ポリシー・ロンダリング

ポリシーロンダリング: policy laundering)とは政治的決定や立法条約制定の当事者を隠蔽し[1]、そのプロセスを不透明化する行為のことで、マネーロンダリングから派生した用語である。国内で規制を行うために前もって国際条約を締結しておき、それに基づいて国内法を整備する手法は、典型的なポリシーロンダリングであるとされる。責任の所在を曖昧にする、本来の目的を隠蔽する、あるいは立法の手続きを迂回するために行われる。

国際的な商業活動規制に関するレビューでBraithwaiteやDrahosが指摘するように、いくつかの国家は(特に米国や英国は)国際機関で規制を推進しておいて、国際協調や多文化主義といった見せかけの下にその規制を自国に持ち帰る。これをポリシーロンダリングと呼ぶ。 — Ian Hosein, 2004[2]

ポリシーロンダリングの実際編集

非公開で策定された国際条約はポリシー・ロンダリングによく利用される。いったん条約が策定されてしまえば、どの部分を誰が追加したか部外者には分かりにくいためである。全ての当事者が条約のどの部分に関しても、妥協の結果として追加に同意したが本意ではなかったと主張できるため、責任の所在が曖昧になる。WTO条約、WIPO設立条約[3][4]ACTA[5]TPPといった貿易協定、あるいは欧州憲法は、こういったタイプのポリシーロンダリングにより成立したと批判されることもある。

ACTAはどの議会でも通過できないような、国際的立法ロンダリングの産物である。 — Stavros Lambrinidis, 欧州議会副議長[6]

通常の手続きでは承認が得られない法律を立法者が望む場合に、ポリシー・ロンダリングが行われることもある。このタイプのポリシーロンダリングの例として、ミズーリ対ホランド事件(en:Missouri v. Holland)でその是非が争われた狩猟規制を挙げることができる。事件の発端は、州法によって渡り鳥の狩猟を規制しようとした連邦議会に、ミズーリ州州裁判所違憲判決を出したことである。これに対して連邦議会は、カナダと交渉して渡り鳥保護のための条約を批准し、その条約に基づいて渡り鳥保護条約に関する法律(en:Migratory Bird Treaty Act of 1918)を通過させた。最終的に、連邦最高裁判所はこの狩猟規制は合憲であるという判断を示した。

公には主張されない真の目的の存在も、ポリシー・ロンダリングの兆候といえる。政治家はしばしばポリシーロンダリングにより、国民から支持を得にくい真の目的を隠蔽する。世間の関心事ではあるが本質的には無関係な問題と政策が結び付けられ、真の目的ではなくその問題への対策として政策が語られる。

脚注編集

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  1. ^ Hosein, Ian (2004). “The Sources of Laws: Policy Dynamics in a Digital and Terrorized World”. The Information Society (Taylor & Francis) 20 (3): 187-199. doi:10.1080/01972240490456854. http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01972240490456854 2014年10月16日閲覧。. 
  2. ^ Hosein, Ian, 2004, "International Relations Theories and the Regulation of International Dataflows: Policy Laundering and other International Policy Dynamics"
  3. ^ Herman, Bill D. & Oscar H. Gandy, Jr. (2008年). “Catch 1201: A Legislative History and Content Analysis of the DMCA Exemption Proceedings”. Cardozo Arts & Entertainment Law Journal. 2014年12月31日閲覧。
  4. ^ Yu, Peter K., The Political Economy of Data Protection, Chicago-Kent Law Review, Vol. 83, 2008
  5. ^ Geist, Michael. “Government Should Lift Veil on ACTA Secrecy”. 2014年12月31日閲覧。
  6. ^ Stavros Lambrinidis, Vice President of European Parliament (2009), S and D, Greece, "Stop Acta"

関連項目編集