襲速紀要素(そはやきようそ、英語: Sohayaki element)とは、植生の地理的な分類において、九州中南部(沖縄を除く)・四国南部・紀伊半島・東海地方に分布の中心がある、又はこの地域に特徴的な植物のことである。

特徴

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植物学者の小泉源一博士が名付けた用語とされる[1][2]が、具体的には定義されておらず、その語の由来は以下のように推測されている[3]

  • …かつて九州南部に民族である熊襲(くまそ)
  • 豊予海峡の古い呼び名である速吸瀬戸(はやすいのせと)
  • 紀伊国

これらの地区は、海を隔てているが、いずれも温暖多雨な気候で深い森林を有し、共通の植物種が生息している。襲速紀要素には、およそ100種類の植物が挙げられ、日本固有種[4]が多く含まれている。

代表的な植物一覧

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ソハヤキ要素
和名 学名 科名 備考
トガサワラ Pseudotsuga japonica マツ科 日本固有種[4]
コウヤマキ Sciadopitys verticillata コウヤマキ科 日本固有種[4]
ナギ Nageia nagi マキ科
ハナガガシ Quercus hondae ブナ科 日本固有種[4]
ナガバイラクサ Urtica angustifolia var. sikokiana イラクサ科
ヤッコソウ Mitrastemon yamamotoi ヤッコソウ科
オオバメギ Berberis tschonoskyana メギ科 日本固有種[4]
ユキワリイチゲ Anemone keiskeana キンポウゲ科 日本固有種[4]
タマカラマツ Thalictrum watanabei キンポウゲ科 日本固有種[4]
シロモジ Lindera triloba クスノキ科 日本固有種[4]
トサミズキ Corylopsis spicata マンサク科 日本固有種[4]
マルバノキ Disanthus cercidifolius マンサク科
ヤハズアジサイ Hydrangea sikokiana ユキノシタ科 日本固有種[4]
ワタナベソウ Peltoboykinia watanabei ユキノシタ科 日本固有種[4]
バイカアマチャ Platycrater arguta アジサイ科
センダイソウ Saxifraga sendaica ユキノシタ科 日本固有種[4]
チャルメルソウ Mitella furusei var. subramosa ユキノシタ科 日本固有種[4]
ギンバイソウ Deinanthe bifida ユキノシタ科 日本固有種[4]
イワユキノシタ Tanakaea radicicans ユキノシタ科 日本固有種[4]
ズイナ Itea japonica ユキノシタ科 日本固有種[4]
チャボツメレンゲ Meterostachys sikokianus ベンケイソウ科
トサシモツケ Spiraea tosaensis バラ科 日本固有種[4]
ハスノハイチゴ Rubus peltatus バラ科
タチバナ Citrus tachibana ミカン科 日本固有種?[5]
イヨフウロ Geranium shikokianum フウロソウ科
ハガクレツリフネ Impatiens hypopylla ツリフネソウ科 日本固有種[4]
オオバクマヤナギ Berchemia polyphylla クロウメモドキ科
ウラジロサルナシ Actinidia arguta var. hypoleuca マタタビ科
クロガネモチ Ilex rotunda モチノキ科
シコクスミレ Viola shikokiana スミレ科 日本固有種[4]
イヌトウキ Angelica shikokiana セリ科 日本固有種[4]
ウンゼンツツジ Rhododendron serpyllifolium ツツジ科 日本固有種[4]
モチツツジ Rhododendron macrosepalum ツツジ科 日本固有種[4]
オンツツジ Rhododendron weyrichii ツツジ科 日本固有種[4]
アサガラ Pterostyrax corymbosus エゴノキ科
コハクウンボク Styrax shiraiana エゴノキ科
イワザクラ Primula tosaensis サクラソウ科 日本固有種[4]
シノノメソウ Swertia swertopsis リンドウ科 日本固有種[4]
アサマリンドウ Gentiana aikokiana リンドウ科 日本固有種[4]
スズコウジュ Perillula reptans シソ科 日本固有種[4]
シモバシラ Keiskea japonica シソ科 日本固有種[4]
シチョウゲ Leptodermis pulchella アカネ科 日本固有種[4]
イワツクバネウツギ Zabelia integrifolia スイカズラ科 日本固有種[4]
コモノギク Aster komonoensis キク科 日本固有種[4]
キシュウギク (ホソバノギク) Aster sohayakiensis キク科 日本固有種[4]
テバコモミジガサ Parasenecio tebakoensis キク科 日本固有種[4]
クサヤツデ Diaspananthus uniflorus キク科 日本固有種[4]
テイショウソウ Ainsliaea cordifolia キク科 日本固有種[4]
オオモミジガサ Miricacalia makinoana キク科 日本固有種[4]
ケイビラン Comospermum yedoense クサスギカズラ科 日本固有種[4]
シライトソウ Chionographis japonica シュロソウ科
ジョウロウホトトギス Tricyrtis macrantha ユリ科 日本固有種[4]
キイジョウロウホトトギス Tricyrtis macranthopsis ユリ科 日本固有種[4]

脚注

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参考文献

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  • Murata, G. (1976). “On the "Sohayaki element" defined by Dr. Koidzumi”. Memoirs of the National Sciences Museum (9): 111-121. NAID 10011408893. 
  • Shimizu, Tokuro; et al. (2016). “Hybrid Origins of Citrus Varieties Inferred from DNA Marker Analysis of Nuclear and Organelle Genomes”. PLOS ONE 11 (11): 1-58. doi:10.1371/journal.pone.0166969. 
  • 加藤雅啓、海老原淳 編『日本の固有植物』東海大学出版会〈国立科学博物館叢書 11〉、2011年3月。ISBN 978-4-486-01897-1 
  • 前川文夫『日本固有の植物』玉川大学出版部〈玉川選書〉、1978年6月。ISBN 4472147521 
  • 前原勘次郎『南肥植物誌』前原勘次郎、1932年。全国書誌番号:47013360