バスマティ

インディカ米の品種

バスマティ(ときにバースマティー表記)(英語: Basmati, ヒンディー語: बासमती, ウルドゥー語: ﺑﺎﺳﻤﺘﻰ‎)は、イネの品種群である[1]インディカ米(長粒種)に属し、繊細で優れた芳香で有名な香り米である。バースマティーという名称は、「香りの女王」というヒンディー語に由来する。

バースマティー種の玄米

概要 編集

バースマティーは、現在のインドパキスタンに当たる地域で何百年にも亘って栽培されてきたイネの品種群である。様々な品種があり、ヒマラヤ山麓で生産されるものが最高の品質であるとされている。なかでも、パキスタンから北インドヒマラヤ山間部のデヘラードゥーン地方にかけて栽培されるスーパー・バースマティーと呼ばれる優良品種は、バスマティの中でも最も優れた品種である。パトナー米という品種はバースマティーと近縁であり、ビハール州パトナー近辺で栽培される。バースマティーから収穫された米で最も良いとされるのは、精米し販売されるまでに数年間の熟成期間を経たものとされる。米を長期保存するのは、一般に含有水分の少ない米の方が調理し易いとされるためである。

バースマティーの米粒は極めて細長く、調理工程においてさらに細長くなる。米粒はしっかりとしており、調理しても粘り気が出ない。バースマティーは、白米として、あるいは玄米としても利用され、この調理に要する時間はおよそ20分程度である。含まれている澱粉(でんぷん)の比率が他の品種に比べて多いため、一般に調理前に澱粉を洗い落とす。調理前に30分から2時間程度水につけておくと、米粒が砕けにくくなる。北インドでは、ビリヤニなど米を用いたご馳走料理にはバースマティーが特に喜ばれる。

 
バースマティーを用いたビリヤニ(左)

2000年、アメリカのライステック社(リヒテンシュタインに本拠を置く RiceTec AG の子会社)は、バースマティーと半矮性長粒品種から作り出されたハイブリッド3品種の特許を獲得しようとした。当時のインド政府がそれに反対したため、その特許は認可されなかった。一方、欧州委員会では、原産地保護名称法の下にバースマティーをその地域の特産物として保護することで合意に達した。

バースマティー品種群には、多数の品種が存在する。バースマティー370[1]やバースマティー385、バースマティー・ラーナービールプラ(Basmati-Ranabirpura)といった伝統的な品種以外に、プーサー・バースマティー 1(Pusa Basamti 1)というハイブリッド品種が存在する。この品種の花には芒(のぎ)があるため、トーダル(Todal)とも呼ばれる。芳香のある品種はバースマティー系統から作出されたものであるが、PB2(sugandh-2)やPB3、RH-10という品種は純粋なバースマティーの系統ではないとされている。

バースマティー本来の特徴として、茎が長く細く、強風で倒伏しやすい。総じて収量が低いが、米の品質が優れているため、インド国内だけでなく世界的にも高額で取り引きされる。

関連品種 編集

参考文献 編集

  • Alford, Jeffrey; Naomi Duguid (1998). Seductions of Rice. New York: Artisan. ISBN 1-57965-113-5 
  • 安東, 郁男、金田, 忠吉、横尾, 政雄、根本, 博、羽田, 丈夫、伊勢, 一男、池田, 良一、赤間, 芳洋 ほか「細長粒香り米品種「サリークイーン」の育成」『作物研究所研究報告』第5号、農業技術研究機構作物研究所、2004年、53-66頁、ISSN 13468480NAID 40006287319 

関連項目 編集

外部リンク 編集

脚注 編集

  1. ^ a b c 安東ら 2004, pp. 53–66.
  2. ^ イネ品種 データベース 検索システム  「 関東172号( プリンセスサリー ) 」 品種情報 ”. ineweb.narcc.affrc.go.jp. 2022年1月25日閲覧。
  3. ^ 水稲新品種‘プリンセスかおり’”. 鳥取県. 2019年7月4日閲覧。