マコモ
マコモ(Zizania latifolia、真菰)は、イネ科マコモ属の多年草。別名ハナガツミ。緑色の葉を何枚か剥ぎとっていくと、中から真っ白な可食部分が現れ、マコモダケと言う。
マコモ | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Zizania latifolia L. | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
マコモ(真菰)、ハナガツミ(花勝美) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Manchurian Wild Rice |
特徴編集
東アジアや東南アジアに分布しており、日本では全国に見られる。水辺に群生し、沼や河川、湖などに生育。成長すると大型になり、人の背くらいになる。花期は夏から秋で、雌花は黄緑色、雄花は紫色。葉脈は平行。
利用編集
種子(ワイルドライス)、肥大した新芽(マコモダケ)が食用とされる(後述)。また、マコモダケが黒く変じたものからは黒い顔料(マコモズミ)が得られ、お歯黒、眉墨、漆器の顔料などに用いられた。出雲大社では毎年6月に「マコモの神事」が行われる。「出雲の森」から、御手洗井までの道中に清い砂を敷き、その上にマコモが置かれ、宮司はその上を歩いて参進する。宮司が踏んだマコモは御神威が宿るとされ、参拝者は持ち帰って神棚に飾ったり、浴槽に入れたりする[1]。 また、出雲大社の神幸祭でもマコモを用いる。マコモを藁苞(わらづと)のように加工した苞(しぼ)という物を神職が手にして神幸を斎行する[2]。 健康法でマコモを用いるものが以前からあったが、疑似科学の範疇に入るものも散見される。
マコモダケ編集
中国東部から東南アジアに広く分布しているマコモの1系統のヒロハマコモで、黒穂菌(くろぼきん)の一種Ustilago esculentaに寄生されて肥大した新芽はマコモダケ(真菰筍、茭白。マコモタケとも[3])とよばれる食材である[4]。古くは『万葉集』に登場する。中国、台湾、ベトナム、タイ、ラオス、カンボジアなどのアジア各国でも食用や薬用とされる。台湾では「茭白」が標準的な呼び方であるが、中部の南投県埔里鎮周辺が特産地として名高く、色白の女性の足に見立てた「美人腿」(メイレントゥイ)の愛称で出荷されている。 香港を含む広東語使用地域では「茭筍」(カーウソン)と呼び、炒め物やスープの具などに用いることが多い。
たけのこを優しくしたような適度の食感と、ほのかな甘味、ヤングコーンのような香りがある。くせがなくあっさりした味で、さっと茹でたり、グリル焼き、肉や魚と合わせた炒めものにも向いているほか[3]、新鮮なものは生食してもおいしい。沖縄県では「まくむ」、鹿児島県奄美大島では「台湾だーな(竹)」と呼んで、炒め物のイリチー、奄美料理の「いっき」、油ぞうめんなどに使用する。中国では他にスープの具にもされ、台湾では麺類の具のひとつにも加えられることがある。細かく刻んで餃子、ハンバーグ、チャーハンなどに用いることもできる。
収穫は秋で、新芽の根元がじゅうぶんに肥大したらすぐに収穫する。収穫が遅れると、組織内に真っ黒な胞子が斑点状に混じるようになり、食感・食味も落ちて、商品価値は失われる。マコモズミはこの黒い胞子体を利用したもの。
三重県三重郡菰野町・石川県河北郡津幡町などでは町の特産品としてマコモの栽培に力を入れている[5]。
ワイルドライス編集
北米大陸の近縁種(Z. aquatica、アメリカマコモ)の種子は古くから穀物として食用とされており、今日もワイルドライス(Wild rice)の名で利用されている。
ワイルドライスの生育圏はオジブワ族やメノミニー族など、五大湖地方のアメリカ・インディアンの部族それぞれによって縄張りがあり、彼らの保留地(Reservation)で栽培されるワイルドライスは近年[いつ?]、スローフード運動の一環としても注目され[誰によって?]、商品化もされている。
このような事情から、マコモは野生植物から食用作物への過渡期の初期段階と見られる場合がある[誰によって?]。しかし、種子は乾燥2-3日で発芽しなくなるため、イネに割合近い植物でありながら、種子から栽培できる変異種の選別が行われなかったと考えられている[誰によって?]。従って、日本でマコモの栽培を行う場合は、種子からではなく親株から株を分けるという方法を採る。
なお、近年[いつ?]では米国(カリフォルニア州、ミネソタ州など)、カナダ、ハンガリー、オーストラリアなどでワイルドライスの商業栽培がすすめられている。
ワイルドライスは1977年にミネソタ州の州の穀物(state grain)に指定されている[6]。
侵入種編集
マコモは誤ってニュージーランドで繁殖し、侵略的外来種に指定されている[7]。ハワイに導入されている。茎をアメリカ合衆国に輸入することは、北米のマコモ属(ワイルドライス)を菌類から保護するために禁止されている。
脚注編集
- ^ 『幽顕1245号』平成28年7月1日出雲大社幽顕社発行
- ^ 『幽顕』出雲大社幽顕社平成28年9月1日発行4頁
- ^ a b 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 61.
- ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 98.
- ^ 水田を活用したマコモタケ栽培事例(石川県津幡町)
- ^ State Grain - Wild Rice, About Minnesota
- ^ NIWA: Stopping the freshwater wild rice invader
参考文献編集
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 小野寺広志『マコモ誕生の記』EYE企画、1985年
- 中村重正 『菌食の民俗誌 -マコモと黒穂菌の利用-』(八坂書房、2000年) ISBN 978-4-89694-453-2 URL
- 永田信治「不思議の国の「マコモ」」『まこも草子』100号、2010年3月
- 星川清親「食用作物」
- まこも草子編集部『まこも草子』マコモの会 会報誌、企画制作: デラフィック
関連項目編集
外部リンク編集
- 津幡まこも - 津幡町ホームページ(2009年4月29日時点のアーカイブ)
- 菰野の真菰 - 三重県菰野町発信まこもたけ情報
- 『菰』の本草学—陸游詩所詠菰草考序説 - 澁澤尚、『福島大学研究年報創刊号』2005
- マコモズミ(黒穂胞子 smut spores)による過敏性肺炎の一例 - 日本呼吸器学会『日呼吸会誌』 45(4),2007.
- 『マコモ』 - コトバンク