心理学における投影(とうえい、: Psychological projection)とは、自己のとある衝動や資質を認めたくないとき(否認)、自分自身を守るために、他の人間にその悪い面を押し付けてしまう(帰属させる)ような心の働きを言う[1]。これには責任転嫁(Blame shifting)が含まれ、たとえば習慣的に失礼なふるまいをしている人は常に、他人の事を失礼な人であると非難することがある。一般的には悪い面を強調することが多いが、良い投影も存在する。

投影は日常生活においてよく起こっている。例えば、なんとなく嫌いだった人物が、実は自分の否定的な、認めたくない面を体現していたなどである。また、この概念はパーソナリティ障害の治療において、医者に向けられる怒りとして専門的に語られることもある(精神分析における対象関係論投影性同一視)。統合失調症における迫害妄想との関連も語られている。

ユング心理学では、元型の一つ (Schatten) とも関連し、否定するのではなくそれを自分の一面として認識し受容することで、もっと大きな「大いなる自己」・自己実現へと成長するきっかけとして活かすことができると言う。

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理論的一例編集

投影は、普通の人においては、個人的・政治的な危機に遭遇した時に起こり得る[2]。しかりより一般的なのは、自己愛性パーソナリティ障害境界性人格障害など、パーソナリティ機能の原始的なレベルで神経症精神病がある場合である[3][4]

 
鏡に映る自分

現実の一例編集

  • 犠牲者非難(Victim blaming): 何かしらの事故の被害者や、不運にも犯罪に巻き込まれた人について、その被害者が相手の敵意を引き付けるような点があったから、彼らは被害に巻き込まれたのだという理論[5]
  • 夫婦間の問題投影(Projection of marital guilt):パートナーがいる人の不倫行為は、自己防衛によって相手パートナーのほうに問題があるのだと無意識に投影される傾向がある。否認によって、その罪悪感を打ち消した、代わりに相手を責める傾向がある[6]
  • いじめ:いじめの加害者は、自分の脆弱な点をいじめの標的に対して投影しうる。いじめの典型的卑劣行為は被害者に向けらているのだが、しかし実際にはそのネガティブさの発生源は、加害者側の個人的な不安感や脆弱感から見いだせる[7]。こういったネガティブな感情の相手への積極的投影は、対人関係といったミクロレベルから、国際政治、国際武力紛争いうマクロレベルまで、どこでも発生する可能性がある[8]
  • 一般的な罪悪感の投影 :深刻な良心の投影は[9]防衛機制の別形態であり、これは個人的または政治的な虚偽の告発行動に結びつくことがある[8]
  • 希望の投影: ポジティブな面としては、患者は時にセラピストに対し希望の気持ちを投影することがある[10]

脚注編集

  1. ^ Sigmund Freud, Case Histories II (PFL 9) p. 132
  2. ^ Erik Erikson, Childhood and Society (1973) p. 241
  3. ^ Peter Gay, Freud: A Life for Our Time, page 281n
  4. ^ Glen O. Gabbard, Long-Term Psychodynamic Psychotherapy (London 2010) p. 33
  5. ^ The Pursuit of Health, June Bingham & Norman Tamarkin, M.D., Walker Press
  6. ^ Sigmund Freud, On Psychopathology (Middlesex 1987) p. 198
  7. ^ Paul Gilbert, Overcoming Depression (1999) p. 185–6
  8. ^ a b Carl G. Jung ed., Man and his Symbols (London 1978) p. 181–2
  9. ^ Patrick Casement, Further Learning from the Patient (1990) p. 142
  10. ^ Patrick Casement, Further Learning from the Patient (1990) p. 122

関連項目編集