サタムプラ・ゼイロスの物語

サタムプラ・ゼイロスの物語』(サタムプラ・ゼイロスのものがたり、原題:: The Tale of Satampra Zeiros)は、アメリカ合衆国のホラー小説家クラーク・アシュトン・スミスによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つで、1929年に執筆され、『ウィアード・テイルズ』1931年11月号に掲載された。ヒューペルボリアを舞台とした作品のうち、最初に書かれた作品であり、既にコモリオムが廃都となっている。理由や、コモリオム健在の過去の物語は、後続作品で執筆される。

邪神ツァトゥグァの初登場作品である。スミスは正式発表前に、原稿をラヴクラフトに送っており、読んだラヴクラフトはツァトゥグァを気に入って、自分の作品に取り込んだ。その作品が『墳丘の怪』『闇に囁くもの』であるが、本作よりも『闇に囁くもの』の方が先に発表されることになり、結果ツァトゥグァをラヴクラフトの方がデビューさせることになったというエピソードがある[1]

東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて、「スミスの創造した邪神ツァトゥグア、初見参の一編。ダンセイニ卿が好んで手がけた幻想的な盗賊譚の影響を感じさせる」と解説している。[2]

あらすじ編集

ヒューペルボリアの首都ウズルダロウムでは警備が厳しくなり、大泥棒サタムプラ・ゼイロスと相棒のティロウヴ・オムバリスは落ちぶれる。そこで2人は発想を転換して、廃都コモリオムの古代の財宝を狙おうとする。

コモリオム郊外の、密林に埋もれた邪神ツァトゥグァの神殿にたどり着くも、青銅のツァトゥグア像には全く宝石など埋め込まれておらず、2人は落胆する。続いて、悪臭溢れる粘液を湛えた青銅の大鉢を発見する。大鉢を覗き込んだそのとき、粘液が怪物に変じて、2人に襲いかかる。2人は必死で森を逃げ回るも、気が付くと元の神殿に戻ってきており、背後には追って来た怪物が迫る。2人は神殿に逃げ込んで閂をかけ、二手に分かれて身を隠す。化物は形状を変化させながら、ティロウヴ・オムバリスに近づいて呑み込む。サタムプラ・ゼイロスは閂を外して扉を開けて外に出ようとするが、怪物から伸びてきた触腕に右腕を食われる。

友人と右腕を失ったサタムプラ・ゼイロスは命からがら逃げだし、左手で本書を執筆して、後続の盗賊や冒険者にツァトゥグア神殿の危険性を警告する。

主な登場人物編集

  • サタムプラ・ゼイロス - 主人公・語り手。大泥棒。青心社版では一人称「吾」で翻訳される。
  • ティロウヴ・オムバリス - 大泥棒。ゼイロスの信頼厚い仲間。
  • ツァトゥグァ像 - 青銅製の邪神像。蟇とナマケモノを連想させる姿。信仰は途絶えている。
  • 怪物 - ツァトゥグアの神殿の、青銅の鉢に潜み、侵入者に襲い掛かる。原形質状で、身体は可変。正体の解釈が異なり、ラヴクラフトは「キタミール星人」とした[3]が、TRPGでは「ツァトゥグァの落とし子」と名付けられている。

収録編集

関連作品編集

  • 七つの呪い - スミスの、ツァトゥグアが実際に登場する神話作品。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 『墳丘の怪』の方は発表が遅れて、ラヴクラフト没後の公開となった。
  2. ^ 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』335ページ。
  3. ^ ハワード・フィリップス・ラヴクラフト『銀の鍵の門を越えて