デッド・ゾーン』(The Dead Zone)は、スティーヴン・キング1979年アメリカ合衆国で出版した長編小説。

デッド・ゾーン
The Dead Zone
初版の表紙カバー
初版の表紙カバー
著者 スティーヴン・キング
発行日 1979年8月
発行元 ヴァイキング・プレス
ジャンル 長編小説
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
形態 上製本
ページ数 428
コード ISBN 978-0-670-26077-5
ウィキポータル 文学
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交通事故に遭遇し負傷して、5年近く昏睡状態になるが、覚醒の後、「デッドゾーン」として知られる領域が活性し、接触した相手の重大な秘密や、未来のビジョンが見える超能力を手に入れた平凡な高校教師ジョニー・スミス英語版が、将来核戦争を引き起こす次期大統領候補グレッグ・スティルソンの暗殺を企てる。

主人公ジョニー・スミスを中心としながらも、グレッグ・スティルソンの視点からも描かれている。冴えない日常を送りながらも異常性をのぞかせる男が、徐々に大統領候補にまで上り詰めるさまが挟み込まれ、ふたりの人生が交錯するクライマックスに集約する構成になっている。

ストーリー 編集

小さな町の高校教師ジョニー・スミスは、自動車事故で重傷を負い、5年近く昏睡状態に陥った。昏睡から目覚めて、世の中が彼のいない間に変わってしまったことを知り、ショックを受ける。彼のガールフレンドであるサラは他の男性と結婚してしまって子供をもうけており、彼の母は宗教に入れ込んだあげく亡くなり、彼自身は脳障害まで抱え込むことになった。

ジョニーの脳障害の部分「デッドゾーン」は、住所と数字を処理するのと同じくらい、想像(ビジュアライゼーション)の能力に何らかのつながりがあった。障害と引き換えに彼の脳は、休止状態にあった脳の部分(人がどのような出来事に遭遇するかに関連している)を活性化し、その結果、他人や物に触ることで、それに関する過去、現在、未来を見通せる超能力を持つに至った。ジョニーが見る映像の断片は、彼にははっきりした意味はわからないのだが、ジョニーは、物事が進むにつれてなんとかして意味を見つけ出そうとする。ジョニーには、自分がせねばならないことの全容や、どんな悲劇を逸らさねばならぬのかといったことは明確にはできない。

ジョニーは自分が新しく手に入れたこの能力を使い、彼の理学療法士の家が火事で焼失しそうになったところを助け、メイン州キャッスルロックのジョージ・バナーマン保安官に協力して連続殺人犯の正体を特定し、大火災からティーンエイジャー達を救う。

自分の武勇にもかかわらず、ジョニーは新しい能力が贈り物よりもむしろ呪いであると考えて、使うことに気が進まず、昔のような普通の生活に戻りたいと願うようになる。ところが、ある政治集会で、ジョニーは、ニューハンプシャーから来た型破りだが人気のある議会候補グレッグ・スティルソンと握手した時、スティルソンが数年後にアメリカ合衆国大統領になって恐ろしくも世界が荒廃・破滅するビジョンが見えてしまい、どんな代償を払ってでもスティルソンの勢いを削がねばならないという使命に駆られる。

ジョニーは、自分の能力に関する悪い噂を避けるためにフェニックスへ逃れ、まずはスティルソンの権力の台頭にストップをかける計画を実行に移そうとするが、自分が脳腫瘍で死に瀕していることを知り、決定的な行動に出ることを余儀無くされる。ジョニーは自分の見たビジョンが実現してしまう前にスティルソンに対し、政治集会中に銃撃による暗殺を決行しようとするが、暴力を行使することを躊躇したがために、失敗。逆に警備陣に瀕死状態にされる。が、ジョニーからの銃弾をよけようと、スティルソンはとっさに群集の中の幼い少年を盾にとって自分だけ生き延びようとしてしまった。この卑怯で情けない場面を、群集に目撃されただけでなく写真に撮られたことにより、スティルソンの政治生命は絶たれる。スティルソンが現場から逃亡しようとした際、ジョニーはスティルソンに触れる。そして自分の超能力によって、彼の命をかけた目的が達成されたことを知るのだった。

エピローグは、サラがジョニーの墓に訪れるシーンで構成され、ジョニーのスティルソン暗殺未遂の調査をする上院委員会(実在するメイン州の上院議員ウィリアム・コーエンによってまとめられる)の聴取の写しがちりばめられている。

出版 編集

日本では、吉野美恵子の翻訳で『デッド・ゾーン』として新潮社から出版された。2006年現在入手可能なものは以下の版である。

映像化 編集

映画 編集

1983年デヴィッド・クローネンバーグ監督作品として映画化された(上映時間103分)。

主人公ジョニーを クリストファー・ウォーケンが演じ、ブルック・アダムス、マーティン・シーン他が出演。キング作品の映画化の中では評価が高い。

テレビドラマ 編集

2002年から2007年までUSAネットワークで放送された。アンソニー・マイケル・ホール主演。ストーリーは大幅に一新された。制作者のマイケル・ピラーが2005年にガンで死去しており、制作に参加しているのは第5シーズンの途中までで、その後は息子のショーン・ピラーとドラマの主演であるアンソニー・マイケル・ホールが引き継いで制作をした。

外部リンク 編集