著作権分科会(ちょさくけんぶんかかい)は著作権に関わる調査・審議・処理をおこなう文化審議会傘下の合議体である[1]

概要 編集

著作権分科会は著作者の権利・出版権著作隣接権の保護利用を調査審議し、また法律で権限委譲された事項の処理をおこなう、文化審議会傘下の合議体である[1]。2001年に設置され、2023年現在まで毎年が開催されている。

著作権分科会では通例として、期首の会議において、審議事項と主な検討課題をリストアップし、各審議事項に対応した(=特定事項の審議を担う)小委員会・部会を設置する[2]。この会議結果を受け設置されるそれぞれの小委員会・部会で各検討課題が数ヶ月間議論され、審議の過程と結果が著作権分科会へ報告される。

下部組織 編集

著作権分科会は特定事項の審議を担う小委員会を設置できる[3]。この規定に基づき、2023年現在、次の小委員会・部会を設置している:

小委員会は審議事項の変化に合わせて改組統廃合されている。次表は過去年度の小委員会・部会の一覧と変遷である:

表. 小委員会・部会の変遷(2002~2023)[4]
23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02
政策 国際
基本政策 著作物保護・利用・流通[5] [6] - 過去[7] - 契約・流通
- 教育[8]
法制・基本問題 - 基本問題 私的録音録画 - 救済[9]
法制度 法制問題
使用料部会

政策小委員会 編集

政策小委員会(せいさくしょういいんかい)は著作権関連の基本政策と国際的課題を調査審議する、文化審議会著作権分科会傘下の合議体である[10]

文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項を設置根拠とし[11]、2023年から設置されている。令和2年度から令和4年度まで毎年設置されていた「基本政策小委員会」、及び、平成13年度から令和4年度まで毎年設置されていた「国際小委員会」の流れを汲んでいる[12]

法制度小委員会 編集

法制度小委員会(ほうせいどしょういいんかい)は著作権法制度を調査審議する、文化審議会著作権分科会傘下の合議体である[13]

文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項を設置根拠とし[14]、2020年から2023年現在まで毎年設置されている。平成14年度から平成24年度まで毎年設置されていた「法制問題小委員会[15]」、平成25年度から令和元年度まで毎年設置されていた「法制・基本問題小委員会[16]」の流れを汲んでいる。

2023年度は以下の2つの審議事項を調査審議した[17]

  • DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る法制度について
  • 生成AIと著作権に関する論点整理について

後者は知的財産推進計画2023の重点施策「急速に発展する生成 AI 時代における知財の在り方」の1点目「生成 AI と著作権」に対応する。明確化を求められた3点を中心に検討がおこなわれた[18]

過去の著作権分科会小委員会 編集

過去には、私的録音録画小委員会・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会が設置されている。

主な検討課題 編集

次表は各年度の主な検討課題である:

表. 各年度の全小委員会における主な検討課題[19]
   '23       '22       '21    '20 '19 '18 '17
国際保護対応[20]
- 国際海賊版[21]
- 海外展開[22] デジタル施策[23] -
- 私的録音録画補償[24]
ネット配信[25] - アーカイブ[26]
図書館権利制限[27] 権利制限規定[28] 権利制限規定[29]
- 写込権利制限[30] 教育情報化[31]
デイジー教科書[32] 障害者接続[33]
海賊版表示抑制[34] ネット海賊版[35] リーチサイト[36]
生成AI[37] DX基盤[38] 研究権利制限規定[39] -
DX基本政策[40] -
DX法制度[41] 追及権[42]
- 独占的ライセンシ[43]

AIと著作権 編集

著作権分科会ではいわゆる AI と著作権に関する検討が様々おこなわれてきた。

以下は「主な検討課題」としてAIを直接扱った小委員会の一覧である:

AI と著作権に関する考え方について 編集

AI と著作権に関する考え方について(えーあいとちょさくけんにかんするかんがえかたについて)は生成AI に関わる現行著作権法の解釈・考え方を取りまとめた文章である[46]

文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2023年度に検討をおこない、2024年3月に策定した。

設置根拠 編集

著作権分科会は文化審議会令第5条を設置根拠とする[47]

構成員 編集

著作権分科会第23期は次の委員から構成される:

第23期 著作権分科会 委員名簿
名前 委員所属 名前 委員所属
分科会 法制度 政策 使用料 分科会 法制度 政策 使用料
麻生 典 棚井 文雄
あんびる やすこ 田村 善之
生貝 直人 茶園 成樹
池村 聡 墳﨑 隆之
石新 智規 中川 達也
伊東 敦 中沢 けい
今村 哲也 仁平 淳宏
植木 康夫 羽賀 由利子
上野 達弘 畑 陽一郎
内山 隆 広石 美帆子
太田 勝造 深町 徳子
唐津 真美 福井 健策
喜入 冬子 渕 麻依子
草野 絵美 前田 健
河野 智子 前田 優子
河野 康子 間明 宏充
坂井 崇俊 丸山 ひでみ
佐藤 正弥 宮島 香澄
澤田 将史 吉澤 秀男
島並 良 吉田 悦子
水津 太郎 吉村 文雄
菅 浩江 早稲田 祐美子
高部 眞規子 渡辺 俊幸

脚注 編集

  1. ^ a b "第五条 ... これらの分科会の所掌事務は ... 下欄に掲げる ... 著作権分科会 一 著作者の権利、出版権及び著作隣接権の保護及び利用に関する重要事項を調査審議すること。二 ... 審議会の権限に属させられた事項を処理すること。" 文化審議会令(平成三十年政令第二百六十六号による改正).
  2. ^ "資料4の審議事項に対応し、著作権関連の基本政策及び国際的な課題に関することを審議する政策小委員会、著作権法制度に関することを審議する法制度小委員会を設置することを案として示させて" 著作権分科会. (2023). 文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回).
  3. ^ "(小委員会) 第三条 分科会長は、特定の事項を審議するため必要があると認めるときは、分科会に小委員会を置くことができる。 " 文化審議会著作権分科会運営規則 (令和四年六月二十七日文化審議会著作権分科会決定).
  4. ^ 「小委員会」を名称から省略。部会は省略無し。
  5. ^ 「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」
  6. ^ 「出版関連小委員会」
  7. ^ 「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」
  8. ^ 「著作権教育小委員会」
  9. ^ 「司法救済制度小委員会」
  10. ^ "各小委員会の審議事項 ... 政策小委員会 著作権関連の基本政策及び国際的な課題に関すること" 文化審議会著作権分科会. (2023). 小委員会の設置について. 文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回).
  11. ^ "文化審議会著作権分科会運営規則 ... 第3条第1項の規定に基づき ... 以下の二小委員会を設置する。 ... (1)政策小委員会" 文化審議会著作権分科会. (2023). 小委員会の設置について. 文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回).
  12. ^ "この政策小委員会は、昨年度、基本政策小委員会にて議論されました ... 基本政策について、そしてまた、国際小委員会にて議論されました ... 国際的な対応の在り方について、一体的に御議論を頂戴すべく設置されたものでございます。" 政策小委員会. (2023). 文化審議会著作権分科会政策小委員会(第1回).
  13. ^ "各小委員会の審議事項 ... 法制度小委員会 著作権法制度に関すること" 文化審議会著作権分科会. (2023). 小委員会の設置について. 文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回).
  14. ^ "文化審議会著作権分科会運営規則 ... 第3条第1項の規定に基づき ... 以下の二小委員会を設置する。 ... (2)法制度小委員会" 文化審議会著作権分科会. (2023). 小委員会の設置について. 文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回).
  15. ^ "2 各小委員会の検討事項例 (1)法制問題小委員会 ①情報化等に対応した著作者等の権利の在り方 ②情報化等に対応した権利制限の在り方" 文化審議会著作権分科会. (2002). 小委員会の設置について. 文化審議会著作権分科会(第4回).
  16. ^ "各小委員会の審議事項 (1)法制・基本問題小委員会 著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関すること" 文化審議会著作権分科会. (2019). 小委員会の設置について. 文化審議会著作権分科会(第54回)(第19期第1回).
  17. ^ "審議事項②:著作権法制度に関すること" (2023). 著作権分科会. (2023). 第23期 文化審議会著作権分科会 における主な検討課題について. 文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回).
  18. ^ "主要論点項目 ... 1点目、学習用データとして用いられた元の著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する基本的な考え方。類似性・依拠性の考え方や事例研究。 ... 2点目、AIを作成するために著作物を利用する際の基本的な考え方。1つ目として、非享受目的に該当する場合。... また2点目、著作権者の利益を不当に害することとなる場合。... 3点目として、AI生成物が著作物と認められるための基本的な考え方。利用者の創作意図や創作的寄与に関する考え方や事例研究" 法制度小委員会. (2023). 文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)議事録.
  19. ^ 検討課題の正式名称は脚注に配置した
  20. ^ 「著作権保護に向けた国際的な対応の在り方について」「著作権保護に向けた国際的な対応の在り方について(放送機関の保護のための条約に関する対応の在り方についての検討,最近の諸外国の制度改正の分析など)」
  21. ^ 「国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応について」「国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について」「国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について(権利行使に係る課題の分析及びノウハウ整理など)」「インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方」
  22. ^ 「我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について」
  23. ^ 「デジタル時代に対応した著作権施策の在り方について」
  24. ^ 「私的録音録画補償金制度の見直しについて」「私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について」「対価還元手段の具体的な制度設計について」「クリエーターへの適切な対価還元等のための,私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入」
  25. ^ 「放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について」「放送のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化(著作隣接権に関する制度の在り方を含む)について」
  26. ^ 「著作物等のアーカイブの利活用促進」
  27. ^ 「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)について」
  28. ^ 「柔軟な権利制限規定について(政令のニーズの再募集など)」
  29. ^ 「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等」
  30. ^ 「写り込みに係る権利制限規定の拡充など既存の権利制限規定の見直しについて」
  31. ^ 「教育の情報化の推進等」
  32. ^ 「デイジー教科書等の外国人児童生徒への提供について」
  33. ^ 「障害者の情報アクセス機会の充実」
  34. ^ 「インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制について」
  35. ^ 「インターネット上の海賊版対策について」
  36. ^ 「リーチサイトへの対応」
  37. ^ 「生成AIと著作権に関する論点整理について」
  38. ^ 「DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策について」
  39. ^ 「研究目的に係る権利制限規定の創設について」
  40. ^ 「DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策について」
  41. ^ 「DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る法制度について」
  42. ^ 「追及権等について」
  43. ^ 「独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与等について」
  44. ^ "審議事項②:著作権法制度に関すること ... ○ 生成AIと著作権に関する論点整理について" 著作権分科会. (2023). 第23期 文化審議会著作権分科会 における主な検討課題について.
  45. ^ "今期の法制度小委員会におきましては、AIと著作権に関する論点の整理等につきまして、著作物の利用と著作権の適切な保護のバランスに配慮しつつ、御審議いただきたいと考えております。" 法制度小委員会. (2023). 文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回).
  46. ^ "この文書(「本考え方」)は、生成 AI と著作権に関する考え方を整理し、周知すべく、文化審議会著作権分科会法制度小委員会において取りまとめられたものである。" p.0 より引用。文化審議会著作権分科会法制度小委員会. (2024). AI と著作権に関する考え方について. 文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回).
  47. ^ "第五条 審議会に、次の表の上欄に掲げる分科会を置き ... 著作権分科会" 文化審議会令(平成三十年政令第二百六十六号による改正).

関連項目 編集

外部リンク 編集