ヤンバルナスビ Solanum erianthum は、樹木になるナス科の植物。沖縄に自生があり、葉や若枝は毛が多くて灰緑色をしている。

ヤンバルナスビ
SSolanum erianthum
ヤンバルナスビ
分類APG III
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
亜科 : Solanoideae
: ナス属 Solanum
: ヤンバルナスビ S. erianthum
学名
Solanum erianthum D. Don
和名
ヤンバルナスビ
樹木の全景(沖縄)

特徴 編集

常緑性小高木[1]。樹高は2-4mになる。若枝との表裏全て、星状毛に覆われて灰白色をしている。葉は卵形で長さ8-22cm、幅4.5-12cmに達する。全縁で先端は尖る。葉の基部は丸くなり、やはり星状毛を密生した2-7cmの葉柄がある。

はほぼ1年中見られる。枝先に散房状の集散花序を付ける。花序はほぼ茎の先端に出て、何度も三叉分枝を繰り返し、少し混み合って花を付ける[2]。萼は鐘形で長さ約5mm、星状毛が密生しており灰白色に見え、1/3まで5裂し、裂片は卵形、先端は少し尖る。花冠は白く、皿形で径1.3cm、中程まで5裂している。裂片は広卵形で先端は尖っており、外面には星状毛が密生している。液果は球形で径約1cm、熟すと黄褐色になる。種子は扁平で広楕円形、長さ約1.5cm。種子にソラニンを含むため、果実は食べられない。

分布と生育環境 編集

日本では奄美大島以南の琉球列島に見られる。国外では台湾中国東南アジアインドオーストラリア、熱帯アメリカまで分布する[3]

沖縄では石灰岩地域によく見られる[4]

類似種など 編集

葉など全面に星状毛があって白っぽく見えるのが独特で、混同しそうなものは他にない。

ナス科の植物は草本が多く、低木になるものもあるが、高木になるものは少ない。その点、本種はさほど背が高くはならないものの、立派な樹木の形になるもので、日本在来のものでは唯一と言っていい。

利害 編集

日本では特に何も言われていない。天野鉄夫の『琉球列島有用樹木誌』にも名前がない。

しかしナス科の植物には成分に特殊なものを含むものが多く、薬用や毒などに使われる例が多々ある。本種については、メキシコで伝統的に薬用とされたという[5]。またその成分についての研究も行われてはいる。他に、誤食して中毒症状を示した例なども報告されている。

出典 編集

  1. ^ 以下、記載は主として佐竹他(1989),p.217
  2. ^ 初島(1975),p.538
  3. ^ 佐竹他(1989),p.217
  4. ^ 池原(1979)p.140
  5. ^ Maiti et al.(2002)

参考文献 編集

  • 佐竹義輔・他(編著) 『日本の野生植物 木本II』新装版、(1999)、平凡社
  • 初島住彦 『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究会
  • 池原直樹、『沖縄植物野外活用図鑑 第5巻 低地の植物』、(1979)、新星図書
  • R. K. Maiti et al. 2002. Some aspects on Pharmacognosy of ten species of the Family Solanuceae utilized in traditional medicine. Caldasia 24(2) :p.317-321.