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浜田篤哉

濱田 篤哉（はまだ あつや、1931年（昭和6年）10月17日[1] -1986年（昭和61年）5月18日[2]）は、栃木県芳賀郡益子町の益子焼の陶芸家である。

「益子焼の中興の祖」である濱田庄司の三男[3][4]であり、兄の濱田晋作[4]、その息子で甥の濱田友緒も陶芸家である。

生涯 編集

生い立ち。そして陶芸家へ 編集

1931年（昭和6年）10月17日、陶芸家・濱田庄司の三男[3]として栃木県益子町に生まれる[1][5][4]。

1948年（昭和23年）、栃木県立真岡高等学校を卒業後、父・庄司の弟子となる[5]。

1956年（昭和31年）に渡英し約2年間イギリスのセント・アイヴスにあるバーナード・リーチの工房「リーチ・ポタリー（英語: Leach Pottery）」に在籍し、共に働き[3]、陶芸家としての足場を固めた[4]。そして残りの約1年間の1959年（昭和34年）までに欧米諸国を巡り様々な文化に触れ[5]、様々な手工芸品を蒐集し、1960年（昭和35年）夏に帰国した[1]。

帰国してからは家業を手伝い[5]ながら1971年（昭和46年）から毎年、日本橋三越で個展を開催する。

1980年（昭和55年）、益子町に窯と工房を築窯し独立する[5]。「リーチ・ポタリー（英語: Leach Pottery）」で習得した取っ手やピッチャーの形状に定評があり、父・庄司も「取っ手の付け方では篤哉に敵うものはいないだろう」と感心するほどであり、[4]、また作陶技術の、特に成形には定評があり、「いい形の陶芸作品」を数多く製作していった[6][4][7]。

自由奔放で気分屋でとても愛嬌のある変わり者 編集

周囲の人々からは「異端児であり、変わった人」と評されることが多かった[7]。

「思い立ったら突然」であり、弟子の都合を考えずに突然、陶器の素焼きをやることにしたり、また毎年10月に三越で行われる個展の準備をギリギリまでやらないで、お盆を過ぎたら準備をし始めて、弟子たちを徹夜仕事に巻き込みながらも、毎年毎年個展には間に合わせていた[7]。

そして自分の趣味である料理や植物鑑賞と採集に[4]弟子を巻き込み、山形へ植物を観に連れ出したり、食事を作って出してはくれるけども、料理への詳細な論評をしないと怒り出す。そして料理を教えてくれるけれども玉ねぎを長時間炒める作業を任せたりしていた。そしてこの玉ねぎ長時間炒めには兄・濱田晋作の妻である映子も巻き込まれていた[7]。

また晋作の妻・映子によると、川で釣った大量の魚を見せに来たものの、一匹の半身しか置いていかなかったり、山へ行くからいなり寿司を作ってと頼まれたものの、油揚げを自分の分の四枚しか用意しなかったり、義理の姉がせっかく作ってくれたいなり寿司に対して、自分の蘊蓄を披露してしまったりしていたという[7]。

そして甥の濱田友緒にとっては、子どもたちに自分の持ってる英語の辞書の話を延々とするものの、優しくて愉快な叔父であったという[7]。

こだわることにはとことんこだわり、関心が無いことにはとことん無関心。そのため台所には業務用のレンジを入れていつも綺麗にしていたが、他の部屋は散らかしていた[7]。

そして父・濱田庄司の妻であり、篤哉の母である和枝もまた植物好きであり[4]、後の「益子参考館」となる、濱田庄司の屋敷の庭に水仙や梅や柿や柚子などの様々な珍しい植物を植えて、その世話をしていた[7][4]。

そんな母・和枝の影響からか篤哉も植物好きとなり[4]、自前で温室を建て蘭を育て、庭の草花を育て「植物の遺伝子」に関して研究するのが趣味であった[7][5][8]。

そしてしょっちゅう八溝山へ出かけてはツツジの原種、特に突然変異の「変わり花」を求めて探し回っては採取して[注釈 1]、「濱田窯」の職人に分け与えたり、「益子参考館」の庭に植えていた。そしてそのツツジは今も「益子参考館」の庭で花を咲かせているという[7]。

先述の料理好きや、料理の味付けへのこだわりも、濱田家へとやってきた客へ、心の籠もった手料理を振る舞った母・和枝の影響があった[4]。

自由奔放で気分屋でマニアックで変わり者で、猫撫で声で周囲の人びとを振り回しつつも、どこか憎めない愛嬌の持ち主であり、「でも、とても素敵な人」と評される人物であった[7]。

その一方で、自分の作陶作品への絵付けを一晩中描いては消し描いては消し、窯焚きを始める日の朝になっても作品が出来上がっていないこともあった。そして「蘭は好きだけど、難しいから描けない」という、陶芸家として神経質な部分を持ち合わせていた[7]。

逝去 編集

こうして父・庄司も含め将来の仕事を期待されつつも、[4]その時の気分で周囲を様々なことで振り回していた篤哉であったが、「最期もまた突然」であった[7]。

1986年（昭和61年）[3]5月18日の早朝、自宅の庭先で植木の手入れ中に突然倒れてしまい、急性心不全のため急逝した[4]。享年54であった[2][7]。

その後 編集

その後、篤哉の遺された作品は、父・濱田庄司や濱田窯の「窯もの」作品と共に、長年倉庫として扱われていた濱田窯長屋門に保管されていた[11]。

そして2017年（平成29年）、濱田窯長屋門を新たに別の形で活用することを決め、長屋門倉庫に保管されていた庄司や「窯もの」、そして篤哉の作品を、「民芸店ましこ」に協力を得て「お蔵出し」を行った[12]。そして「濱田窯ビンテージもの」として展示販売会を行い好評を得た[11][12][13][14]。

こうして近年、「濱田篤哉の作品」が再評価されるようになっていった[8]。

弟子 編集

脚注 編集

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注釈 編集

  1. ^ 出典資料にも簡単に記されているが、現在は八溝山のような国有林[9]は森林法により、植物採取をするためには届け出をしなくてはならず、また教育や研究の目的でないと許可されない[10]。

出典 編集

  1. ^ a b c 野間省一,講談社 1978, p. 114.
  2. ^ a b 下野新聞　1986年5月19日　5面
  3. ^ a b c d e “×丸田宗彦vol.2【一問一答】枯れ味の中に潜むコンテンポラリーな感覚”. WA・TO・BI - 和食の扉 - (2023年3月31日). 2023年5月19日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 近藤京嗣,栃木県の民藝 1987, p. 21-23.
  5. ^ a b c d e f 下野新聞社 1984, p. 35.
  6. ^ 下野新聞社 1984, p. 36.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n “土祭2015公式ガイドブック『土祭という旅へ』”. colocal コロカル (2015年). 2023年7月21日閲覧。 土祭2015公式ガイドブック『土祭という旅へ』P16 - 25 「人へ、生へ。1」「濱田篤哉の庭」PDFファイルダウンロードにて閲覧。
  8. ^ a b 濱田窯の作家 – 濱田窯
  9. ^ 関東森林管理局/八溝山 風景林
  10. ^ 高山植物等を採取する場合の手続：関東森林管理局
  11. ^ a b “約40年の封印からよみがえる"お蔵出し"作品を販売！「濱田窯・在る日の益子」”. BEAMS (2017年4月19日). 2023年4月12日閲覧。
  12. ^ a b “mashiko hamadagama old vintage sale”. masakokeshi｜note (2021年4月22日). 2023年4月13日閲覧。
  13. ^ “Mashiko Hamadagama　Old　Vintage　Sale　 “Second Stage“”. 濱田窯 (2021年10月11日). 2023年4月13日閲覧。
  14. ^ “ビームスの＜fennica＞が11月27日（土）28日（日）に益子町にて、ポップアップストアを開催”. 株式会社ビームスのプレスリリース (2021年11月22日). 2023年4月13日閲覧。
  15. ^ 「下野新聞」2002年（平成14年）3月10日付 9面「ぬくもりあふれる作風」「陶芸家・橋本秀一さん個展」「13日から東武宇都宮」
  16. ^ 橋本秀一
  17. ^ “濱田庄司所縁の作家展”. 益子×セントアイヴス100年祭の展示やイベント、食に関する情報、オリジナルグッズについて. 2023年5月19日閲覧。
  18. ^ Hashimoto 橋本 秀一 (@mashikoyaki_osawa) - Instagram
  19. ^ Hashimoto 橋本秀一 [@mashikoyaki_osawa] (2023年4月28日). "庄司先生の奥様にいただいた２冊の図録。………私のとても大切なもの。". Instagramより2023年5月19日閲覧。
  20. ^ 小林真理,平凡社 2002, p. 22.
  21. ^ “作陶40周年記念 丸田宗彦展”. 陶 奈なめ 連れづれ (2020年6月1日). 2023年5月19日閲覧。
  22. ^ 丸田宗彦 作品一覧｜ギャラリーえにし

参考文献 編集

外部リンク 編集

 

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