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ダブル・ダブル (推理小説)

ダブル・ダブル』(Double, Double )は、1950年に発表されたエラリイ・クイーンの長編推理小説

ダブル・ダブル
Double, Double
著者 エラリイ・クイーン
発行日 1950年
ジャンル 推理小説
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
形態 文章芸術
前作 九尾の猫
次作 ライツヴィルの泥棒
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架空の町であるライツヴィルを舞台とする作品の一つ。

あらすじ編集

探偵のエラリイは、『十日間の不思議』での失敗によってライツヴィルとの縁は切れたものと思っていた。しかしある日突然、ライツヴィルでこの数箇月間に起こった出来事について書かれた新聞記事の切り抜きが入った、匿名の手紙が届く。それらの記事には、大工場の経営者が心臓病で死亡したこと、その大工場の共同経営者が破産して自殺したこと、そして、エラリイの古い知り合いであり、「町の乞食」と呼ばれているトム・アンダースンが行方不明になったことが書かれていた。

さらに、トム・アンダースンの娘リーマがエラリイを訪ねてくる。リーマは父親の死を確信しており、エラリイに父親の死についての調査を依頼する。元々、他の2人の死にも疑問を感じていたエラリイは依頼を受け、リーマと共にライツヴィルに向かう。

ライツヴィルに着いたエラリイは、リーマを助手として扱うことにし、自身を「チーフ」と呼ばせる。一連の事件によって大工場の経営権を相続し、トム・アンダースンとも関わりのあったドッド博士に疑いの目を向けたエラリイは、犯行の証拠を見つけるためにリーマを博士宅に住み込みで働かせるが、なかなか有力な証拠が得られない。そうこうするうちにリーマはドッド博士の助手ケンと恋に落ち、調査から手を引いてしまった。

そんなある日、ドッド博士宅に「町の泥棒」と呼ばれる男が忍び込み、正当防衛で殺される。ここでエラリイは、「金持、貧乏人、乞食に泥棒、お医者に弁護士、商人、かしら(チーフ)」というマザー・グースの歌詞[1]の順番に事件が起こっていることに気が付く。次の被害者は医者であるドッド博士に違いないと考えたエラリイは博士に警告するが、その甲斐なく博士は自動車事故に見せかけて殺されてしまう[2]

その後も、歌詞の通りに悲劇は続く。ドッド博士の顧問弁護士がビルの窓から転落死し、火災により仕立て屋の兄弟の一人が死亡、一人が重傷を負う。そして最後に、「チーフ」であるエラリイが銃で撃たれる。たまたま防弾チョッキを着ていたため助かったエラリイは、遂に真相を見破り、犯人の逮捕に向かう。

主な登場人物編集

  • リューク・マッケイビー - 「ライツヴィルの隠者」。ペンキ染料工場の共同株主。エラリイに彼の死亡記事が載った新聞切り抜きが届く。
  • ジョン・スペンサー・ハート - ペンキ染料工場の共同株主で経営者。会社の金を流用したらしく、自殺を遂げる。
  • セバスチャン・ドッド博士 - ライツヴィル病院の院長。マッケイビーの遺産受取人。「ライツヴィルの聖者」の異名をとり尊敬されている。
  • ヘンリー(ハリー)・トイフェル - マッケイビーの世話を住み込みでしていた同居人。にもかかわらず遺産が貰えなかった。
  • トマス・アンダースン - 「ライツヴィルの呑んだくれ」。行方不明になり、警察は殺されたと疑っている。
  • リーマ・アンダースン - トマスの娘。自然のなかで育った野生児。
  • エラリイ・クイーン - ライツヴィルを四たび訪れた名探偵。主人公で推理作家。
  • ウルフ(ウルファート)・ヴァン・ホーン - ライツヴィルで有名なホーン財閥の総帥。前作『十日間の不思議』の登場人物により近況が触れられる。

提示される謎編集

  • 見立て殺人(マザー・グース)

作品の評価編集

  • エラリー・クイーン・ファンクラブ[3]会員40名の採点による「クイーン長編ランキング」では、本作品は20位となっている[4]

日本語訳書編集

備考編集

  • タイトルの「ダブル」は、作中でエラリイがリーマに「物事には常に表と裏が存在すること」を語っていること、それに伴って随所で「二面性」が登場する[5]ことに由来する。
  • 作者は1930年代に既に本作の構想を立てていたが、マザー・グースの歌詞の順に殺人が起きるというプロットがアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』(1939年)と同じであったため執筆を中断し、複数のマザー・グースが絡む『靴に棲む老婆』を先に執筆した[6]

脚注編集

  1. ^ アメリカで歌われる歌詞の一つ。イギリスでは「鋳かけ屋、仕立て屋、兵隊、船乗り、金持ち、貧乏人、乞食、泥棒」と歌われる。
  2. ^ 犯人が何らかの方法で事故を誘発させたのか、それとも殺人の後で事故を偽装したのかは最後まで不明。
  3. ^ 1980年創立の日本国内のファンクラブ、2012年時点で会員は150名。http://www006.upp.so-net.ne.jp/eqfc/
  4. ^ 『エラリー・クイーン Perfect Guide』(ぶんか社、2004年)。
  5. ^ 被害者の多くが意図して殺されたのかどうかが不明であった他、ドッド博士が善人か悪人かについてやマザー・グースの2通りの歌詞など多数。
  6. ^ 『ダブル・ダブル』(青田勝訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、1976年) 巻末解説より。