数論的関数(すうろんてきかんすう、英: arithmetic function, arithmetical function, number-theoretical function)とは、定義域が正整数である複素数を値に持つ関数のことである。
複素数の無限数列 は という対応で、数論的関数とみなすことができる。
q を 2以上の正整数とする。
このとき、任意の正整数 n に対して
と q 進展開する。
この項では、 が によって得られる数論的関数について述べる。
を満たすとき、q加法的関数 (q-additive function)という。
特に、q加法的関数 が を満たすとき、強q加法的関数 (strongly q-additive function)という。
- sum of digits 関数
- digit counting 関数 但し、b は のいずれか。
を満たすとき、q乗法的関数 (q-multiplicative function)という。
特に、q乗法的関数 が を満たすとき、強q乗法的関数 (strongly q-multiplicative function)という。
- トゥエ=モース数列
- product of digits 関数
数論的関数 に対して、ディリクレ積 を
と定めると、 は数論的関数となる。従って、数論的関数全体集合は多元環となる。
乗法的関数 に対して、ディリクレ積 で得られた数論的関数は乗法的関数となる。
数論的関数 が、ある正数 C と、数論的関数 が存在して、 と表されるとする。すると、 が(完全)乗法的関数である必要十分条件は、 は(完全)加法的関数である。
(1) 最大位数
数論的関数 に対して、ある単純な形をした n の関数 が存在して
が成立するとき、 の最大位数は であるという。
(2) 平均位数
数論的関数 に対して、ある単純な形をした n の関数 が存在して
が成立するとき、 の平均位数は であるという。
従って、 は、だいたい であると思われるが、数論的関数の多くは、値の振る舞いが複雑であり、 がほぼ である様な n は正整数のなかで少数であることも珍しいことではない。
(3) 正規位数
任意の正数 ϵ とほとんど全て[1]の正整数 n に対して
が成立するとき、 の正規位数は であるという。
平均位数と正規位数は、常に存在する訳ではない。
平均位数は持つが正規位数はもたない、その逆で、平均位数は持たないが正規位数を持つ数論的関数が存在する。
(1) 約数関数
最大位数は、
であり、平均位数は である。
さらに の正規位数は である。
従って、任意の正数 ε とほとんど全ての正整数 n に対して
が成立する。
つまり、ほとんど全ての正整数に対して、 の値は、平均位数よりも小さい。
(2) 約数和関数
最大位数は
であり、平均位数は である。
(3) オイラー関数
最大位数は であり、平均位数は である。
(4) n の相異なる素因数の個数を表す関数
平均位数および正規位数は共に である。
(5) n の重複を込めた素因数の個数を表す関数
平均位数および正規位数は共に である。
(6) 素数の個数を表す
正規位数は、 である。
- ^ 条件を満たさない n 以下の正整数の個数を n で割った値が 0 に収束するという意味。
- ハーディ, G.H.、ライト, E.M. 著、示野 信一・矢神 毅 訳『数論入門 I, II』シュプリンガー・フェアラーク東京、東京、2001年。
- Tattersall, J. J. 著、小松 尚夫 訳『初等整数論9章 [第2版]』森北出版、東京、2008年。
- H. Delange (1972). “Sur les fonctions q-additive ou q-multiplicatives”. Acta. Arith. (21): 285-298.