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OECD諸国の医薬品市場における後発医薬品シェア。
青は金額比、赤は数量比[1]

後発医薬品(こうはついやくひん)、ジェネリック医薬品: generic drug, generic medicine[2])とは、先発医薬品の独占的販売期間の終了後に発売される、先発医薬品と同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則同一であり、先発医薬品に比べて低価格な医薬品である。販売名は、各統一ブランド名称の後ろに剤型と「会社名(屋号)」となっている。

後発薬GE薬といった略称で呼ばれることもある。

概要編集

期限切れになった先発医薬品の特許内容を参考に製造されることから、同じ有効成分の医薬品でも後発医薬品は複数存在する。医薬品の有効成分は一般名 (generic name) で表せるので、欧米では後発医薬品を処方するのに一般名を用いることが多い。後発医薬品は先発医薬品の発売からおよそ10年経過してから発売される薬であるため、その間に、進歩した最新の製剤技術を取り入れることで、飲みやすさの工夫、使いやすさの工夫などを付け加えている。

後発医薬品の価格は、最初に販売した時は原則、先発医薬品の7割、その後は薬価改定を受けて先発医薬品の2割程度になる。

かつて日本の後発医薬品の普及率は、欧米に遅れていたが[2]厚生労働省主導で、普及へ向けての政策が進められた結果、日本における後発医薬品の普及率は、76.5%(2018年8月。数量ベース)[3]となり、欧米と同等の普及率となっている。なお、アメリカ82%、イギリス81%、ドイツ79%、カナダ70%、オランダ69%、デンマーク54%、オーストラリア50%となっている(2013年・数量ベース)[1]

承認申請編集

先発医薬品の承認申請には、発見の経緯や外国での使用状況、物理的化学的性質や規格・試験方法、安全性、毒性・催奇性、薬理作用、吸収・分布・代謝・排泄、臨床試験など数多くの試験を行い、26の資料を提出する必要がある。

これに対して後発医薬品では、「規格及び試験方法」、「安定性試験」、「生物学的同等性試験」の3つの資料と添付文書記載事項(添付文書案)の提出によってPMDAにより審査され、製造承認がおりる。

先発医薬品と比較して後発医薬品の承認申請資料が少ないのは、有効成分に関する有効性・安全性はすでに先発医薬品において確認されている(毒性試験、薬理試験、臨床試験等)ため、同一の有効成分を使用する後発医薬品ではそれらの試験の必要がないためである。

この考え方は、FDA(アメリカ食品医薬品局)、EMA(欧州医薬品庁)をはじめ諸外国でも同様に認められており[4]、後発医薬品の実施試験が少ないからといって、先発医薬品と比べて有効性、安全性、品質が劣ることはない。

生物学的同等性試験編集

後発医薬品が先発医薬品と同等の薬効・作用を持つことを証明するために、後発医薬品の承認申請には、生物学的同等性試験のデータが必要とされる。

生物学的同等性試験では原則として、ヒト(健常人)に先発医薬品・後発品を投与し、両者の血中濃度推移に統計学的な差がないことを確認する[5]。より具体的には、先発医薬品・後発品を各10〜20名程度の健常人に投与し、一定時間ごとに採血を行い、薬物血中濃度の推移を比較し、両群の間に統計学的な差がないことを証明する手法がとられる。ただし、倫理的な面や、製剤特性等の理由から、ヒト以外の動物での試験が認められることもある。

日本では現在、厚生労働省より通達されている「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」に従って生物学的同等性試験が行われている。

品質再評価編集

1997年4月以降、新薬の承認時には溶出試験規格の認定が義務付けられ、当該医薬品の後発品についても溶出試験規格が求められていたが、それ以前の医薬品には溶出試験規格がない製品もあった。そこで、溶出試験規格がない医薬品のうち、後発医薬品があり、かつ先発医薬品との同等性を設定する必要がある約550成分(約7000品目)を対象として、1997年2月から厚生省が品質の再評価を始めた。手順としては対象成分が選定されると先に標準製剤(通常は先発医薬品)に溶出試験の条件を設定し、次いで標準製剤と後発医薬品の溶出試験結果を比較、類似していることが確認されれば、後発医薬品にも溶出試験が設定されます。先発医薬品と後発医薬品の溶出挙動が類似しているのであればバイオアベイラビリティーに著しい差が生じる可能性はなくなるという考え方に基づいたものである。

その結果、現在では先発医薬品との溶出同等性が保証されている。

オレンジブック編集

オレンジブック (Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations) とは、後発医薬品の使用促進のため米国で発刊されているもので、アメリカ食品医薬品局(FDA)が先発医薬品と後発医薬品の生物学的同等性の判定を行い(生物学的同等性試験)、その治療上の同等性についての評価を掲載したものである。この本の表紙がオレンジ色であることから「オレンジブック」といわれている。

日本版オレンジブックとは「医療用医薬品品質情報集」のことで、上記の品質再評価の経過や結果を掲載したものである[6]。日本版オレンジブックは通知のごとに発行されるため一覧性がなく、通知に含まれない重要な品質再評価情報が掲載されないことがあるため、日本ジェネリック製薬協会がこれらを補い、さらに広範囲の情報を掲載したものを「オレンジブック総合版」としてネット上で公開している。

オーソライズド・ジェネリック(AG)編集

オーソライズド・ジェネリック(: Authorized generics, AG)とは、先発医薬品の製薬会社が特許権をオーソライズ(公認)したジェネリック医薬品であって、先発医薬品とは別の会社が販売するものである。ジェネリック医薬品は先発医薬品と有効成分が同等であるが、AGの場合は、更に先発製剤と原薬・添加物・製法・形状・色・味が同一で、製造工場・効能・効果も一部の例外を除いて、先発医薬品と同一である[7]

そのため、他の後発医薬品と違って、生物学的同等性などの試験を省くことができ、また、先発医薬品からの切替に対する医療従事者・患者の抵抗が少ない。これは、先発医薬品の特許が切れる前に発売することができ、さらにアメリカ合衆国では「180日ルール」(ジェネリック市場での180日間の独占販売権)が適用されるため、後から発売されるジェネリック医薬品に先駆けて、市場を独占できる可能性がある。

製造プロセスでいくつかに分けられ、生物学的同等性試験の結果、ジェネリック医薬品としては承認の範囲内でも、先発医薬品とは明らかにAUCやCmaxが異なる場合もあり、AGといっても均一ではない[8]

  • パターン1 - すべて先発医薬品メーカーと同じ原薬、製法、技術者、製造ラインを用いて子会社が製造(承認申請に際し生物学的同等性試験は不要)
  • パターン2 - 先発医薬品と同じ原薬、製法を用いて子会社が製造(生物学的同等性試験が必要)
  • パターン3 - 異なる原薬を用い同じ製法で子会社が製造(生物学的同等性試験が必要)

日本初のAGは、フェキソフェナジン塩酸塩錠「SANIK」(先発医薬品はアレグラ)で、30mg錠、60mg錠ともに2013年6月に薬価収載された[9]。ただし、アレグラのジェネリック医薬品は既発であったため、先行販売ではなかった。

AGと、AGではないGEは、いずれも一般名+「メーカー名」であるため見分けがつかない。

  • 例:フェキソフェナジン塩酸塩錠「SANIK」はAG。フェキソフェナジン塩酸塩錠「トーワ」、フェキソフェナジン塩酸塩錠「YD」などはGE。

日本の状況編集

 
OECD各国の人口あたり医薬品消費額[1]

後発医薬品の普及率は、アメリカ合衆国イギリスドイツデンマークなどの国家では、数量ベースで7割近くを占めるのに対し[1]、かつての日本では1割程度に留まっていた。

これはブランド嗜好が強い国民性が浸透していた医療の現場において医師が、情報提供が少なく信頼性に不安を感じる後発医薬品よりも、長年の育薬に基づく豊富な情報が提供され、後発品に比べて薬効・供給量の安定している先発医薬品を処方したためと考えられる[2]。OECDは、大多数の患者は後発薬処方を希望するが医師の9%しか同意せず、それは医師収入への影響と薬剤品質への懸念が理由であると報告している[2]

2007年6月、「経済財政改革の基本方針2007」が閣議決定され、2012年度に数量ベースで30%の数値目標を掲げた[10]。後発品の数値割合の定義(旧指標)は、以下の通り[10]

(後発品の数値割合)=(後発医薬品の数量)/{(全医薬品の数量)-(「経腸成分栄養剤」「特殊ミルク製剤」「生薬」「漢方」の数量)}

2009年のOECD対日審査においては医療制度改革に一節が割かれ、後発医薬品の推進についても言及されている[2]。日本は少子高齢化社会を迎え、医療費上昇に伴って公的健康保険財政は困難に直面しており、その一環として薬価の低い後発医薬品が着目されている[11][2]財務省財政制度等審議会 財政構造改革部会資料によれば、後発医薬品に変えることで1兆3千億円程度の医療費を削減できるとの試算がある。OECDは米国並みに後発薬を普及させることで、総医療費を7%(GDPの0.5%)削減することができるとし、2010年までにシェアを最低でも30%とするよう勧告した[2]

2013年4月、厚生労働省は、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し取組を進め、2018年3月までに数量シェア60%以上を目標に掲げた[12]。後発品の数値割合の定義(新指標)は、以下の通り[13]

(後発品の数値割合)=(後発医薬品の数量)/{(後発医薬品のある先発医薬品の数量)+(後発医薬品の数量)}

2014年に政府は、後発薬シェアを2017年までに34%まで引き上げ、それにより保健支出を0.4兆円削減する目標を立てた[14]。OECDは、もし後発薬シェアを米国並み(84%)に引き上げ、かつ価格が10%低下すれば、薬剤支出を半減することができるとしている[14]

2015年6月末には日本政府の財政赤字脱却を目指す「財政健全化計画」が経済財政運営の指針「骨太の方針2015」に盛り込まれ、歳出抑制の具体策の目玉としてジェネリック医薬品の普及が謳われた。5月19日には、安倍晋三首相が議長を務める経済財政諮問会議にて、民間議員が示した改革案に、業界首脳らはこぞって反対した。その内容は、ジェネリックの数量シェアを80-90%へ引き上げ、さらに2018年度からは長期収載医薬品に対する公的医療保険の給付額を後発品の薬価までとして差額分は患者負担とする「参照価格制度」の導入などであった[15]。同年6月の閣議決定において、2017年央にに数量シェア70%以上とするとともに、2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする目標が定められた[12]

2017年6月の閣議決定において、「2020年(令和2年)9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する。」と定められた[12]。薬価調査結果による後発医薬品の数値割合(数量シェア)は、2017年 65.8%[13]、2018年9月 72.6%[16]

後発医薬品メーカー編集

後発医薬品の製造販売を中心とするメーカーは、研究開発への投資(費用・時間)が少なくてすむ、新薬メーカーのように1つの新薬で莫大な利益を得ることが困難である。

後発医薬品が発売される時期には、先発医薬品の発売から10年以上が経過しているため、十分な副作用情報が蓄積されている。万一、後発薬特有の副作用が出現した場合にも、先発医薬品と同様に、製造販売後における安全管理基準等を遵守し、副作用情報等の迅速かつ適正な収集・評価・提供を行っており、医薬品副作用被害救済制度の対象となる[17]

後発医薬品の名称

2005年(平成17年)9月厚生労働省発行の「医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について」[18]で通知されている。

  • 一般的名称(成分名、一般名)に剤型、含量、会社名(屋号等)を付す
  • 日本薬局方に収載されているものは、収載されている名称を一般的名称とする
    • 「塩」「エステル」「水和物」等の文言は、一般名から省略できる(ただし、他の製剤との混同を招かない場合に限る)
  • 剤型は日本薬局方製剤総則に収載された剤型を記載する
    • 液剤は、「外用」「内用」「うがい用」等を付記する
    • 経口投与されない錠剤等は、「外用」「膣用」「吸入用」等を付記し、用法を明確化する
  • 錠剤、カプセル剤等は、有効成分の含量を記載する
    • 軟膏剤、液剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、点眼剤などで、1回の投与で製剤の一部のみを使用する場合は、濃度を記載する
    • 注射剤は、濃度ではなく含量表示を原則とし、基本的には容器当たりの総量表示とする
  • 会社名(屋号等)は原則4文字以内で記載する
    • 漢字平仮名片仮名アルファベットが使用可
    • 括弧括り(「 」、( )、【 】等)を原則とする
    • 会社名(屋号)以外のアルファベットを付加する場合は、原則として2文字以内

後発医薬品の商品名変更編集

上記通知の発出前に承認されたものは「それまでのブランド名のままでよい」事とされてきたが、薬剤師が先発薬との名称類似による誤調剤を回避するため、2011年(平成23年)12月27日、日本ジェネリック製薬協会は会員各社に対し、2012年(平成24年)1月から、少なくとも毎年10%に相当する品目数を、3年間で一般名に切り替える様、変更を要請した[19][20]。具体的な変更例としては、

などがある[21]

2015年(平成27年)9月4日、厚生労働省は「医薬品産業強化総合戦略」を発表し、一般名に名称変更しない後発医薬品の独自ブランド品を、薬価基準から削除する(調剤報酬に載せない事により、市場から撤退させる)ことを決定し、実施された[22]

後発医薬品(配合剤)の統一名称編集

複数の有効成分を配合した医薬品、すなわち配合剤の場合、一般名と配合量で商品名を表示しようとすると煩雑になる。そのため、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会は統一ブランド名称を商標登録し、学会保有商標の使用を有償で許諾している[23]。商標の利用は薬価収載時点から起算して5年間有効とし、期間満了時には更新できる[24]。これは商品名乱立を避けるため学会が各メーカーからの要望を受けて決定しているものだが、メーカーに対する拘束力はない[25]
2019年2月までに発表された品目は以下の通りで、【 】で特記以外はすべて高血圧症治療薬である。販売名は、各統一ブランド名称の後ろに剤型と「会社名(屋号)」がつく。

  • 例:シムビコートタービュヘイラー30吸入の日本ジェネリックによるGE販売名は、ブデホル吸入粉末剤30吸入「JG」。
  • アイミクス配合錠(イルベサルタン・アムロジピンベシル酸塩)→「イルアミクス(ILUAMIX)」
  • エックスフォージ配合錠(バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩)→「アムバロ(AMVALO)」
  • カデュエット配合錠(アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物)→「アマルエット(AMALUET)」【高血圧症・高コレステロール血症治療薬】
  • エカード配合錠(カンデサルタン シレキセチル・ヒドロクロロチアジド)→「カデチア(CADETHIA)」
  • エプジコム配合錠(ラミブジン・アバカビル硫酸塩錠)→「ラバミコム(Labamicom)」【抗ウイルス化学療法剤(HIV)】
  • コディオ配合錠(バルサルタン・ヒドロクロロチアジド)→「バルヒディオ(VALHYDIO)」
  • コソプト配合点眼液(ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩液)→「ドルモロール(Dormolol)」【緑内障・高眼圧症治療剤】
  • コンプラビン配合錠(クロピドグレル硫酸塩・アスピリン錠)→「ロレアス(LoreAce)」【経費的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患】
  • ザラカム配合点眼液(ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩液)→「ラタチモ(Latachimo)」【緑内障・高眼圧症治療剤】
  • シムビコートタービュヘイラー(ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤)→「ブデホル(BudeForu) 」【ドライパウダー吸入式喘息・COPD治療配合剤】
  • スタレボ配合錠(レボドパ・カルビドパ水和物・エンタカポン)→「エカレボ(ECaLevo)」【抗パーキンソン剤】
  • ゾシン静注用(タゾバクタムナトリウム・ピペラシリンナトリウム)→「タゾピペ(TAZOPIPE)」【β-ラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬】
  • ツルバダ配合錠(エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩)→「エムテノ(EmTeno)」【抗ウイルス化学療法剤(HIV-1)】
  • ディレグラ配合錠(フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン)→「プソフェキ(PusoFeki)」【アレルギー性鼻炎】
  • デュオトラバ配合点眼液 (トラボプロスト・チモロールマレイン酸塩液)→「トラチモ(TraTimo)」【緑内障・高眼圧症治療剤】
  • トラムセット配合錠(トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン)→「トアラセット(TOARASET)」【慢性疼痛/抜歯後疼痛治療剤】
  • プレミネント配合錠(ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド)→「ロサルヒド(LOSARHYD)」
  • ミカムロ配合錠(テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩)→「テラムロ(TERAMURO)」
  • ミコンビ配合錠(テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド)→「テルチア(TELTHIA)」
  • ユニシア配合錠(カンデサルタン シレキセチル・アムロジピン)→「カムシア(CAMSHIA)」
  • ルナベル配合錠(ノルエチステロン・エチニルエストラジオール錠)→「フリウェル(FREWELL)」【月経困難症治療剤】
  • レザルタス配合錠(オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン)→「オルアゼ(OLAZE)」

統一ブランド名準備中先発医薬品名一覧も公開されている[26]

処方箋様式編集

 
処方箋。「後発医薬品への変更不可」欄がある

2006年4月より処方箋の様式が変更となり、医師が処方箋中の「後発医薬品への変更可」欄に署名(または記名押印)すれば、先発医薬品の商品名が書かれていても後発医薬品に変更して調剤することが可能となった。しかし、当該欄の利用頻度が伸びなかったため、2008年4月より、原則として後発医薬品に変更可とし、特に認められない場合に「後発医薬品への変更不可」欄に署名(または記名押印)する形式に再変更された[27]

また、2010年の診療報酬改定により、後発薬処方割合の高い調剤薬局は、その割合に応じて後発医薬品調剤体制加算(5〜19点)が算定可能となった[27][28]。さらに2012年の診療報酬改定により、処方箋に医師が一般名で薬剤処方を行うと一般名処方加算(2点)が算定できるようになり[29]、これを受けて、院外処方診療所のうち61%が一般名処方加算を行うまでに広がった[30]

現在では、処方箋を調剤薬局へ提出した際、変更不可でない場合で薬局に後発医薬品の在庫があれば、薬局の薬剤師が患者に対して後発医薬品に変更するかを尋ねるようになっている。しかし、後発品メーカーのうち、どのメーカーの製剤を選択するかを患者が指定できることは保証されていない(もちろん、複数のメーカーの在庫がある場合に、当該薬局の責任において患者に選択させることは可能である)。

一般名処方マスタ編集

2012年(平成24年)4月1日以降、後発医薬品が存在する医薬品について、一定のルールに従った「一般名処方」の処方せんを交付した場合に、医療機関は一般名処方加算(後の「一般名処方加算2」)を算定できることとなった。さらに、2016年(平成28年)4月1日以降は、後発医薬品のある全ての医薬品が一般名処方されている場合に「一般名処方加算1」を算定できることとなった。このルールが、厚生労働省によって定義される「処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)」で、半月から3か月に一度の頻度で更新されている[31]

  • 内用薬と外用薬
  • 【般】+「一般的名称」+「剤形」+「含量」
  • 一般的名称(成分名)が同一でも、剤形 and/or 含量が異なると、別の一般名コードが割り振られる。例えば、下記はすべて成分名が「耐性乳酸菌」の別のコードの医薬品で、先発医薬品はエンテロノン-R散のみで他はすべてGE。一般名処方マスタ - 医薬品名 - 一般名の順で、すべて一般名処方加算1の対象(2018年12月14日適用)。
  • 【般】耐性乳酸菌散10% - エンテロノン-R散、~「JG][* 3]、~「トーワ」[* 4] - 耐性乳酸菌製剤散(1)
  • 【般】耐性乳酸菌散0.6% - ビオフェルミンR散 - 耐性乳酸菌製剤散(2)
  • 【般】耐性乳酸菌錠6mg - ビオフェルミンR錠 - 耐性乳酸菌製剤散(2)
  • 【般】耐性乳酸菌散1% - ラックビーR散 - 耐性乳酸菌製剤散(3)
  • 【般】耐性乳酸菌散1.8% - レベニン散 - 耐性乳酸菌製剤散(4)
  • 【般】耐性乳酸菌錠18mg - レベニン錠 - 耐性乳酸菌製剤散(4)

かつて日本で後発医薬品が普及しなかった理由編集

先発医薬品との違い編集

後発医薬品と先発医薬品では、有効成分の含有量は同一である[32]。このことは生物学的同等性試験によって保証されているが、一方で、後発医薬品の副成分(添加物など)や剤形・製法は、先発医薬品とは異なる[33][34]。これは、物質特許の期限は切れていても製法特許や製造特許は切れていない、または、それらの期限が切れていても、製造工程の細部まで公開されない、といった事情があるからである。

同じ成分の先発医薬品と後発医薬品で効能・効果(適応症)が異なることがある[35]。これは、先発医薬品が有する用途特許が残っており、それが原因で同じ成分の後発医薬品がその効能・効果を謳えないことに起因する。

さらに、実際に使用した患者や医師からは、効果に違いがあるとの意見があり[36]、また、薬の添加物や剤形が変わることによって、例えば薬の溶け出す速度が変化したり、有効成分が分解されやすくなったり、溶解速度が若干遅くなっていたり[37]、副作用が出たりすることがある[38][39]。内服薬の飲みやすさ、外用剤のはがれやすさ、塗布薬や点眼薬の効き目にも、先発医薬品とは違いが生じるため、後発医薬品は「先発医薬品と同等製品」と謳っていても、決して「先発医薬品と同一製品」ではない[34][* 5]

なお同一成分ながら、患者の疾病に対する効能・効果を有していない後発医薬品を処方または調剤した場合、レセプト審査の際に「不適切な薬剤を投与した」として、医療機関の診療報酬調剤報酬が減点される。

態勢編集

2008年(平成20年)に行われた小規模な調査(医師600人、薬剤師400人)では、半数の医師が「後発品への変更不可」とした事があると答えた[40]。医師が「変更不可」とした薬剤で最も多かったのは抗癌剤、次いで降圧薬であった。一方、「変更可」の処方箋であっても、薬剤師が先発医薬品を選ぶものとして最も多かったのは、抗精神病薬向精神薬抗うつ薬、次いで抗癌剤となった。その一方で、「後発医薬品への変更不可」の指示は『オーダリングシステムによって誘導されている』との指摘もあり[41]、日本ジェネリック医薬品学会では、これを是正するための仕様書を公表した[42]

また生活保護の医療扶助においては、「被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努めるものとする生活保護法34条)」と定められている。2008年に厚生労働省は被保護者に後発医薬品を事実上強制する通知を地方公共団体に発出した(生活保護世帯は、医療費を自己負担なしの全額公費負担医療となっているため)。これは、従わなければ生活費の支給を停止するというもので、後に撤回することとなった[43]。2014年10月、財務省は生活保護受給者に後発医薬品を使用するよう求める方針を固め、厚生労働省との折衝を開始すると報道された[44]

主要後発医薬品メーカー編集

後発医薬品を販売している企業は 196 社(2017 年 4 月 6 日現在) であるが、国内売上高1000億円以上は沢井製薬、日医工の2社のみである(2017年度)。500億円以上では、東和、ニプロ、明治HD、三和化学研究所を加えて、6社のみとなる。なお、196社の中には、先発企業も後発医薬品を販売している事例もある。
「」は、成分名のあとにつけられる各メーカーの略称。

新薬メーカーも後発医薬品を主要事業のひとつとして位置付けており、たとえば第一三共はインドの製薬会社・ランバクシーを買収[46]して後発医薬品事業に新規参入し、2010年4月には日本国内での後発医薬品の子会社となる第一三共エスファを設立し、同年10月より営業を開始した。2016年4月には、武田薬品工業が長期収載品事業を会社分割により大正薬品工業(現在の武田テバ薬品)へ継承するかわりに、大正薬品工業の親会社であるテバ製薬の株式交付を武田薬品工業が受けたことでテバ製薬が合弁会社となり、同年10月に武田テバファーマに社名変更した。2014年1月1日には、ファイザー製薬が「エスタブリッシュ医薬品事業部門」を含む4部門編成となり、特許が切れた医薬品をエスタブリッシュ医薬品と呼んでいる[47]

世界編集

アメリカ合衆国では、民間の保険会社がジェネリック医薬品の使用を奨励している。さらに、医師が処方した薬を薬剤師の判断で後発医薬品に替えることができる「代替調剤」が、ほとんどの州で認められており、後発医薬品の市場占有率は非常に高くなっている。ただし日本とは違い、後発医薬品は「先発医薬品とは別の薬」という認識が、医療関係者に共有されている[34]

ドイツ連邦では、「参照価格制度」で後発医薬品の普及につながっている。また、医師が処方箋に「代替調剤不可」と記載しない限り代替調剤が可能である。そのため、薬剤師の判断や患者の希望によって、後発医薬品に変更しやすくなっている。

イギリスでは、期待される効果に対して薬価が高すぎると評価されると、国民健康保険(NHS)での使用が推奨されなくなり、実質的に使用できなくなる場合もある。また、商品名ではなく一般名(成分名)で処方を行う「一般名処方」が主流となっており、イギリスの後発医薬品の市場占有率は、ドイツに次いで高くなっている[48]

脚注編集

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  1. ^ 長生堂製造商品の販売が日本ジェネリック担当であり、日本ジェネリックの製造品にエチゾラムがなかったことから、CHではなく、JGがつけられている。
  2. ^ 長生堂製造商品の販売が日本ジェネリック担当だが、日本ジェネリックが他社に製造委託した商品にすでにトリアゾラム「JG」があったため、JGではなく、CHがつけられている。
  3. ^ 旧・エントモール散
  4. ^ 旧・コレポリーR 散 10%
  5. ^ この点について日本ジェネリック医薬品学会は、添加物や剤形の変更は先発医薬品でも行われていることから、ジェネリック医薬品に限らず先発医薬品でも同様に起こりうると反論している。しかしながら、その具体例は挙げられていない。
  6. ^ かつては「SND」を使用。
  7. ^ かつては「タツミ」を使用。
  8. ^ かつては「TYK」を使用(ただし、興和テバから継承した製品分)。
  9. ^ かつて、長生堂製薬に製造委託し、旧田辺製薬販売が販売していた薬品につけられた「タナベ」は、資本関係解消などに伴い、順次「CH」ないし「JG」に変更された。自社製造分は従来通り「タナベ」で、現在のニプロESファーマへの商号変更後も「タナベ」のままとなる。
  10. ^ 販売事業は、2013年4月以降は日本ジェネリックが担当している関係上、一部の商品は「JG」となっているものもある。

出典編集

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  1. ^ a b c d Health at a Glance 2013 (Report). OECD. (2013-11-21). pp. 104-105. doi:10.1787/health_glance-2013-en. ISBN 978-92-64-205024. 
  2. ^ a b c d e f g OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). OECD. (2009-08-13). pp. 115-116. doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561. 
  3. ^ 2018年8月の後発品割合は76.5%”. 2018年12月20日閲覧。
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参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集