聖カタリナの神秘の結婚 (ロット)

聖カタリナの神秘の結婚』(せいカタリナのしんぴのけっこん、: Die mystische Vermählung der hl. Katharina: Mystic Marriage of Saint Catherine)は、イタリア・盛期ルネサンスヴェネツィア派の画家ロレンツォ・ロットが1506-1508年ごろ、板上に油彩で描いた絵画である。アレクサンドリアの聖カタリナの車輪 (前景中央部) に「Laurent.[ius] Lotus F.[ecit]」と署名されている。絵画は、1804年にヴュルツブルクのレジデンツからホフガルテンガレリー (Hofgartengalerie) に移され、その後、現在の所蔵元であるミュンヘンアルテ・ピナコテークに収蔵された[1][2][3]。なお、この絵画の工房によるヴァージョンがボストン美術館にある[4]。また、ローマバルベリーニ宮国立古典絵画館には、ロットによる『聖カタリナの神秘の結婚と聖人たち』が所蔵されている[5]

『聖カタリナの神秘の結婚』
ドイツ語: Die mystische Vermählung der hl. Katharina
英語: Mystic Marriage of Saint Catherine
作者ロレンツォ・ロット
製作年1506-1508年ごろ
種類板上に油彩
寸法71.3 cm × 91.2 cm (28.1 in × 35.9 in)
所蔵アルテ・ピナコテークミュンヘン
聖カタリナの神秘の結婚と聖人たち』(1524年)、 バルベリーニ宮国立古典絵画館ローマ

作品 編集

この画家初期の作品は、「アクサンドリアのカタリナの神秘の結婚」を表している[1][2]。伝説によれば、4世紀に生きたカタリナはエジプトの知事コンストゥスの娘であった。彼女は、自身の地位、富、知性に匹敵する夫を探すうちに賢人の隠遁者から助言を求めた。隠遁者は彼女に聖母子の絵画を見せ、彼女がイエス・キリストを夫に迎えるよう提案した。カタリナはキリスト教に改宗した後、幼子イエスが神秘の結婚の象徴である指輪をカタリナの指につけるという夢を見た[1]。後に彼女に求婚を拒否されたローマ皇帝マクセンティウスは彼女に信仰を捨てさせようとしたが、できなかったため刃を仕込んだ車輪で彼女を処刑しようとした。しかし、執行間際、車輪はひとりでに壊れてしまった[6]

「アクサンドリアのカタリナの神秘の結婚」の主題は、14世紀からイタリアで非常に一般的な主題であった。本作で、跪いた横顔の姿で表されている聖カタリナは凝った髪形をし、彼女の地位にふさわしい身なりをしている。彼女は聖母マリアの膝の上に乗り、聖ヨセフに見守られている幼子イエスから指輪を受け取っている。聖家族の背後にある緑色の栄誉の布は風景を覆っているが、左側の一部は垣間見えている。そこには森と茜色の夕空が見え、アルブレヒト・アルトドルファーなどドナウ派英語版の風景を想起させる。ロットは左右非対称の構図を用い、カタリナがイエスから指輪を受ける場面の幻想的な性質をさらに強調している[1]

脚注 編集

  1. ^ a b c d Die mystische Vermählung der hl. Katharina, um 1506”. アルテ・ピナコテーク公式サイト (英語). 2023年12月4日閲覧。
  2. ^ a b C.H.Beck 2002年、60頁。
  3. ^ Carlo Pirovano, Lotto, Electa, Milano 2002. ISBN 88-435-7550-3
  4. ^ The Mystic Marriage of Saint Catherine”. 2017年4月2日閲覧。
  5. ^ The Mystic Marriage of Saint Catherine with Saints”. バルベリーニ宮・コルシーニ宮国立古典絵画館公式サイト (英語). 2023年12月4日閲覧。
  6. ^ 「聖書」と「神話」の象徴図鑑 2011年、158頁。

参考文献 編集

外部リンク 編集