歌う骨(うたうほね、Der singende Knochen、KHM28)はイングランド地方の童話のひとつ。

あらすじ 編集

「危険な猪を退治したものは王女を嫁にやろう」

王さまからのお触書が出て、野心家の兄と人の良い弟の貧乏兄弟が猪退治に名乗り出る。王の提案により兄は森の西側から、弟は東側から入る事となった。森に入った弟は小人に出会い、猪を安全に倒せるという黒い槍を渡される。この不思議な槍で件の猪をすぐに退治してしまう。 弟が喜び勇んで猪を背負って城に向かう途中、居酒屋で飲んでいた兄と出会い、すべてを知った兄は弟を殺して橋のたもとに埋めてしまう。そして自分が猪を退治したと嘘をつき、王女と結婚する。

やがて年月が過ぎ、兄は王子として何不自由ない暮らしを満喫していた。そんなころ、羊飼いが橋のたもとで亡き弟の骨を見つけて、笛を作ると、笛に一息入れただけで勝手にこんな歌を歌いだした。

♪あなたが吹く笛は私の骨。兄に殺されてここに埋められてしまいました。兄は王女と結婚したかったから。

すぐに羊飼いは王さまにこの笛を届けると、笛は王さまの前でも同じように鳴った。この歌を聞いた王さまが橋の袂を掘り返すよう命令すると、そこから骸骨が出てきた。婿の悪行を知った王さまは、婿となった兄を生きたまま袋詰めにして口を縫い、池に沈めて処刑した。

一方、掘り出された弟の方は、改めて懇ろに葬られた。

参考文献

  • 池田香代子, 2008年.「歌う骨」『完訳 グリム童話集 1』 講談社 <講談社文芸文庫> (底本:グリム『子供と家庭のメルヒェン集』第7版 1857)pp.268-272.

類話 編集

骨に限らず、遺体の一部から死者のメッセージが伝えられる類話は世界中に見られる。

ドイツの民話に、貧しい兄弟ではなく、王さまの子供たち(姉と弟)が後継ぎを争って、弟が姉を殺して遺体を埋める話がある。

また、日本でも似た筋書きの類話が多く採集されている。

アフリカにもよく似た話が伝わっているが、猟師が王様を連れてくる事になっている。また奴隷貿易を通じて新大陸に連行された黒人たちの間でも「血まみれ骸骨の話」のエピソードのひとつとして伝承されている。[1]

脚注 編集

  1. ^ ゾラ・ニール・ハーストン・著「騾馬とひと」(平凡社)1997年

関連項目 編集

外部リンク 編集