レイダーX

シコルスキー レイダーXは、ロッキード・マーティン傘下のシコルスキー・エアクラフト社が将来型攻撃偵察機(Future Attack Reconnaissance Aircraft, FARA)計画のために設計した、2枚の同軸反転ローターと1枚の推進プロペラを備える複合ヘリコプターである。その構想は、2019年10月に発表され、2020年3月には、5つの候補機の中から、ベル360インビクタスとともに試作機に選定された。機種選定は、2023年に行われる予定である。

開発 編集

2019年4月、FARAの設計構想を提案するため、シコルスキー社を含む5つのチームが選定され契約が締結された[1]

2019年10月14日、シコルスキーは、合衆国陸軍協会の年次総会で、その候補機であるレイダーXを公開した。レイダーXは、陸軍の武装偵察機計画のために開発されたシコルスキーS-97レイダーの発展型である。S-97は、実験機であるシコルスキーX2複合同軸ヘリコプターを元に開発された機体であった[2]。シコルスキーX2の派生機としては、より大型のシコルスキー・ボーイングのSB-1デファイアントも開発されている。この機体は、統合多用途回転翼機を開発する将来型長距離強襲機(Future Long Range Assault Aircraft, FLRAA)計画の候補機となっている[3]。シコルスキー社の複合ヘリコプターには、すべて、「X2テクノロジー」と呼ばれる、同軸で反転する無関節型ローターと推進プロペラを用いた設計が採用されている[4]

2020年3月25日、最終的な機種選定のための候補機として、シコルスキー社のレイダーXとベル社のベル360インビクタスが選択された[5]。 それぞれが試作機を製造し、2022年に試験飛行を開始して、2023年秋まで比較実証試験を行う予定となっている[6][7]。シコルスキー社は、2020年2月には、すでにレイダーXの製造に取り掛かっていた[8]

設計 編集

レイダーXは、FARA計画で示された仕様に従い、ゼネラル・エレクトリックT901エンジンを単発で搭載する[9]。このエンジンは、アメリカ陸軍の改善型タービン・エンジン・プログラムの下で、既存および将来の回転翼機で用いるための新型エンジンとして開発された[10]。S-97およびX2の性能から推定すると、レイダーXの最高速度は250 kn (460 km/h; 290 mph)を超え、実用上昇限度は9,000フィート (2,700 m)を超えるものと見込まれている[2]。 S-97はレイダーXの約80%の大きさであることから、レイダーXの重量は14,000 lb (6,400 kg)になると予測されている[11]。胴体の設計及び製造には、 スウィフト・エンジニアリング 社も参画している。[12]

コックピットには、アメリカの攻撃ヘリコプターにおいて一般的なタンデムシートではなく、サイドバイサイドシートとなっている。搭載武装およびセンサーには、FARAの仕様に従い、モジュラーシステムが用いられており、将来の改修および部品枯渇への対応が容易になっている[2]

武装は、機首部分に20mm機関砲、コクピットの後ろに胴体に格納できるウェポンベイがあり、ロケット弾やヘルファイア (ミサイル)等を搭載できる。20mm機関砲は、使用しない場合は収納することができ、機体も表面の突起物も少なくしているため高いステルス性がある機体設計となっている。

諸元(レイダーX) 編集

概要

参考 編集

関連機種

脚注 編集

  1. ^ Judson, Jen (2019年4月23日). “US Army picks 5 teams to design new attack recon helicopter”. Defense News. https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/aaaa/2019/04/23/us-army-picks-5-teams-to-design-new-us-army-attack-recon-helicopter/ 2019年10月15日閲覧。 
  2. ^ a b c Gallagher, Sean (2019年10月14日). “Sikorsky makes its bid for Army's next scout copter”. Ars Technica. https://arstechnica.com/information-technology/2019/10/sikorsky-makes-its-bid-for-armys-next-scout-copter/ 2020年3月26日閲覧。 
  3. ^ Parsons, Dan (2020年3月16日). “Bell's Valor, Sikorsky/Boeing Defiant advance in U.S. Army Future Assault Aircraft program”. Vertical. https://www.verticalmag.com/news/bell-valor-boeing-sikorsky-defiant-flraa-selection/ 2020年3月26日閲覧。 
  4. ^ Game-changing X2 Technology™ for Future Tactical Missions”. Lockheed Martin. 2020年3月26日閲覧。
  5. ^ Host, Pat (2020年3月25日). “US Army selects Bell, Sikorsky for FARA-CP programme”. Jane's Defence Weekly. https://www.janes.com/article/95110/us-army-selects-bell-sikorsky-for-fara-cp-programme 2020年3月26日閲覧。 
  6. ^ Judson, Jen (2018年10月3日). “US Army triggers design competition for future attack reconnaissance helicopter”. Defense News. https://www.defensenews.com/land/2018/10/03/us-army-triggers-design-competition-for-future-attack-reconnaissance-helicopter/ 2019年10月15日閲覧。 
  7. ^ Reim, Garrett (2020年3月25日). “US Army selects Bell and Sikorsky to build FARA prototypes”. Flight Global. https://www.flightglobal.com/helicopters/us-army-selects-bell-and-sikorsky-to-build-fara-prototypes/137538.article 2020年3月26日閲覧。 
  8. ^ Judson, Jen (2020年2月20日). “Lockheed’s Raider X enters construction in advance of US Army’s decision on way forward”. Defense News. https://www.defensenews.com/land/2020/02/20/lockheeds-raider-x-already-under-construction/ 2020年3月26日閲覧。 
  9. ^ Worley, Sam (2019年10月17日). “Meet Raider-X, America's Next-Gen Chopper”. Blades of Glory [blog]. General Electric. 2020年3月26日閲覧。
  10. ^ Judson, Jen (2019年4月15日). “Army sees path to accelerate ITEP engine program with GE”. Defense News. https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/aaaa/2019/04/15/army-sees-path-to-accelerate-itep-engine-program-with-ge/ 2020年3月26日閲覧。 
  11. ^ Parsons, Dan (2019年10月14日). “Sikorsky reveals Raider X for Army's FARA program”. Vertical. https://www.verticalmag.com/news/sikorsky-reveals-raider-x-for-armys-fara-program/ 2020年3月26日閲覧。 
  12. ^ Swift Engineering Selected for the Design and Construction of FARA Airframe for Sikorsky, a Lockheed Martin Company

外部リンク 編集