリーズにおいては番外編に近い性格の作品である。本作のラストでアラン・トワイライトが初登場するが、名前はまだ明らかにはされていない。ラストでメリーベル・ポーツネルの死が明らかにされ、次作品の「ポーの一族 (1972年の漫画)」の結末を予告している。

なお、本作でわずか24ページの中で密度の濃い内容を描ききっていることについて、後述するとおり他の漫画家から「グレンスミスの呪い」と呼ばれている。

あらすじ

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1899年グレンスミス・ロングバード男爵が死去し、末娘のエリザベスは遺品整理の際に見つけた彼の日記を読むと、そこには不死の一族である吸血鬼バンパネラ」が住むポーの村のことが記されていた。

1900年、エリザベスはドイツ人の音楽家、トニーと知り合い、親族たちの無言の冷たい承認のもと結婚しドイツに渡る。ベルリンの住まいで3人の娘が生まれささやかな幸せの日々が続くが、1914年7月、戦争が始まりトニーが徴兵され、不帰の人となる。また終戦後の1921年、次女ユーリエも17歳で急死する。

1922年、三女のアンナが教師のピエール・ヘッセンと結婚し、エリザベスは彼らと一緒にブレーメンに移る。翌1923年、長男ピエールが誕生し、以後1932年の四女マルグリットの誕生まで4人の娘が生まれるが、1939年、再び戦争が始まり、一家はツェレに移ることにする。その引越しの最中、古いグレンスミスの日記を見つけたマルグリットに、エリザベスはポーの村の話を語って聞かせる。

1959年3月、エリザベスとアンナは既に亡くなっており、小説家になったマルグリットは父ピエールとブレーメンで暮らしながら、いつかグレンスミスの日記を発表したいと考えている。

一方、近くに住むマルグリットの甥(おい)のルイス・バードはグレンスミスの日記を読み、ポーの村の話に登場するバンパネラの少年が、同じ学校[1]にいるエドガー・ポーツネルと同じ容姿と名前であることから、面白半分にエドガーに声をかけ、メリーベルという妹がいたらもっと面白くなると話したところ、メリーベルという妹がいたがずっと前に死んだと聞かされる。

日記の概要

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グレンスミスの日記は、グレンスミスが20歳頃でまだ結婚する以前の1865年のときのもので、最初に恋歌で始まり、青春の日々、華やぐ乙女たちへの憧れや失恋などが綴られていた。

その中に7月4日に友人のラトランド伯からサン・ダウン城に招かれ、7日にポーの村に迷い込み誤ってメリーベルを撃ったこと、翌晩エドガーに血を吸われ、そこが不死の一族「バンパネラ」が住む村であったことなどが書かれており、エリザベスが日記を読んだ時点でそのページが繰り返し開かれ読まれた跡が見られた。

日記にまつわる出来事

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  • 1865年 グレンスミス・ロングバード男爵(20歳のころ)、ポーの村で2夜を過ごし、日記に記す。
  • 1939年 マルグリット・ヘッセン、祖母エリザベスからグレンスミスの日記(ポーの村)の話を聞く。
  • 1959年 マルグリットの甥ルイス・バード、グレンスミスの日記を読み、エドガーにメリーベルのことを尋ねる。
  • 1960年 マルグリット、『グレンスミスの日記』発表[2]
  • 1964年 『グレンスミスの日記』英訳出版され、ドン・マーシャルはこれを読みマルグリットに会いに西ドイツに行く。同年2人は結婚[2]
  • 1965年 ドン・マーシャルとマルグリット、『バンパネラ狩り(ハント)』を共著で発表[2]

グレンスミスの呪い

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今市子が「お気に入りのコミックス」として『ポーの一族』を採り上げ、その中で本作について、ずっと70ページくらいの作品かと思っていたが数え直してみるとたった24ページしかなく、それにも関わらず70ページくらいのボリュームを感じさせていたことから、周囲の人たちとともに“グレンスミスの呪い”と呼んでいることを紹介している[3]

よしながふみも作者との対談で、今市子が「グレンスミスの呪い」と呼んでいたことに触れ、本作について24ページでこんなに描けるんだという素晴らしさを感じたと述べている[4]

脚注

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  1. ^ 「グレンスミスの日記」の中には記されていないが、「小鳥の巣」の舞台と同じガブリエル・スイス高等中学校ギムナジウム)である。
  2. ^ a b c ランプトンは語る」参照。
  3. ^ 『ネムキ』1999年10月号増刊「今市子特集号」(朝日ソノラマ)参照。
  4. ^ 萩尾望都対談集『愛するあなた * 恋するわたし』(河出書房新社、2014年5月) 第2章「やおいと純愛」(作者とよしながふみの対談)参照。