声道
ヒト以外の動物の声道は #人以外 節で扱う。他の節はヒトを前提とする。
構成器官
編集声道は様々な器官がつくる空間により構成される。以下はその一覧である[1]:
指標
編集声道長
編集声道断面積関数
編集声道内を進む音波の進行方向を軸として、軸と垂直な声道の横断面を考える[2]。こうすると各位置における声道の断面積が算出でき、これは位置に対する断面積の関数として表現できる[2]。これが声道断面積関数である[2]。
声道断面積関数はレントゲンや核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて計測できる[3]。この関数は様々な声道モデル・音響モデルで利用される[4]。
個体差
編集声道長の個体差
編集声道の全長には年齢差・性差・個人差がある。声道の平均的な長さは、成人男性で16.9 cm、成人女性で14.1 cmである[5]。
声道と音色
編集声道は、管楽器の管の部分(リードの部分ではない)や、シンセサイザーに喩えられることがある。事実、声道はシンセサイザーの一部のような役割を果たしており、たとえ音の発生器で作られている元々の音が全く同じであっても、声道の形状によって、体外に発せられる音の音色は変化する。これは、声道の形状によって共鳴する音の周波数が変わることなどが原因である。よって、ヒトなどはこの部分の形状を変化させることも利用して、会話や歌唱などを行っている。(無論、声帯の振動数を変えるなど、声道の形状以外のパラメータも関係する。あくまで「この部分の形状を変化させること”も”利用して」となっている点に注意。)
ともあれ、ヒトのように複雑な発声を行うためには、この声道の形状などをかなり自由にコントロールすることが必須となる。(もちろん、ヒトは声道の形状のコントロールだけで言葉を話しているわけではないが、声道の形状を変えるという点に着目すると、特に舌の動かし方など、声道の中でも口腔の部分が大きな要素となっている。)例えば、ヒトの幼児の発する言葉が不明瞭となるのは、この声道の形状を上手くコントロールできないことも一因である。他にも、いわゆる早口言葉が言いにくいのは、あまり意味の無い言葉だからなどと言った別な理由もあるが、やはり声道の形状をコントロールしにくい言葉だからということも一因となっている。さらに、母語は簡単に発音できても、それ以外の言語では発音に苦労することがある理由の1つに、母語を発音するための声道の形状のコントロールは幼い頃から日常的に訓練が続けられているのに対し、それ以外の言語ではそうではないことが挙げられる。つまり、母語以外の言語を発音するために必要な声道の形状のコントロールについて、十分習熟していないことが一因なのである。
また、個体によって声が異なっているのは、声道の形状が個体によって違うことが一因である。(ヒトの場合、声紋が個体によって異なっていることが知られているが、この声紋を決める要素の1つが、声道の形状だと言い換えることもできる。)これは、ヒトの声道の形状のコントロール能力には限界があり、どうしても個体による声道の形状の違いが残ってしまうためだ。したがって、例えば、ある人が「あ」と発音している時の声道の形状をMRIなどを使って正確に測定し、その形状をヒトの身体と似た柔らかさを持つ樹脂などを使って、正確に再現した模型を作ったとする。それと同時に、その人の「あ」と発音する時に声帯が振動している周波数を正確に測定し、その周波数の音を出す装置を作り、そこに樹脂などを使って再現した声道の模型を被せてみると、その声道の持ち主が「あ」と発音しているのと似た音が出るわけである(無論、声道の形状以外にも音色に変化を与える要素があるので、全く同じ音にはならない)。
なお、ヒトは成長に伴って声が変わってゆくが、その理由の1つとして、身長の伸びと共に声道が長くなってゆくことも挙げることができる(ただし、男性の声変わりで顕著なように、声帯の形状が変わることなど、成長に伴って声が変わる要素は、声道の形状の変化以外にもあるので、あくまで理由の1つである)。
人以外
編集声をもつ動物はヒト以外にも多く存在する。それらの動物にも声道が見出される。
鳥類
編集鳥類の場合、声道は、気管、鳴管、口腔、食道の上部、クチバシから成る。
哺乳類一般
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^
声道は声門,咽頭,口腔,唇から成り
(堤 1999, p. 21) - ^ a b c d
声道を音波の伝搬経路に垂直に切った横断面の面積を,唇あるいは声門からの距離の関数とした声道の断面積関数が用いられている。
(堤 1999, p. 21) - ^
発話時の声道形状はX線写真 ... や MRI ... で求めることが行われている
(堤 1999, p. 21) - ^
音波の伝搬経路の取り方に留意すれば,この断面積関数を用いた 1 次元の音響管モデルで声道特性をかなり良く近似できる
(堤 1999, p. 21) - ^ Goldstein, U.G. (1980) An articulatory model for the vocal tracts of growing children. Ph.D. dissertation, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA
参考文献
編集- 堤, 一男 (1999). "声道断面積関数の音声信号からの推定 : 内部損失及び声道壁インピーダンスの影響とその補正". 日本音響学会誌. 56 (1): 21–31.
関連項目
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