ワルサーP1(Walther P1)は、ドイツ連邦共和国(西ドイツ統一ドイツ)で製造されていた自動式拳銃である。

ワルサーP1
ワルサーP1
概要
種類 軍用自動拳銃
製造国 西ドイツの旗 西ドイツ
設計・製造 カール・ワルサー
性能
口径 9mm
銃身長 125mm
ライフリング 6条右回り
使用弾薬 9x19mmパラベラム弾
装弾数 8発
作動方式 ダブルアクション
プロップアップ式ショートリコイル
全長 216mm
重量 945g
銃口初速 350m/s
有効射程 50m
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概要 編集

1956年、ドイツ連邦軍(西ドイツ軍)は大量に接収されていたナチス・ドイツ時代の制式拳銃ワルサーP38を制式拳銃として採用した。当時の連邦軍内に多かった旧国防軍出身者からの支持もあった為、採用にあたっての入札などは行われなかった。1957年からは一部改良を加えたものが新規に調達され始める。1963年10月まで、連邦軍における制式名には旧国防軍時代の「P38」がそのまま使われ、刻印も「P.38」のままだった。制式名の変更後は「P.1」に刻印が改められ、さらに軍用生産型を「P1」、民生用生産型を「P38」と呼び分けるようになる。

2004年、生産が完全に終了する。ウルムの工場から最後に出荷されたP38/P1の製造番号は473201で、この銃はカール・ワルサー社の産業博物館(Firmenmuseum)に保管されている。

運用 編集

1956年の採用以降、P1は長らく連邦軍の標準拳銃として使用されてきた。1990年代に入ってからP8H&K USPの派生型。9x19mm弾仕様)に更新されたものの、いくつかの部隊では依然としてP1が配備されており、新兵の訓練でもP1が使用される事がある。また憲兵隊ドイツ語版(Feldjäger)や衛兵大隊ドイツ語版(Wachbataillon)の隊員は、儀礼用制服の一部としてP1を装備している。特殊作戦用に消音器を装着したモデルも少数生産された。

構造 編集

 
分解されたP1

P1はグリップ部、ボルト部、銃身、弾倉の主要な構造に分解することができる。これらの大部分はP38とほぼ同型だが、ナチス・ドイツ時代に製造された旧軍向け調達分のP38と1957年以降に新規製造された連邦軍向け調達分のP38/P1を比較すると細部に違いが見られた。その後も刻印の改定や部品の強化、材料の変更など、1990年代に第一線を退くまで各種の改良が加えられていった。この他、生産工場によっても微妙な違いがあるとされる。

  • グリップフレーム素材は、P38のスチールからアルミニウム系の軽量合金に変更された。そのため重量が約160g軽くなっている。表面には黒色の保護処理が施されている。
  • 閉鎖機構は、P38と同一のものだった。
  • 銃身には、6条右回りのライフリングが施されていた。
  • ファイアリングピンの断面は、P38の角型から丸型に変更された。
  • 弾倉は、P38と同様の着脱式箱型弾倉である。9x19mmパラベラム弾を8発装填できる。
  • グリップパネル素材は、P38の木・ベークライトあるいは鉄板から、ABS樹脂に変更された。

参考文献 編集

  • P.38 & P1. Die Pistolenfamilie. Visier Special, Bad Ems 2013
  • Dieter H. Marschall, Ende einer Dienstzeit. Die Walther P38 geht nach 64 Dienstjahren "in Pension", in: Deutsches Waffenjournal 3/2005, S.66-71
  • Siegfried Schwarz, Eine Nachkriegskarriere. Die P1, in: Visier 9/2002, S.24-34
  • Dieter H. Marschall, Dauerläufer. Die Walther-Pistolen P38 und P1 der Bundeswehr, in: Deutsches Waffenjournal 9/2000, S.20-28

外部リンク 編集