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五行の構え(ごぎょうのかまえ)または五方の構え五つの構えとは、剣術薙刀で用いる五つの構え方である。現在は剣道、特に日本剣道形において使用される。武士が実際に真剣を用いて戦闘を行っていた時代の名残であるが、現行の剣道の試合で使う意味のない構えは形骸化してしまっている。

目次

中段の構え編集

 
中段の構え

剣先を相手の目に向けて構えるもので、正眼の構え人の構え水の構えとも呼ぶ。この構えからは、他の全ての構えにスムーズに移行することができる。つまり、攻撃するにせよ防御するにせよ、この構えを基点とすることで戦闘中に発生する様々な状況の変化に対して咄嗟に対応できる。攻防共に隙が少ないことから、現代では剣道の基本として教えられる構えである。

上段の構え編集

 
上段の構え

刀を頭上に振り上げる構えで、前にある足によって左上段右上段に分けられる。稀に片手上段や持ち手を逆にした(右手が柄頭、左手が鍔側)上段もある。現在の剣道では中段の次に多く見られる構え方である。天の構え火の構えともいう。

この構えを取っている場合、対戦相手を斬る為に必要な動作は、極論すればその体勢から剣を振り下ろす事だけであり、斬り下ろす攻撃に限れば凡そ全ての構えの中で最速の行動が可能である。また、刀剣を用いた攻撃において、最もそのリーチを生かす事の出来る構えの一つでもある。更に、基本的に打突は片手で打つため威力が増すなど、非常に攻撃的な構えである。反面、構えている間は面以外の部分を曝け出している状態であり、防御には向いていない。また1対1ならば有効であっても相手が複数ならば左右の肘が死角となりつかえない。

格上の相手に対して構えると失礼にあたるとされる。高野佐三郎は17歳の頃、片手上段に構えたことで対戦相手の岡田定五郎(30歳)の怒りを買い、袴を血に染め昏倒するまで突かれた。また、中山博道は晩年、「先輩に対する上段は無礼の極みである」、「名人達人にして初めて把握し得る構えで、これは道具に慣れて3、40年位の者がとるべき構えではない」とまで極言している[1]

なお、中段の構えの者が上段を相手にする際は、剣先を上げて右にずらし、左小手に合わせる構えが基本とされる(平正眼の構え

下段の構え編集

刀の剣先を水平より少し下げた構え方で、上段に対し防御の構えと言われるが、機敏に動けない為に攻撃には向かない。相手に対応する為、間合いを極端に大きく取る事がある。近年は見る機会が少ないが、中段や上段の次に使われる構えである。地の構え土の構えともいう。

八相の構え編集

 
八相の構え

刀を立てて右手側に寄せ、左足を前に出して構える、野球のバッティングフォームに似た構え方。この構えを正面から見ると前腕が漢数字の「八」の字に配置されていることから名付けられており、刀をただ手に持つ上で必要以上の余計な力をなるべく消耗しないように工夫されている。相手との単純な剣による攻防では実用性が多少犠牲になっており、例外的に相手の左肩口から右脇腹へと斜めに振り下ろす『袈裟懸け』や相手の鞘を差している側の胴体を狙った『逆胴』は仕掛けやすいものの、これらの技は現代の競技剣道において有効打突とはならない(あるいは非常に判定が厳しい)ことが多い。長時間に渡って真剣(場合によっては野戦用の大型な刀槍)を手に持ち続けなければならない状況のために、自然発生したと思わしき構えである。八双の構えとも書き、陰の構え木の構えともいう。上段が変形した構えと考えられており、立て物(飾り)があるを着用している際に刀を大きく振りかぶるのが難しい場合の構えである。

真剣を用いた一対多数、乱戦、野外や市街地など障害物の多い場所での戦闘において、武具を装備した状態で真剣を抜刀したまま全力で戦場を動き回る必要がある状況では役立つであろう構えである。いつ終わるとも知れぬ戦闘では余計な体力を使えないし、そもそも単純に重い武器を何時間も構え続けるのは難しい。また、乱戦においては仲間の位置との兼ね合いで、他の構えを取るスペースが無い場合も大いにあり得る。

具足を着用している時にこそ有効な構えとも言える。写真の様に刀を構えたら左肩の装甲が正面に来て、心臓と喉元が隠れるためである。

現代の剣道における試合競技は一対一で時間制限があり、あらかじめ決められた規格に従った道具を両者が用い、障害物がなく範囲が定められたフィールド上で戦う事を要求される。さらに有効打とされる箇所が限られているため、八相が実際に主力の構えとして使われることは稀であり、基本的には日本剣道形でしか見ることが出来ない。

脇構え編集

 
脇構え

右足を引き体を右斜めに向け刀を右に取り、剣先を後ろに下げた構え方。相手から見て自身の急所が集まる正中線を正面から外し、こちらの刀身の長さを正確に視認できないように構える。陽の構え金の構えともいう。左半身は無防備になり敵の攻撃を誘いやすく、相手の視線や意識から遠い下段や横から攻撃を仕掛けられるので相手の胴・籠手・下半身への迎撃には有効な構えとなる。

現代の剣道では竹刀の長さが規格で決まっているので情報戦の意味が薄く、有効となる打突部位が厳格に定められているため、試合で脇構えが使われることは皆無に等しい。

脚注編集

  1. ^ 堂本昭彦『新装版 中山博道剣道口述集』166頁、スキージャーナル

参考文献編集

関連項目編集