トリエチレンテトラミン

トリエチレンテトラミン (Triethlenetetramine or TETA and trien) は、トリエンチン (Trientine) (国際一般名)とも呼ばれる化学式 [CH2NHCH2CH2NH2]2 で表される有機化合物である。無色の油状の液体だが、多くのアミン類と同じように古くなると空気酸化による不純物のために黄色をおびる。極性溶媒に可溶である。TETAの商業サンプルには分枝異性体のトリス (2-アミノエチル) アミンおよびピペラジンが混入している可能性がある[1]

トリエチレンテトラミン
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識別情報
CAS登録番号 112-24-3
PubChem 5565
ChemSpider 21106175
特性
化学式 C6H18N4
モル質量 146.23 g mol−1
外観 無色液体
密度 982 mg mL−1
への溶解度 混和
危険性
GHSピクトグラム 腐食性物質 急性毒性(低毒性)
GHSシグナルワード DANGER
Hフレーズ H312, H314, H317, H412
Pフレーズ P273, P280, P305+351+338, P310
引火点 129°C
半数致死量 LD50
  • 550 mg kg−1 (dermal, rabbit)
  • 2.5 g kg−1 (oral, rat)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

使用編集

TETAの反応性と用途は、関連のあるポリアミンのエチレンジアミンおよびジエチレントリアミンと同様である。これは主にエポキシ硬化の架橋剤 (硬化剤) として使用される[2]

医学的用途編集

「トリエンチン塩酸塩」と呼ばれるTETAの塩酸塩は、キレート剤であり、特にウィルソン病を治療するために体内の銅に結合、除去するため、特にペニシラミンに不寛容な人に対して 使用される[3][4]。一次治療としてトリエンチンを推奨する人もいるが、ペニシラミンの経験はより広範囲である[5]

トリエンチン塩酸塩 (商品名 Syprine) は、1985年11月に米国で医療用に承認された[3]

トリエンチン四塩酸塩 (商品名 Cuprior) は、2017年9月に欧州連合での医療用として承認された[6]。これは、D-ペニシラミン療法に不耐性の成人、青年、および5歳以上の子供におけるウィルソン病の治療に適応される[6]

トリエンチン二塩酸塩 (商品名 Cufence) は、2019年7月に欧州連合での医療用として承認された[7]。これは、D-ペニシラミン療法に不耐性の成人、青年、および5歳以上の子供におけるウィルソン病の治療に適応さる[7]

最も一般的な副作用は、吐き気、特に治療開始時の皮膚発疹、十二指腸炎、および重度の大腸炎 (大腸の炎症が痛みと下痢を引き起こす) である[7]

社会と文化編集

論争編集

米国では、Valeant Pharmaceuticals International社は、5年間で100錠のTETAのSyprineブランドの価格を625ドルから21,267ドルに引き上げた。ニューヨークタイムズは、この「ひどい」値上げが国民の怒りを引き起こしたと述べた[8]。Teva Pharmaceuticals社はジェネリックを開発し、患者と医師はより安いと期待していたが、2018年2月に導入されたとき、Tevaの価格は100錠で18,375ドルであった[8]。ハーバード大学医学部で薬価を研究しているアーロン・ケッセルハイムは、製薬会社は市場が負担すると考えている価格で製品の価格を設定していると述べた[8]

製造編集

TETAは、エチレンジアミンまたはエタノールアミン/アンモニア混合物を酸化物触媒上で加熱することによって調製される。このプロセスにより、さまざまなアミン類、特に蒸留と昇華によって分離されるエチレンアミン類が得られる[2][9]

配位化学編集

TETAは、配位化学の四座配位子であり、トリエンと呼ばれる[10]。M(trien)L2 タイプの八面体錯体は、いくつかのジアステレオマー構造をとることができる[11]

脚注編集

  1. ^ Ethyleneamines, Huntsman, (2007), http://www.huntsman.com/performance_products/Media%20Library/a_MC348531CFA3EA9A2E040EBCD2B6B7B06/Products_MC348531D0B9FA9A2E040EBCD2B6B7B06/Amines_MC348531D0BECA9A2E040EBCD2B6B7B06/Ethyleneamines_MC348531D0CD3A9A2E040EBCD2B6B7B06/files/ethyleneamines_brochure_huntsman_ethyleneamines.pdf 
  2. ^ a b Eller K, Henkes E, Rossbacher R, Höke H (2005). "Amines, Aliphatic". Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry. Weinheim: Wiley-VCH. doi:10.1002/14356007.a02_001. ISBN 3527306730
  3. ^ a b Syprine- trientine hydrochloride capsule”. DailyMed (2016年12月22日). 2020年9月21日閲覧。
  4. ^ Trientine hydrochloride capsule”. DailyMed (2020年2月28日). 2020年9月21日閲覧。
  5. ^ “A practice guideline on Wilson disease” (pdf). Hepatology 37 (6): 1475–92. (June 2003). doi:10.1053/jhep.2003.50252. PMID 12774027. http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/106595824/PDFSTART. [リンク切れ]
  6. ^ a b Cuprior EPAR”. European Medicines Agency (EMA). 2020年9月21日閲覧。 Text was copied from this source which is © European Medicines Agency. Reproduction is authorized provided the source is acknowledged.
  7. ^ a b c Cufence EPAR”. European Medicines Agency (EMA) (2019年5月24日). 2020年9月21日閲覧。 Text was copied from this source which is © European Medicines Agency. Reproduction is authorized provided the source is acknowledged.
  8. ^ a b c Thomas, Katie (2018年2月23日). “Patients Eagerly Awaited a Generic Drug. Then They Saw the Price.”. https://www.nytimes.com/2018/02/23/health/valeant-drug-price-syprine.html 2020年9月21日閲覧。 
  9. ^ “Epoxide Resins”. Plastics Materials (Seventh ed.). Oxford: Butterworth-Heinemann. (1999). pp. 744–777. doi:10.1016/B978-075064132-6/50067-X. ISBN 9780750641326. https://archive.org/details/plasticsmaterial00bryd 
  10. ^ Stereochemistry of Coordination Compounds. Chichester: John Wiley. (1995). ISBN 047195599X. https://archive.org/details/stereochemistryo0000zele 
  11. ^ “Three Isomers of the Trans -Diammine-[N,N′-bis(2-Aminoethyl)-1,2-Ethanediamine]-Cobalt(III) Complex Cation”. Three Isomers of the trans-Diammine-[N,N′-bis(2-Aminoethyl)-1,2-Ethanediamine]-Cobalt(III) Complex Cation. Inorganic Syntheses. 23. (1985). pp. 79–82. doi:10.1002/9780470132548.ch16. ISBN 9780470132548