ヒクラゲ(火水母、火海月、学名 Morbakka virulenta )は、イルカンジクラゲ科に属するクラゲの一種。

ヒクラゲ
ヒクラゲ
分類
: 動物界 Animalia
: 刺胞動物門 Cnidaria
: 箱虫綱 Cubozoa
: アンドンクラゲ目 Carybdeida
: イルカンジクラゲ科 Carukiidae
: ヒクラゲ属 Morbakka
: ヒクラゲ M. virulenta
学名
Morbakka virulenta Müller1859
和名
ヒクラゲ

特徴 編集

主に瀬戸内海で、秋から冬にかけて見られる夜行性の大型の箱形クラゲ[1]。箱型の傘と、傘の四隅から1本ずつ伸びる淡い桃色をした4本の触手を持つ。立方クラゲ類の中では大型種であり、成熟すると傘高は大きなもので15-23cm、触手は最長で1m以上になる。傘高6~8cmの小型個体から性成熟が始まると推察される[2]

立方クラゲ類は、その多くがポリプ世代から直接クラゲ世代に変態するという特徴を持つが、本種はタコクラゲサカサクラゲなどの鉢クラゲ類と同様に、ポリプがまずストロビラ化し、そこからクラゲ世代へと変態する。

毒性 編集

強い刺胞毒を持ち、体長数cmの稚魚を充分に捕獲する能力を有している[3]。人間が刺されると火が付いたように傷むという[1]。実際には、付着した触手に沿った部分の皮膚が赤くなり、ぽつぽつと発疹が出る程度で、痛みやかゆみもなく、痕として長く残ることはなく、一週間くらいで症状は消えたという[4]。このことから、昔から言われているようなひどい症例には至らないと言えるが、刺された部位や体質差が関連する可能性がある[4]

脚注 編集

  1. ^ a b 久保田信「日本一のクラゲ天国田辺湾(36) ヒクラゲ」『紀伊民報』、紀伊民報社、2011年10月。 
  2. ^ 岡田昇馬,近藤裕介,平林丈嗣,橋本周一郎,戸篠祥,三宅裕志,足立文,浦田慎,大塚攻「瀬戸内海産大型立方クラゲ類ヒクラゲの出現と成長に関する知見 <論文>」『広島大学総合博物館研究報告』第6巻、広島大学総合博物館、2014年12月、1-5頁。 
  3. ^ 森喜信,久保田信,上野俊士郎「和歌山県みなべ町沿岸で小型魚類を捕食した稀少種ヒクラゲ(刺胞動物門, 箱虫綱, アンドンクラゲ科)」『南紀生物』第52巻第1号、南紀生物同好会、2010年6月、16-17頁。 
  4. ^ a b 久保田信,足立文「ヒクラゲの刺傷」『Kuroshio Biosphere』第9巻、黒潮生物研究財団、2013年3月、31-34頁。