谺つり星

三善晃作曲のチェロ協奏曲

谺つり星』(こだまつりほし)は、三善晃1996年サントリーホール開場10周年記念委嘱作品として作曲したチェロ協奏曲である。別題は「チェロ協奏曲第2番」。欧文タイトルは、 Étoile à échos : cello concerto no. 2[1]。演奏時間は約13分[1][注釈 1]

作曲の経緯 編集

三善が1995年から作曲した「交響四部作」の第2作目にあたる。堤剛に小編成のオーケストラとのチェロ協奏曲の作曲を薦められていた三善は、独奏チェロの奏する谺がオーケストラの共振を呼び波紋をつくるイメージで作曲した[2]。三善がそれまで声と器楽を複合させた作品において追求していた死と生の関係、あるいは個々の人間存在とそれらの関わりを、独奏楽器とオーケストラの関係やオーケストレーションにおいて追求している[3]

曲名の由来は、野尻湖に生成している「星つり藻」からきている。傘状の枝に星型の仮根が星を吊っているように見え、三善は人の中にある「谺」がどこかの星に吊らされて揺れている様をたとえた[2]

初演 編集

1996年10月28日にサントリーホールにおいて、若杉弘指揮NHK交響楽団堤剛の独奏により初演された[4]

編成 編集

独奏チェロフルート2(ピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2(1番はEsクラリネット持ち替え)、ファゴット2(2番はコントラファゴット持ち替え)、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ4、サスペンデッド・シンバルバスドラムタムタムサンダーボードヴィブラフォンスレイベルマラカスチューブラーベルトムトム3、スネアドラムマリンバアンティークシンバルピアノチェレスタハープ弦五部[1]

構成 編集

  • 単一楽章。

楽譜 編集

スコアは全音楽譜出版社より市販されている[5]。演奏譜は同社よりレンタルされている[6]

録音 編集

評価 編集

1997年の第45回尾高賞選考会では、『谺つり星』の堂々たる風格が話題となった[7]

2009年リリースのCD『交響四部作』は、2009年度第47回日本レコード・アカデミー賞を受賞した[8][9]

2021年11月5日に広島文化学園HBGホールにおける広島交響楽団第416回定期演奏会で、下野竜也指揮、広島交響楽団、伊東裕独奏で演奏された[10]。下野はこの作品の独奏チェロとオーケストラの関係性について「召集された若者と戦争をもたらした大人たち」と語ったが、その構図が見事に現れたと評されている[11]

参考文献 編集

  • CD:三善晃『交響四部作』日本伝統文化振興財団 (発売) , ビクターエンタテインメント (販売), 2009, c2009, VZCC-1021/2, ライナーノーツ

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 2000年9月5日サントリーホール、堤剛の演奏は約10分、2001年2月19日ザ・シンフォニーホール、堤剛の演奏は約9分である(CD:三善晃『交響四部作』)。

脚注 編集

  1. ^ a b c 三善晃『谺つり星〈チェロ協奏曲第2番〉』全音楽譜出版社、2009年10月15日、3頁。ISBN 978-4-11-899777-3 
  2. ^ a b 『交響四部作(CD)ライナーノーツ』日本伝統文化振興財団、2009年、6頁。 
  3. ^ 楢崎洋子『三善晃の作曲様式-器楽作品と声楽作品の相互流入による様式形成とその意義-』楢崎洋子、2006-2007https://cir.nii.ac.jp/crid/1040000781980532224 
  4. ^ [サントリーホール10周年記念フェスティバル公演:サントリーホール10周年記念作曲委嘱] サントリーホール 公演アーカイブ”. サントリーホール. 2023年9月9日閲覧。
  5. ^ 三善 晃:谺つり星(こだまつりほし)〈チェロ協奏曲第2番〉:全音オンラインショップ”. shop.zen-on.co.jp. 2023年9月9日閲覧。
  6. ^ オーケストラ レンタル楽譜カタログ”. 全音楽譜出版社. 2023年9月9日閲覧。
  7. ^ 外山雄三 (1997-05). “選考にあたって”. フィルハーモニー 69 (5): 31. https://dl.ndl.go.jp/pid/2259014/1/27. 
  8. ^ 三善 晃 交響四部作「夏の散乱」「谺つり星」「霧の果実」「焉歌・波摘み」(2枚組)”. 日本伝統文化振興財団作品検索. 2023年9月9日閲覧。
  9. ^ 音楽之友社レコード・アカデミー賞歴代受賞盤”. 20thBOX. 2023年9月9日閲覧。
  10. ^ 第416回定期演奏会”. 広島交響楽団. 2023年9月9日閲覧。
  11. ^ 評論|戦争の記憶と音楽〜広島交響楽団による2つの演奏を聞いて〜 |能登原由美”. Mercure des Arts (2021年12月14日). 2023年9月9日閲覧。