初鷹型急設網艦(はつたかがたきゅうせつもうかん)は、日本海軍敷設艦[2](急設網艦[17])。同型艦3隻[18]

初鷹型急設網艦
竣工直後の「初鷹」[1]
竣工直後の「初鷹」[1]
基本情報
種別 敷設艦[2](急設網艦)
建造所 播磨造船所[3]
運用者  大日本帝国海軍
要目 (初鷹の計画)
基準排水量 公表値 1,600英トン[4]
公試排水量 1,890.00トン(防潜網搭載時[5])[6]
1,743.00トン(機雷搭載時)[5]
満載排水量 2,046.50トン(防潜網搭載時[5])[6]
1,899.50トン(機雷搭載時)[5]
全長 91.00m[6]
水線長 86.50m[6]
垂線間長 82.00m[6]
最大幅 11.60m[6]
水線幅 11.30m[6][注釈 1]
深さ 7.09m[6]
吃水 公試平均 4.00m[6]
満載平均 4.23m[6]
ボイラー ロ号艦本式混焼缶 3基[7]
主機 艦本式タービン(高低圧[8]) 2基[7]
推進器 2軸 x 350rpm[7]
推進器直径2.250m[7]、ピッチ2.260m[9]
出力 6,000馬力[6][7]
速力 20ノット[6]
航続距離 3,000カイリ / 14ノット[6]
燃料 計画:石炭263.00トン、重油124.00トン[6]
または石炭265トン、重油116トン[10]
または石炭206トン、重油53トン[11]
乗員 計画乗員 199名[12]
兵装 毘式40mm連装機銃2基4挺[14]
九四式投射機1基、三型装填台1基[15]
水圧三型投下台2基、手動投下台8基[15]
九五式爆雷36個[15][注釈 2]
二号二型防雷具2基[15]
九六式二型防潜網24組[15](6カイリ分[10])
もしくは九三式一型機雷(または5号機雷[8]) 100個[15]
搭載艇 7.5m内火艇2隻、7mカッター2隻、6m通船1隻[13]
ソナー 九三式一型水中聴音機1組[16]
九三式一型探信儀1組[16]
若鷹」の要目はその頁を参照
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急設網艦[19][20]は、防潜網の急速展開を主任務にする[21]いわゆる防潜網敷設艦(net leyer[19][22])に当たる。機雷の敷設も考慮されており[23]、日本海軍の艦艇類別等級では(機雷)敷設艦(mine layer)と合わせて敷設艦とする[24]。 このため法令上本型は敷設艦となる[2]

概要

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第一次世界大戦後、各国の海軍は急速に発展した潜水艦に対処するために対潜装備の充実に力を入れた[25]。この時、艦隊の停泊する泊地を侵入しようとする潜水艦から守るために防潜網が開発され、それを敷設するための艦として日本海軍は世界初の防潜網設網艦(net layer)である急設網艦白鷹燕型敷設艇を建造した[25][26]。なお、日本海軍の場合は艦隊の前進基地等に短時間での防潜網敷設が要望された[26]。 その後、急設網艦は長らく建造されていなかったが[17]、昭和12年度海軍補充計画(③計画[27]により、急設網艦2隻(初鷹、蒼鷹)を建造した[28]。これが本型である。その後、昭和14年度海軍軍備充実計画(④計画[29]でもう1隻(若鷹)が建造されたが[30]、細部が異なる[31]

本型は本来の防潜網敷設任務以外にも機雷敷設や対潜攻撃などの能力を持っており、小型軽快な艦であることから、太平洋戦争では対潜哨戒や船団護衛にも活躍[26]、2隻を喪失した[10]

艦型

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計画番号H12[6]。基本的には「白鷹」の設計を改良、近代化した艦型になる[17]

船首楼はシアがほとんど無く、艦尾の上甲板が後方に大きく張り出しており、敷設艦艇に特徴的な船体を持つ[10]。一度に敷設できる防潜網をなるべく長くするために、船首楼は艦橋の直前で終わっていた[10]。なお艦首に大型ローラーを備えるため[32]菊花紋章は左右舷に1個ずつ(計2個)が取り付けられていた[10]

防潜網は「白鷹」と同じ[33]24組(6カイリ分[10])を搭載する[15]。防潜網の代わりに九三式1号機雷100個の搭載も可能[15]。敵前での夜間敷設を考慮して、灯火管制中でも敷設準備が出来るよう設備を整えた[34]

主機はタービン(白鷹はレシプロ[35])を搭載し、速力(白鷹16ノットから本型20ノット[36])や航続力(同2,000カイリ/10ノットから3,000カイリ/14ノット[36])が改善された[10]。当時の海軍の方針により、本型の燃料は重油と石炭の併用となった[17]

砲熕兵装については③計画で建造された2隻には砲ではなく40mm連装機銃2基が装備され、対空と対潜の両方に使用できるよう考えられた[17]。実際には潜水艦に対する貫徹能力が不十分であり、「若鷹」は8cm単装高角砲2基に改められた[10]

「白鷹」では復元性能改善工事後も、艦の大きさに対し重心位置が非常に高かった[34]。この艦種では防潜網を網庫から上甲板に上げた時(敷設時)に重心位置が更に高くなる[34]。本型ではこの状態も考慮して網庫を艦内の低くない位置に配置し、防潜網が網庫から上甲板に移動した場合でも重心位置が大きく変化しないように配慮した[34]

若鷹

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③計画で建造された「初鷹」「蒼鷹」[28]の計画番号がH12に対し[6]、④計画で建造された「若鷹」[30]のそれはH12Bになり[6]、若干の改正が施されている[31]。上記のように砲熕兵装は8cm高角砲を搭載[14]、対空威力の低下を補うために[10]13mm連装機銃を煙突直後の機銃台に左右1基ずつ装備した[32]。また船体については船首楼が艦橋後半部まで延長された[31]

水雷兵装については「一般計画要領書」によると機雷の搭載は考慮されておらず、代わりに掃海装備1式を搭載した[15]

若鷹改型

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5039号艦型
基本情報
種別 急設網艦
同型艦 1隻
要目
基準排水量 1,608英トン
公試排水量 1,890トン
水線長 86.5m
水線幅 11.3m
深さ 7.09m
吃水 4.00m
主機 タービン
推進器 2軸
出力 6,000馬力
速力 20.0ノット
航続距離 3,000カイリ / 14ノット
燃料 石炭:263.0トン、重油124.0トン
兵装 8cm連装高角砲1基
13mm連装機銃2基
爆雷36個
機雷100個
「新艦船主要要目一覧表」による[37]
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改⑤計画で若鷹改型急設網艦1隻の建造が計画された[38]。計画番号H12C[37]。仮称「第5039号艦」[37]、予定艦名「朝鳥」は1947年(昭和22年)末に播磨造船所で竣工予定だったが、着工前に中止となった[38]。主要要目は右表の通り。

同型艦

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脚注

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注釈

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  1. ^ #昭和造船史1pp.764-795、艦艇要目表では最大幅を11.30mとしている。
  2. ^ #日本海軍特務艦船史(1997)p.72によると爆雷投下台4基、爆雷18個

出典

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  1. ^ a b #写真日本の軍艦第14巻p.64上写真
  2. ^ a b c #S15.6.25内令提要原稿/第13類 艦船画像3、艦艇類別等級表
  3. ^ #昭和14年達/1月画像41、昭和14年1月20日達第20号、初鷹命名。#昭和14年達/12月画像36、昭和14年12月23日達第263号、蒼鷹命名。#S16.1-6達/5月(1)画像48-49、昭和16年5月15日達第156号、若鷹命名。
  4. ^ #S14.12.25内令提要原稿/機密保護画像2、艦船要目公表範囲
  5. ^ a b c d #一般計画要領書(敷設艦)p.27
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q #一般計画要領書(敷設艦)p.3、初鷹型『註.上記計画ノモノハ(以下記載ノモノモ仝様)昭和十二年十一月二十二日艦本機密決第四七九九号二依ル基本計画当初ノモノ示ス(防潜網搭載ノ場合ヲ示ス)』
  7. ^ a b c d e #一般計画要領書(敷設艦)p.17
  8. ^ a b #昭和造船史1pp.764-795、艦艇要目表
  9. ^ #海軍造船技術概要(1987)下巻p.1712
  10. ^ a b c d e f g h i j #日本海軍特務艦船史(1997)p.72
  11. ^ #写真日本の軍艦第14巻pp.30-31、「『敷設艦』要目一覧」
  12. ^ #一般計画要領書(敷設艦)p.19、計画。士官13人、特務士官(無し)、准士官4人、下士官兵182人。
  13. ^ #一般計画要領書(敷設艦)p.21
  14. ^ a b #一般計画要領書(敷設艦)p.5
  15. ^ a b c d e f g h i #一般計画要領書(敷設艦)p.7
  16. ^ a b #一般計画要領書(敷設艦)p.13
  17. ^ a b c d e #日本補助艦艇物語p.53、(8)初鷹型(急設網艦)
  18. ^ #S16.6.30内令提要(下)原稿/艦船画像3、艦艇類別等級表
  19. ^ a b #海軍造船技術概要(1987)上巻p.795
  20. ^ #日本補助艦艇物語53頁『(8) 初鷹はつたか型(急設網艦)』
  21. ^ #日本海軍特務艦船史(1997)p.71
  22. ^ #終戦時の日本海軍艦艇p.24
  23. ^ #写真日本の軍艦第14巻p.36
  24. ^ #海軍制度沿革8(1971)pp.93-94、昭和4年3月23日(内令67)『艦艇類別等級表中左ノ通改正ス 別表軍艦ノ部中急設網艦ノ項ヲ削リ敷設艦ノ項中「厳島」ノ下ニ「、白鷹」ヲ加フ』
  25. ^ a b #日本補助艦艇物語p.51
  26. ^ a b c #日本補助艦艇物語p.45
  27. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1p.477
  28. ^ a b #戦史叢書31海軍軍戦備1p.506
  29. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1p.535
  30. ^ a b #戦史叢書31海軍軍戦備1p.575
  31. ^ a b c #写真日本の軍艦第14巻pp.36-37
  32. ^ a b #日本海軍艦艇図面集、図面47「敷設艦 初鷹型改 若鷹 一般艤装図」
  33. ^ #一般計画要領書(敷設艦)p.6
  34. ^ a b c d #海軍造船技術概要上巻pp.810-811
  35. ^ #一般計画要領書(敷設艦)p.16
  36. ^ a b #一般計画要領書(敷設艦)pp.2-3
  37. ^ a b c #海軍造船技術概要下巻p.1599、艦本総二課『新艦船主要要目一覧表』(其の1)、昭和18年9月1日
  38. ^ a b 中川努「日本海軍 特務艦船整備の歩み 3 敷設艦」#日本海軍特務艦船史(1997)pp.144-145
  39. ^ #日本海軍全艦艇史上巻p.426、No.1021
  40. ^ #写真日本の軍艦第14巻p.66下写真

参考文献

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  • 海軍省/編『海軍制度沿革 巻八』 明治百年史叢書 第180巻、原書房、1971年10月(原著1941年)。 
  • 『日本海軍特務艦船史』 世界の艦船 1997年3月号増刊 第522集(増刊第47集)、海人社、1997年3月。 
  • (社)日本造船学会/編『昭和造船史 別冊 日本海軍艦艇図面集』 明治百年史叢書 第242巻(四版)、原書房、1978年(原著1975年)。 
  • (社)日本造船学会/編『昭和造船史(第1巻)』 明治百年史叢書 第207巻(第3版)、原書房、1981年(原著1977年10月)。ISBN 4-562-00302-2 
  • 福井静夫『日本補助艦艇物語』 福井静夫著作集第10巻、光人社、1993年12月。ISBN 4-7698-0658-2 
  • 福井静夫『写真 日本海軍全艦艇史』ベストセラーズ、1994年。ISBN 4-584-17054-1 
  • 防衛庁防衛研修所戦史室『海軍軍戦備<1> 昭和十六年十一月まで』 戦史叢書第31巻、朝雲新聞社、1969年。 
  • 牧野茂福井静夫 編『海軍造船技術概要』今日の話題社、1987年5月。ISBN 4-87565-205-4 
  • 雑誌「丸」編集部 編『写真 日本の軍艦 第14巻 小艦艇II』光人社、1990年9月。ISBN 4-7698-0464-4 
  • 「敷設艦 一般計画要領書 附現状調査」。 
  • アジア歴史資料センター(公式)(防衛省防衛研究所)
    • 『昭和14年 達 完/1月』。Ref.C12070105000。 
    • 『昭和14年 達 完/12月』。Ref.C12070106200。 
    • 『昭和16年1月~6月 達/5月(1)』。Ref.C12070109500。 
    • 『昭和14年12月25日現在 10版 内令提要追録第6号原稿/巻1 追録/第6類 機密保護』。Ref.C13071986300。 
    • 『昭和15年6月25日現在 10版 内令提要追録第7号原稿/巻3 追録/第13類 艦船』。Ref.C13071990500。 
    • 『昭和16年6月30日現在 10版 内令提要追録第9号(下)原稿/巻3 追録/第13類 艦船』。Ref.C13071998900。