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スカラー (物理学)

大きさのみを持つ量

物理学ではスカラー: scalar)とは、大きさのみを持つのことをいう。大きさと向きを持つベクトルに対比する概念である。ハミルトンは、「1つのスケール上に含まれるマイナス無限大からプラス無限大までの、すべての数値」と表現した[1]

例えば物体空間内を運動するときの速度が大きさと方向を含むベクトルであるのに対し、その絶対値(大きさ)である速さは方向を持たないスカラーである。他にも質量長さエネルギー電荷温度などはスカラー量である。一方でベクトル量の代表的なものは電界運動量などである。

より狭義にはスカラーは座標系に依存しないことが要求される。「現在の宇宙の大きさは何億光年か?」という質問には現代科学は答えることができない。そこ現在の宇宙の大きさを1とした場合の大きさを計算するのが普通である。それを「(宇宙の)スケール因子」と言い、a(t)という関数で表す。これは時間(宇宙年齢)のみに依存するパラメータである。

ここで宇宙論パラメータが必要になる。

ハッブル定数をH_0

物質成分密度パラメータをΩ_m、

ダークエネルギー成分密度パラメータをΩ_Λ

とすれば、

a(t)=(Ω_m/Ω_Λ)^(1/3){sinh{(3√Ω_Λ/2)H_0t}^(2/3)・・・①

となる。

ここでは

H_0=70.1

Ω_m=0.279

Ω_Λ=0.721

として計算する。すると①式は、

a(t)=0.729{sinh{(1.27H_0t}^(2/3)・・・①

となる。さてここで、

H_0=0.701/(9.778×10^9)

であるので、たとえば80億年の時の宇宙の大きさは、

a(t)=0.729{sinh{(1.27×(8×10^9)×0.701/(9.778×10^9)}^(2/3)

=0.729{sinh(0.728)}^(2/3)

≒0.625

となる。つまり今の大きさと比べて0.625倍だったことを意味する。同様に60億年で計算すると、おおよそ半分だったことが分かる。また100億年後には約2倍の大きさになることが分かる。

以上の計算式は近似計算である。

時空曲率はゼロとして計算しているし、放射成分も無視している。

宇宙の初期に近づくほど、宇宙年齢が若いほど不正確になる。

実際には微分方程式を解かねばならない。

【なぜスケール因子を用いるのか?】

実際の宇宙の大きさをメートルとか光年とかの単位で決めることはできない。最低でも半径780億光年はあると考えられているが定かではない。しかし宇宙の膨張とは空間の相似拡大を意味するので、拡大率が分かれば宇宙膨張の振る舞いを調べることが可能である。なのでその拡大率をスケール因子で表すのだ。

残念なことにこれが現代宇宙論の限界である。

脚注編集

  1. ^ ダニエル・フライシュ; 河辺哲次訳 『物理のためのベクトルとテンソル』 岩波書店、2013年、4頁。ISBN 978-4-00-005965-7 

関連項目編集