ベンジルアルコール (benzyl alcohol) は、芳香族アルコール融点 −15.2 ℃、沸点 205.3 ℃ の無色の液体。弱い芳香と焼けるような味を持つ。フェニルメタノール(phenylmethanol) とも呼ばれる。香料、溶剤、合成原料等として用いられる[1]

ベンジルアルコール
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識別情報
CAS登録番号 100-51-6
E番号 E1519 (追加化合物)
KEGG D00077
特性
化学式 C6H5CH2OH
モル質量 108.14
示性式 C6H5CH2OH
外観 無色の液体
密度 1.05 g/cm3
相対蒸気密度 3.72
融点

−15.2

沸点

205.3

溶解度 g/100 mL ( ℃)
溶解度 g/100 mL ( ℃)
屈折率 (nD) 1.5396
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0833
関連する物質
関連物質 フェノール
フェネチルアルコール
出典
ICSC HSDB
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

性質と反応 編集

ベンゼン、エタノール、クロロホルム等の有機溶剤に自由に混和するが[2]、水溶性は低い (4 g/100 mL)[3]

空気中で徐々に酸化され、ベンズアルデヒド安息香酸に変化する[4]

酢酸安息香酸セバシン酸などの酸と反応することで、エステルなどの化合物を生成する。特にエステルの酢酸ベンジルは、ジャスミンイランイランの芳香成分として有名。

用途 編集

インク、塗料、ラッカーエポキシ樹脂塗膜などの溶剤として用いられる。石鹸香料に用いるさまざまなエステルの原料としても使用される。写真の現像のほか、化粧品類の着香料、保留剤及び抗菌効果を有することから防腐剤としても用いられている。

危険性 編集

消防法の第4類第三石油類危険物に該当する。

従来ベンジルアルコールは労働安全衛生法の規制外であったため、塗料剥離剤中の塩化メチレンの代替物質として多用された[5]。本物質には中枢神経系や腎臓への有害性及び麻酔作用があり、換気の悪い環境下での中毒による労働災害が多発し、それを遠因とする死亡事故も発生した[6]。これを受けて労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生規則が改正され、2021年1月1日より、GHSラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントが義務化された[7]

製法 編集

実験的には、ベンズアルデヒド (C6H5CHO) を触媒下で水素化したり、還元剤を使って還元したりすると得られる。

また、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の存在下、塩化ベンジル (C6H5CH2Cl) を加水分解することで製造できる。

脚注 編集

  1. ^ 『産業衛生学雑誌』 61巻、日本産業衛生学会、2019年、221頁。 
  2. ^ PubChem. “Hazardous Substances Data Bank (HSDB) : 46” (英語). pubchem.ncbi.nlm.nih.gov. 2022年2月2日閲覧。
  3. ^ ICSC 0833 - BENZYL ALCOHOL”. www.ilo.org. 2022年2月2日閲覧。
  4. ^ PubChem. “Hazardous Substances Data Bank (HSDB) : 46” (英語). pubchem.ncbi.nlm.nih.gov. 2022年2月2日閲覧。
  5. ^ 化学物質の環境リスク評価 第11巻-16 ベンジルアルコール”. 環境省. 2022年6月17日閲覧。
  6. ^ 剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について”. 厚生労働省. 2022年6月17日閲覧。
  7. ^ 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案及び 労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要”. 2022年2月2日閲覧。