公益(こうえき、: public interest)とは、社会一般のためになる、公共利益対義語は私益[1]

概要 編集

公益は、社会全般の利益、更にはそういう形態の利益が出る性質の事柄を指す。こういう形態の利益には、その社会に属する各々(個人大衆)が益するものもあれば、社会全体の機能向上に繋がるもの、あるいは社会の規模拡大に寄与するものが挙げられる。

こういった公益を求める事業(公益事業)は社会全体を俯瞰した上で、何が必要であるかを見極め、それを成す必要性があるため、一般には政府など地域の政治に属する団体が推進するものが多いが、その一方で社会に属する個人が自発的に必要性を見出し行なう場合もあり、そのような行為をするものを指して篤志家(とくしか:→フィランソロピー参照)などという。

社会には様々な構成単位があり、最小では家族のようなものから、所定の方向性を持つコミュニティないし収益を目的とする企業内部、地域に属する社会、或いは国家世界といった極大なものまで様々な区分が存在するが、どの程度の社会組織以上に利益が出ることを公益と呼びうるかを線引きして定義することは難しい。しかし一般に公益とする場合には、思想や信条といったものに係わり無く、全般的に利益が発生することが公益であり、所定の個人や集団が持つ価値観に縛られない部分が強い。

しばしば公益は「どのようなことを成せば社会全体に益するか」という面で確実な方法論が見出しにくく、いわゆる公共事業でも良い結果が出ないことも少なくない。悪くすると公共に益するために税金などの形で集められ用意された財産を私物化した側が、私益に走ることもそう珍しいことではない。しかしそういう公益のための財物を私物化する行為は信頼を裏切ることでもあるため、公益を損なって私益に走る行為は背任批判を受けることともなる。

法人における公益 編集

法人の設立、認証税法上の扱いにおいて「公益」という概念が用いられる。具体的には関係法令によるが、日本の法令における扱いについて述べる。

民法における公益法人など 編集

2008年11月までは民法34条において公益法人(具体的には社団法人ないし財団法人)が存在した。公益法人は「学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益」に関するものとされ、設立には主務官庁の許可が必要であった。課題としては、特定のコミュニティに関する「共益」、すなわち同窓会、自治会や団地の管理組合などの非営利活動に関する法人がなかったこと、それにもかかわらず一部の同窓会が公益法人の認可を得たことがあった。これに対して、2001年に中間法人法が制定され中間法人が共益を受け持つ法人となった。2008年の公益法人制度改革3法の完全施行により、中間法人法は廃止され、中間法人は一般社団法人に統合された。

NPO法人 編集

1998年に施行された特定非営利活動促進法により設立される特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)は、特定の公益的・非営利活動を行うことを目的としている。その具体的な内容については、特定非営利活動促進法#法における定義を参照のこと。宗教法人と同じく特別法公益法人であり、主務官庁による許可主義の1形態である認証により設立され、所轄庁の監督を受ける。

公益法人認定法による法人 編集

2008年12月から運用が始まった、略称「公益法人認定法」および略称「一般社団・財団法人法」は、主務官庁制を廃止して民法上の公益法人をなくし(従来の公益法人に対しては移行処置あり)、一般社団法人および一般財団法人登記で設立させる。中間法人もここに移行させる。その上で、公益社団法人および公益財団法人認定するものである(特別法公益法人については、主務官庁制は存続)。

法人税法における公益法人等 編集

法人税法においては、第2条で公益法人等という区分を設け、課税対象を収益事業などに限るとして、営利法人より納税義務が軽減される。この区分に入るのは、改正前民法における公益法人、新法における非営利型法人に該当する一般社団法人および一般財団法人のほか、宗教法人社会福祉法人学校法人などがある。法人税法の別表第2で規程される。詳しくは、公益法人等#法人税法 別表第2の法人を参照。なお、法人税法では別途公共法人として地方公共団体独立行政法人などがあげられ、これらは納税義務がない。

出典 編集

  1. ^ 小項目事典,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),精選版 日本国語大辞典,世界大百科事典 第2版,デジタル大辞泉,ブリタニカ国際大百科事典. “公益とは”. コトバンク. 2021年7月28日閲覧。

関連項目 編集