3240形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院・鉄道省に在籍したタンク式蒸気機関車である。

日本鉄道 832(後の鉄道院 3241)

概要 編集

元は、日本鉄道1904年(明治37年)にドイツヘンシェル・ウント・ゾーン社から2両(製造番号6480, 6481)を輸入した、車軸配置2-6-2(1C1)複式2気筒の飽和式タンク機関車で、HS3/5形(831, 832)と称された。日本に初めて導入された、ヘンシェル製機関車である。複式の方式は、フォン・ボーリース式である。

この機関車は、2気筒単式であるH3/5形(後の鉄道院3170形)およびP3/5形(後の鉄道院3200形)と同様の経緯で発注されたもので、山陽鉄道筑豊鉄道で使用されていた複式機関車を試用し、単式機関車との比較が目的であったらしいが、その使用成績は伝わっていない。

本形式は2気筒複式であることから、左右非対称の特異な形態が特徴であった。シリンダは右側が高圧で径が小さく、左側が低圧で径が大きいため、シリンダのカバー(前後蓋)の大きさが異なり、煙室とシリンダをつなぐカバーも中を通る蒸気管の有無で形状が異なっていた。また、シリンダから前端梁は2段の乙字型ラインでつながっており、特徴的である。火室は常磐炭田産の低質炭に対応して広火室のベルペヤ式で、弁装置ワルシャート式である。使用圧力は14.1kg/cm2で、当時最高であった。

鉄道国有法による国有化後の1909年(明治42年)に制定された鉄道院の車両称号規程により、3240形3240, 3241)に改番されている。

当初の配置は水戸で、国有化後には上野に移ったが、少数形式であるうえ、複式という特殊な機構が嫌われ、1922年(大正11年)に廃車解体された。

主要諸元 編集

  • 全長:11,646mm
  • 全高:3,810mm
  • 全幅:2,660mm
  • 軌間:1,067mm
  • 車軸配置:2-6-2(1C1)
  • 動輪直径:1245mm
  • 弁装置:ワルシャート式
  • シリンダー(直径×行程):432mm/623mm×610mm
  • ボイラー圧力:14.1kg/cm2
  • 火格子面積:1.90m2
  • 全伝熱面積:86.1m2
    • 煙管蒸発伝熱面積:79.2m2
    • 火室蒸発伝熱面積:7.0m2
  • ボイラー水容量:3.2m3
  • 小煙管(直径×長サ×数):47.6mm×3,353mm×138本
  • 機関車運転整備重量:58.95t
  • 機関車空車重量:46.54t
  • 機関車動輪上重量(運転整備時):41.57t
  • 機関車動輪軸重(第3動輪上):14.53t
  • 水タンク容量:7.28m3
  • 燃料積載量:1.78t
  • 機関車性能
    • シリンダ引張力:10,960kg(単式時)、7,390kg(複式時)

参考文献 編集

  • 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会
  • 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社
  • 臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社
  • 金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車I」エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊
  • 金田茂裕「日本蒸気機関車史 私設鉄道編 I」エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊
  • 沖田祐作「機関車表 国鉄編 I」レイルマガジン 2008年9月号 (No.300)付録