孤食(こしょく)とは主に一人で食事をする際に孤独を感じる「寂しい食事」の意味で用いられる言葉である。比較的新しい造語であるが、一人で食事を摂ること自体を「寂しいもの」と否定的に捉えて問題視することは、主観的な価値判断であるという批判があり[1]、コロナ禍もあって一人で食事ができる環境が整った店舗も増えている。この点についてはランチメイト症候群も参照。

概要 編集

NHK特集「なぜ一人で食べるの 食生活が子どもを変える」の中で、足立己幸の調査結果によって、家族が家の中にいるにもかかわらず、子供が一人で食事をする実態が明らかになり、「孤食」という言葉が誕生した[2]。一人で食べる孤食に対して、家族で食べる食事は「共食」と言われる[2]。同音異字語として、1990年代に提唱されるようになった個食があるが、個食は家族が一緒に食卓を囲んでもそれぞれの食事のメニューが異なることを指す[3]

孤食による影響として、好きな物ばかり食べる傾向になり、栄養の偏りや食生活リズムの崩れ(一日三食食べない)など、身体的な健康面への影響が懸念される生活習慣の形成が挙げられるほか、共に食べる人がいないことによるコミュニケーションの欠如、社会性・協調性の低下、精神的不安定など精神健康面での影響も考えられる[4]。朝食に家族全員で食べる子供の方が、孤食の子供よりも食欲があり、朝食夕食ともに主食・主菜・副菜の揃う割合が高く、不定愁訴も低いという結果がある[2]

高校生の孤食について、夕食孤食は塾通いやアルバイトによる物理的な時間の制約が関係しているのに対して、別室孤食は時間のずれの制約に関係なく、食卓を説教の場とイメージしていることが影響している[5]。したがって、高校生の孤食は家族関係や食卓に対する否定的なイメージが影響していると考えられる[5]

高齢者の孤食も注目されており、70歳以上の高齢者全体では、昼食で32%、夕食で22%が一人で食事しており、特に単身世帯の高齢者は昼食と夕食でそれぞれ 81%、85%と高い孤食率を示した[6]。ただし、介護を週 4日以上受けていたり、子どもが同居・同一敷地内、あるいは徒歩5分程度の場所に住んでいたりすれば、共食確率が2倍以上に高まるほか、仕事を4.5時間あるいは社会活動を4時間程度行えば、共食率が約2倍に高まる[6]

脚注 編集

  1. ^ 「孤食」という問題? 相模女子大学名誉教授 河上睦子、季刊『現代の理論』第4号(2015春号)、2015年3月15日発行。
  2. ^ a b c 風見公子「栄養学から考える孤食と共食」第12巻第1号、日本心身健康科学会、2016年、doi:10.11427/jhas.12.242020年6月17日閲覧 
  3. ^ 長谷部正「食の個別化に関する一考察」『農業経済研究報告』第34巻、東北大学農学部農業経営学研究室、2002年10月、1-11頁、ISSN 02886855 
  4. ^ 古川みらい ,小川亮「大学生の共食に対する態度の測定と共食教材の効果の検討」『教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要』第14巻、富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター、2019年12月、41-49頁、doi:10.15099/00019935 
  5. ^ a b 土屋芳子, 大賀英史, 小山修, 斎藤進, 佐々木敏「高校生の孤食の実態とその要因―生活習慣、食行動、家族関係、食卓イメージとの関連―」『日本建康教育学会誌』第12巻第1号、日本健康教育学会、2004年12月、9-18頁、doi:10.11260/kenkokyoiku1993.12.9 
  6. ^ a b 金子治平, 花田麻衣「高齢者の孤食状況とその要因 -社会生活基本調査の匿名データを使用して-」『農林業問題研究』第52巻第3号、地域農林経済学会、2016年、166-171頁、doi:10.7310/arfe.52.166ISSN 0388-8525 

関連項目 編集

外部リンク 編集