太陽神
概要編集
古代より世界各地で太陽は崇められ、崇拝と伝承は信仰を形成した。
太陽神といえばギリシア神話やエジプト神話に登場する男神が想像されるが、ブライアン・ブランストンを始めとする神話学者の中には、太陽神は男神よりも女神の方が主流であると論ずる向きがある。男神がギリシア神話やエジプト神話などの著名な神話に登場することが原因となり、太陽神=男神という解釈が生まれたというのである。「太陽=男=光」と「月=女=闇」の二元性は、オルペウス教やグノーシス主義の思想を源とするヨーロッパ地方の説話に少なからず見受けられるが、例外として、太陽が女神で月が男神となっている北欧神話、バルト神話の存在は注目に値するものである。日本神話の天照大御神も一般に太陽神・女神とされるが、対をなす月神の月読命は性別が明らかでない(一般には男神)。ただし天照大御神については男神とする説がある(詳細は「天照大御神」を参照)。
太陽崇拝は、単一神教から始まり唯一神教に終わるとされる。古代エジプト第18王朝のアメンホテプ4世(アクエンアテン)は、伝統的な太陽神アメンを中心とした多神崇拝を廃止し古の太陽神アテンの一神崇拝を行った。太陽神の乗り物としては、古代エジプトにおいては空を海に見立てた「太陽の舟」(ラーやホルス)や、インド・ヨーロッパ語族圏では空を大地に見立てた「日輪の戦車」(ローマ神話のソル、『リグ・ヴェーダ』のスーリヤ、ギリシア神話のヘーリオス)がある。メソポタミア神話のシャマシュは、青銅器時代の間、重要な役割を果たす。南アメリカにはインカ神話のインティを代表とする強い太陽崇拝があった。
太陽の消失編集
「太陽の消失」は、世界の太陽神話共通のテーマとなっている。夜になると太陽が姿を消すこと(エジプト神話)、冬になると日照時間が短くなること、日食(日本・北欧神話)などといった、太陽にまつわる自然現象を説明するのに一役買っている。
- 例
中国の神話編集
他の多くの文化と異なり、中国では太陽や月を神格化して崇拝することはない。その尤もな理由としては、月を陰、太陽を陽とみなす、中国の文化における道教と易経の強い影響力にあると思われる(詳細は「陰陽思想」を参照)。
中国神話によると、初め10の太陽が天にあった。世界が非常に熱かったので、大地には何も生えなかった。そこで、后羿(こうげい)という弓の達人が9つの太陽を射落とし、現在に至るという。別の伝承では、日食は天の狼が太陽を食べることで引き起こされるとされ、日食の間、鍋や釜を叩いてこの「狼」を追い払う習慣が中国にあった。
主な世界の太陽神編集
- インカ神話 - インティ
- エジプト神話 - アテン、アトゥム、アメン、ケプリ、ホルス、ラー、ハトホル、セクメト
- ギリシア神話 - アポローン、ヘーリオス
- ケルト神話 - ベレヌス、ルー
- 中国神話 - 義和、火烏、燭陰
- 日本神話 - 天照大神、天道、天火明命、天之菩卑能命、稚日女尊、八咫烏、饒速日命
- アイヌ神話 -トカプチュプカムイ
- ペルシア神話 - フワル・フシャエータ、ミスラ
- 北欧神話(ゲルマン神話) - ソール
- リトアニア神話 - サウレー
- メソポタミア神話 - シャマシュ
- ヴェーダ神話 - インドラ、ヴィヴァスヴァット、ダクシャ、バガ、ミトラ、サヴィトリ、プーシャン、ヴィシュヌ
- ローマ神話 - アポロ、ソル、ヘリオガバルス
- ヒンドゥー教神話 - ヴィシュヌ、スーリヤ、サヴィトリ
- 仏教 - 大日如来、日天、日光菩薩
- スラブ神話 - ダジボーグ、ベロボーグ
- フェニキア神話 - バアル、シャプシュ
- メキシコ神話(マヤ・アステカ) - ウィツィロポチトリ、ケツァルコアトル、トナティウ、キニチ・アハウ、イツァムナー
- エスキモー・イヌイット神話 - マリナ