レーシック手術集団感染事件

日本の医療機関による事件

レーシック手術集団感染事件(レーシックしゅじゅつ しゅうだんかんせんじけん)は、レーシック手術で患者7人に感染症を発症させたとして、医師が罪に問われて起訴された日本の事件である。銀座眼科事件[1]とも称される。

手袋をせずに行われるレーシック手術。本件の判決では医師が手袋をしていなかったことを「眼科医師であれば当然に行うべき最も基本的な注意義務を怠った」ものと認定した。画像は本件の起こった施設ではない。

概要 編集

この事件は2008年9月から2009年2月にかけて、東京都中央区にある「銀座眼科」でレーシック手術を受けた患者のうち、かなりの高い割合で感染性角膜炎などを発症したこと。その中には入院した被害者も2人いた。

同院では破格の安値でレーシック手術を行っていたが、同院の院長は、経済的利益と施術数を増やしたいなどの理由から、時間がかかる洗浄や滅菌などの衛生管理を怠り、使い捨ての器具も使い回すようになり、さらには手術前の手洗いさえも怠り、手袋を装着せずに手術をしていた[2]

2009年2月に中央区保健所の立ち入り調査で集団感染が発覚し、2010年12月7日、警視庁は元院長を業務上過失傷害の容疑で逮捕した[3]。その後、5人に不正乱視など後遺症が出る細菌性角膜炎を発症させたとして起訴した[4]

裁判 編集

被害者らによって集団訴訟が起こされ、原告(=被害者)の弁護士らの思慮によって被害者参加制度が利用され、そのおかげもあって被告への実刑の言い渡しにつながった[1]

2011年9月28日、東京地裁禁錮2年(求刑禁錮3年)の判決。判決で近藤宏子裁判官は「被告が多額の負債を抱えていて手術の際に刃の交換や手袋の装着、器具の丁寧な洗浄を行わずに経済的利益を優先させた。」と指摘。発症者が出た後も対策を講じず、約3カ月半にわたり被害を拡大させたと指摘した[2]。元院長は控訴したが2012年3月9日に東京高裁は控訴を棄却し、禁錮2年の実刑が確定した[2]

被害者のうち54人が計4億円以上の損害賠償を求め、東京地裁に提訴したが、2012年7月20日付けで和解が成立した。和解内容は、訴訟外で交渉していた元患者6人を含む60人に対し、元院長側が計約2億6千万円を支払う内容[5]

施設の事件後の状態 編集

銀座眼科の施設は、現在は閉鎖されている。愛媛県今治市に同名の眼科があるが無関係である。

脚注 編集

  1. ^ a b 弁護士 東晃一「銀座眼科事件刑事裁判に被害者参加して」
  2. ^ a b c “レーシック手術集団感染事件で銀座眼科医師に実刑判決 - 法と経済のジャーナル”. Asahi Judiciary. (2013年9月19日). https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2713091600003.html 
  3. ^ “レーシック集団感染、元院長を逮捕 業務上過失傷害容疑”. 日本経済新聞. (2010年12月7日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0701E_X01C10A2CC0000/ 2022年10月8日閲覧。 
  4. ^ “レーシック集団感染、元院長を業過傷害罪で起訴”. 日本経済新聞. (2010年12月27日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2704G_X21C10A2CC1000/ 2022年10月8日閲覧。 
  5. ^ “レーシック手術感染症訴訟 元院長側と元患者らが和解”. 日本経済新聞. (2012年7月20日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG20039_Q2A720C1CR8000/ 

関連項目 編集