ジノスタチン スチマラマー

ジノスタチン スチマラマー[1](Zinostatin stimalamer)は、血管透過性・滞留性亢進効果(EPR効果)を応用した抗癌剤である。1993年10月に日本で承認されたが[1]:1、2012年3月に製造販売中止となった[2]

ジノスタチン スチマラマー
発色団部分の構造式
IUPAC命名法による物質名
識別
CAS番号
123760-07-6
PubChem SID: 17397393
KEGG D03240
別名 Ala1Nα,Lys20Nε-bis[poly(styrene-co-mono-n-butylmalaete)] neocarzinostatin
YM881
化学的データ
分子量約15,000Da
テンプレートを表示

効能・効果 編集

肝細胞癌[1]:11

ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルに懸濁して動脈注射で用いる。

警告 編集

ショック、肝不全、急性腎不全および胃穿孔、消化管出血・潰瘍等の重篤な副作用が現れる事がある[1]:22

禁忌 編集

  • 製剤成分またはヨード系薬剤に対する重篤な過敏症の既往歴のある患者
  • 重篤な甲状腺疾患のある患者

副作用 編集

重大な副作用として[1]:23-24

  • ショック(血圧低下、呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫(顔面浮腫、咽頭浮腫等)、蕁麻疹等)
  • 肝不全
  • 肝膿瘍
  • 肝内胆汁性嚢胞
  • 間質性肺炎(発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等を伴う)
  • 成人呼吸窮迫症候群
  • 急性腎不全
  • 胃穿孔、消化管出血、胃・十二指腸潰瘍
  • アシドーシス
  • 脊髄梗塞、両下肢麻痺等

が知られていた。

化学的特徴 編集

ジノスタチン スチマラマーは、ジノスタチン(NCS,発色団+アポタンパク質)、部分ブチルエステル化スチレン-マレイン酸交互共重合体(SMA)からなる高分子である。

アポタンパク質は113個のアミノ酸よりなり、下記のアミノ酸配列をとる。1位のアラニンのN末端と20位のリジンのεアミノ基に交互共重合体が結合している。

Ala*-Ala-Pro-Thr-Ala-Thr-Val-Thr-Pro-Ser-Ser-Gly-Leu-Ser-Asp-Gly-Thr-Val-Val-Lys*-Val-Ala-Gly-Ala-Gly-Leu-Gln-Ala-Gly-Thr-Ala-Tyr-Asp-Val-Gly-Gln-Cys-Ala-Trp-Val-Asp-Thr-Gly-Val-Leu-Ala-Cys-Asn-Pro-Ala-Asp-Phe-Ser-Ser-Val-Thr-Ala-Asp-Ala-Asp-Gly-Ser-Ala-Ser-Thr-Ser-Leu-Thr-Val-Arg-Arg-Ser-Phe-Glu-Gly-Phe-Leu-Phe-Asp-Gly-Thr-Arg-Trp-Gly-Thr-Val-Asp-Cys-Thr-Thr-Ala-Ala-Cys-Gln-Val-Gly-Leu-Ser-Asp-Ala-Ala-Gly-Asn-Gly-Pro-Glu-Gly-Val-Ala-Ile-Ser-Phe-Asn

共重合体の構造は、

-CO-CHR1-CHR2-COOH または -CO-CHR1-CHR2-COO-NH+
4

であり、

R1=-[CH(C6H5)-CH2-CH(COOX1)-CH(COOX2)]m-C(CH3)2-C6H5 または -[CH2-CH(C6H5)-CH(COOX2)-CH(COOX1)]n-H(m+n=平均5.5)、
R2=-CH2-CH(C6H5)-CH(COOX2)-CH2-COOX1 または -CH(C6H5)-CH2-CH(COOX1)-CH(COOX2)-C(CH3)2-C6H5(R1≠R2)、
X1,X2=-H,NH+
4
[注 1],-C4H9(X1,X2は1単位中で同時に-C4H9とならない)

である。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ -COOX = -COONH+
    4

出典 編集

  1. ^ a b c d e スマンクス肝動注用4mg/スマンクス肝動注用6mg インタビューフォーム”. 2022年1月3日閲覧。
  2. ^ 2017年ノーベル化学賞を予想する① がん治療における新たな概念の発見”. 日本科学未来館(Miraikan). 2022年1月3日閲覧。

外部リンク 編集

前田浩「新しい概念の制癌剤スマンクス―その研究18年をふり返って」『青木平八郎記念予防医学広報助成事業団疫学・予防情報』第10巻、1994年7月、44-51頁。