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別件逮捕(べっけんたいほ)とは、本件取調べ目的で、逮捕の要件を満たす他の事件(別件、通常は本件より軽微な事件)について被疑者を逮捕すること。またはそのための手法のこと。同様の目的・手法で勾留する場合は別件勾留と呼ぶ。また、捜索・差押えがなされる場合は別件捜索別件差押え)と呼ばれる。

目次

解説編集

刑事事件において被疑者の身柄を長期間確保し捜査や取調べを進めるにあたり刑事訴訟法の定める被疑者の勾留期限を延長させるために、または被疑者の口封じを狙っている人物の存在が明らかな場合や被疑者が自殺などを図りかねない状況の際に被疑者の安全を確保するために、本件と関係性の薄い微罪事件を立件して逮捕することが行われることがある(#事例)。こうした手法には、見込み捜査冤罪が発生しやすいやり方として非難する意見もある。

理論的問題編集

別件による逮捕・勾留そのものの可否(「本件基準説」対「別件基準説」)、および余罪取調べの限界(限定説 対 非限定説)の2つの論点に関し、逮捕前置主義・事件単位の原則の理解や、取調べや勾留質問の法的性質にもからんで、さまざまな見解が対立しており一致を見ない。以下では簡略化したものを述べる。

本件基準説
本件についての逮捕・勾留の可否を問題にし、逮捕勾留を要件を欠いた違法なものとし、それを利用した取調べによって得られた証拠は違法と評価する見解。ただし逮捕・勾留の法上の目的には取調べは含まれないと解されるため、違法と評価するためにはそれなりの理論構成が必要である。
別件基準説
あくまで別件についての逮捕・勾留の可否を問題にする見解。別件については逮捕・勾留の要件は具備しているため、逮捕・勾留は適法なものとなる。ただし、法定の逮捕期間を潜脱して本件を取り調べる目的が捜査機関にあったなどの理由で、取調べ自体が違法と評価されれば、その取調べによって得られた証拠はやはり違法と評価される(違法収集証拠排除法則)。ただし、本件基準説においても、逮捕・勾留の裁判そのものを取り消すことまでは主張しない。

事例編集

以下の判例がある。

  • 最高裁決定昭和52年8月9日狭山事件
  • 金沢地裁七尾支判決昭和44年6月3日蛸島事件
  • 1978年12月、行方不明者が多数出ており、容疑者であったジョン・ゲイシーが顔なじみのガソリンスタンドの店員にマリファナを渡したところを現行犯で逮捕し、家宅捜索礼状を手にし、家宅捜査をしたところ、行方不明者の死体が多数発見され、殺人の罪で起訴される。
  • 1981年1月2日、連続殺人事件の容疑者であったピーター・サトクリフを女性を暴行していたところを見かけた警察官に発見され、取調べを受け、それにより、証拠が見つかり、殺人事件の犯人として逮捕された[1]
  • 福岡高判昭和61年4月28日高隈事件
  • 大阪高裁判決平成21年3月3日
求人情報誌を持っていたのに「職業に就く意思がないままうろついた」として軽犯罪法違反容疑で奈良県警現行犯逮捕され、その2分後、覚醒剤使用で別件の覚せい剤取締法違反容疑で逮捕・起訴された男性の控訴審で、大阪高等裁判所は2009年3月3日、懲役3年の奈良地方裁判所の一審判決を破棄して無罪を言い渡した。大阪高等裁判所の古川博裁判長は、浮浪(軽犯罪法違反)容疑での逮捕は「働く能力がありながら職業に就く意思がない」とする軽犯罪法の要件を満たさず違法と認定し、覚醒剤使用については「違法な別件逮捕中に収集された証拠で無効」と判断した[2]

脚注編集

  1. ^ 毛利元貞『犯罪交渉護身術―最強の自己防衛システム』並木書房、2002年、48頁 ISBN 9784890631483
  2. ^ 就活中なのに浮浪犯?「覚せい剤」の男性に無罪(山陽新聞、2009年3月3日)

関連項目編集