ロックイン効果(ロックインこうか、: Lock-in Effect)とは、消費者があるメーカー商品を購入した場合に、商品を買い換える場合にも引き続いて同じメーカーの商品を購入するようになり顧客との関係が維持される効果をいう[1]

このようになる要因としては、メーカーを変更するとなるとユーザーが負担する費用(スイッチングコスト)が多くかかってしまうことがあり、コストを増大させないために同じメーカーの商品を買い続けるというわけである。

技術的ロックイン 編集

このようなロックイン効果が多く見られる商品としては、コンピュータ関連製品がある。コンピュータの場合はメーカーや製品が異なると操作方法も異なるということから、違うメーカーに買い換えれば異なった操作をしなければならず、それを学習しそれに習熟するまでに多大な時間や心理的コスト(心理的負担。心理的な面倒臭ささ)を要することになるため、このようなコストをかけないために、ユーザたちは引き続いて同じメーカーの商品に買い替える傾向が強い、という効果が生じる。

たとえば特定のメーカーの画像処理ソフト、会計ソフトなどのソフトウェアを継続的に利用していると、他のメーカーのソフトウェアに簡単に乗り換えることができなくなる[2]。 またスマートフォンで、一旦iPhoneやAppleのサービスに慣れてしまうと、たとえスマートフォンが古くなって買い替えたり落として破損して新たに買わなければならない場合でも、安価で似たようなサービスが提供されているAndroidスマートフォンに即座に買い換えてもよさそうなものなのだが、一旦iPhoneやAppleのサービスだけに慣れてしまっている人は、新たにAndroid OSとgoogleのサービスについて学習する手間や時間を思い浮かべて、Androidに乗り換えることを躊躇してしまう、という現象が起きる。OSについても、たとえば最初にWindowsの操作方法に慣れてしまった人々は、その後に《Linuxデスクトップ》という、使いやすさもほぼ同レベルでセキュリティ的にはWindowsよりも優れているOSが無料で登場し、アプリケーションソフトも同OS向けに無料のものが多数流通していて、トータルで見ればLinuxのほうが優れているようだと分かっていても、最初にWindowsを学んでしまった人々は他の会社のOSには、その学習コストを考えると、なかなか乗り換える気にならない、ということも同様の効果による。逆に、最初からLinuxを学んだ最近の若い人々は、乗り換えの学習コストと金銭的な負担を考えると、もうWindowsに乗り換える気には全くならない、という現象も起きる。

巨視的に見ると、上のようなミクロな原理(各ユーザに起きる現象)により、コンピュータ関連では、先に高い市場占有率を占めた側の占有率は、その後に価格やサービス内容でより優れたものを提供するライバル企業が登場しても、1〜2年で市場占有率が急降下してゼロになったりせず、かなりの割合の顧客はその会社から離れずその会社の製品を長年に渡り買い続けてくれ、占有率が低下してゆく降下率も比較的緩やかなものに収まり、ゆっくりと低下してゆくということが起きる。

制度的ロックインの形成 編集

大規模インフラのプロジェクトにおける意思決定に関しても「ロックイン」は生じ、例えば経路依存性理論の結論のように、たとえより良い選択肢が存在していても次善のポリシーが適用させるときに生じる[3]。 このとき「ロックイン」は、「意志決定者の約束が無駄を生じる行動の方向にエスカレートすること(「技術的ロックイン」と対比される「制度的ロックイン」)」の意味で用いられる。この約束のエスカレートとは、義理を断ることができないことについての心理的な対処のスタイルを言う[4]

設備投資が巨額にのぼるメガプロジェクトにおいて収益性の悪化から撤退を検討する際に、将来の収益性とは関連のないはずの埋没費用についてもその額が大きいと、心理的に撤退を意思決定しにくくなり、関連取引を継続させてしまうことがある。

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ 『大人も知らない?続ふしぎ現象事典』2023年 マイクロマガジン社 p.16
  2. ^ iFinance, ロックイン効果
  3. ^ Woerdman, E. (2004). Politiek en politicologie. Groningen: Wolters-Noordhoff
  4. ^ Vrijkotte, J.G.M., Doornen, L.J.P. van, and Geus, E.J.C. de. (2004).

発展文献 編集

  • 『出社が楽しい経済学 2』日本放送出版協会、2009年、9頁。ISBN 4140813954 

外部リンク 編集