サイ (漢字学)
背景
編集漢字の字源解釈については、説文解字において篆書を部首による体系化、六書への分類が行われていた。「口」は顔の口を示していると考えられていたが、白川静は、その後発掘された甲骨文字、金文資料を吟味することにより、口(くち)と解釈するものではなく、「神に捧げる祝詞を収める箱」と解釈することにより、口部を有する漢字の統一的な字義解釈を行うことができるとし、 (サイ)を提唱した。これは、古代中国が宗教的社会であったことと漢字の成り立ちが密接に関係していることを主張したものである。
説文解字の字源解釈は篆書を用いているが、それ以前の文字である甲骨文字や金文が有していた字形を無くしている文字がある。このため、原初の文字と本来の意味から離れた解釈をつけている例が少なからずあり、 (サイ)を含む文字系列に対して訂正が必要としている。他にも「阜」が従来小高い丘の形とされていたのを、白川静は神梯の形としている。
なお、サイという発音は「才」「載」などの元字に という部分が含まれていることによる。祝詞が登載されていることから、訓読は「ノリト」である。
甲骨文字・金文における口
編集白川静によれば、甲骨文字、金文において、 (サイ)は「口(くち)」の意味で使用されている明確な例はないという。
また、「曰」は (サイ)の中に祝詞を収めている形という。
字源解釈の例
編集評価
編集参考文献
編集- 『字統』(平凡社)
- 『常用字解』(平凡社)
- 『漢字の世界』1・2(平凡社)
- 『漢字百話』(中央公論社)
- 小山鉄郎著『白川静さんに学ぶ漢字は楽しい』(共同通信社 ISBN 978-4764105782 2006年12月)
- 小山鉄郎著『白川静さんに学ぶ漢字は怖い』(共同通信社 ISBN 978-4764105850 2007年12月)