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初等幾何学における球体は決められた点から決められた距離以内にある点の全体が空間において占める領域であった。同様のことを n-次元ユークリッド空間で行って n-次元超球体が定義される。n-次元超球体の体積率[注釈 1]は数学全般を通して現れる重要な定数の一種である。

目次

公式編集

明示公式編集

最初のいくつかの次元
次元 半径 R の球の体積 体積 V の球の半径
0   全ての球の体積は1
1    
2    
3    
4    
5    
6    
7    
8    
9    
10    
n Vn(R) Rn(V)

半径 Rn-次元ユークリッド球面の体積は

 
で与えられる[1]。ただし、Γオイラーガンマ函数階乗函数の非整数引数への一般化)である。整数値および半整数値に対するガンマ函数の特殊値英語版の明示公式を用いれば、ガンマ函数の値を求める必要のないユークリッド球体の体積公式が得られる。それらは
 
と書ける。ただし、奇数 2k + 1 に対して (2k + 1)!! = 1⋅3⋅5⋯(2k − 1)(2k + 1)二重階乗である。

n-次元球体の体積 V をその半径 R で表す代わりに、上記の公式を逆に解いて半径 R を体積 V の函数として表すこともできる:

 
この公式もまた、奇数および偶数の次元に場合を分けて、ガンマ函数の部分を階乗および二重階乗を用いて
 
と書き直すことができる。

漸化式編集

超球体の体積は様々な再帰的関係式を満足する。それらの式は直接的に証明することもできるし、上で述べた一般の体積公式からの帰結として示すこともできる。最も簡明な主張は、n-次元球体の体積を、同半径の (n − 2)-次元球体のそれで表す式

 
である。n-次元球体の体積を同半径の (n − 1)-次元球体の体積で表す式
 
も存在する。ふたたびガンマ函数に対する明示公式を用いて、一次元の漸化式を
 
 
と書くこともできる。

高次元の場合における体積の評価編集

R を固定して考えるとき、半径 Rn-次元球体の体積は n が無限大へ近づく極限において零に近づく。これは二次元の漸化式を用いて示すことができる。実際、各段階において体積に掛かる新しい因子は 1n に比例し(比例定数 2πR2n に依らないことに注意せよ)、最終的には n が十分大きければこの新しい因子は 1 よりも小さくなる。それにより、n-次元球体の体積は少なくとも幾何級数的に減少しなければならず、従ってそれは零に収斂する。同様の証明は一次元の漸化式を用いても示すことができる。この場合は、新しい因子はガンマ函数の商に比例する。ゴーチの不等式英語版はこの商を n−1/2 で上から抑えるものである。体積が少なくとも幾何級数的に減少することを示すという論法は、先と同じである。

体積の高次元における振る舞いのより詳細な記述は、スターリング近似を用いて与えられる。これにより漸近公式

 
が導かれる。この近似における誤差は 1 + O(n−1) の因子である。スターリングの近似は実はガンマ函数の下からの評価であり、従って上記の式は上界を与えている。これにより n-次元球体の体積が指数函数的に減少することの別証明が得られる(n が十分大きいとき、因子 R2πe/n1 より小さく、従って先ほどと同じ論法が適用できる)。

表面積との関係編集

半径 Rn-次元超球面の表面積を An(R) と書くことにする。この n-次元球面は半径 R(n + 1)-次元球体の境界である。この (n + 1)-次元球体は同心球面の合併であり、その帰結として体積と表面積との間には

 
なる関係が成立する。体積は半径のに比例するから、上記の関係式により n-次元球体の表面積と (n + 1)-次元球体の体積とを関連付ける簡単な漸化式が導かれる。二次元の漸化式を適用することにより、n-次元球体の表面積と (n − 1)-次元球体の体積を関係付ける漸化式も
 
 
 
と与えられる。

証明編集

上記の公式に関して多くの証明が存在する。

体積は半径の n 乗に比例する編集

n-次元球の体積についてのいくつかの証明においての重要なステップであり、それ以外にも有用性のある一般的な事実は、半径 Rn-次元球の体積は Rn に比例すること、つまり

 
である。このときの比例定数は単位球の体積に等しい。

上記の関係は帰納法による簡単な証明がある。基底段階は n = 0 であり、比例することは自明である。帰納段階は、次元 n − 1 で比例することが真であると仮定する。n-次元球体と一つの超平面との交わりは (n − 1)-次元球体であることに注意する。n-次元球体の体積を (n − 1)-次元球体の体積の積分

 
として書く時、帰納法の仮定により n − 1-次元球体の半径から R-倍の因子を括りだして
 
と書くことができる。変数変換 t = x/R を施して導かれる
 
は次元 n における比例関係を示すものになっている。帰納法によって、全ての次元で比例関係は真である。

2次元漸化式編集

n-次元球体と (n − 2)-次元球体の間の体積の漸化式の証明は、上記の比例式と円筒座標系における積分を用いて与えられる。球の中心を通る平面を固定する。r を球面の中心と平面上の点との距離とし、θ を方位角とする。n-次元球体と、半径と方位角を固定して定まる (n − 2)-次元平面とを交わらせれば、半径 R2r2(n − 2)-次元球体が与えられる。球の体積は、従って (n − 2)-次元球体の体積の、取りうる半径および方位角に亘る逐次積分

 
として書くことができ、この方位角座標に関する積分は直ちに計算できる。比例関係を適用することで、この体積が
 
に等しいことが示される。u = 1 − (r/R)2 と置換することによって積分を評価することができ、
 
を得る。これが2次元漸化式である。

体積公式の帰納法による証明に同じ手法を用いることができる。帰納法の基底段階は 0-次元球体と 1-次元球体であり、ここで Γ(1) = 1Γ(3/2) = (1/2)Γ(1/2) = π/2 という事実を用いて簡単に直接確認できる。再帰段階は上記と同様であるが、(n − 2)-次元球体の体積に比例関係を適用する代わりに、帰納法の仮定が適用される。

1次元漸化式編集

比例関係は n-次元球体と (n − 1)-次元球体の体積の関係に関する漸化式の証明にも使われる。比例式の証明の際に見たように、n-次元球の体積は (n − 1)-次元球体の体積の積分として書くことができる。置換の代わりに、比例関係を被積分関数に現れる (n − 1)-次元球体の体積に適用し、

 
を得る。被積分関数は偶関数であるため、対称性によって積分区間を [0, R] に制限することができる。区間 [0, R] 上で u = (x/R)2 なる置換を適用することができるから、式は
 
と書き換えられる。この積分はベータ関数 Β(x) と呼ばれるよく知られた特殊関数のある値に等しく、求める体積はベータ関数を用いて
 
となる。階乗と二項係数との関係とほぼ同じ意味で、ベータ関数はガンマ関数を用いて表されるから、その関係式を適用して
 
が得られる。値 Γ(1/2) = π を用いて1次元漸化式
 
が得られる。

2次元漸化式と同様に、体積公式の帰納法による証明を得るために同じ手法を使用することができる。

球座標における直接積分編集

体積を球座標における体積要素の積分によって計算することができる。球面座標系は動径座標 r と偏角座標 φ1, …, φn−1 を持つ。ここで φn−1 を除く各 φi の変域は [0, π) であり、φn−1 の変域は [0, 2π) である。球体積要素は

 
で与えられる。そして求める体積は、r0 から R までと、角は取りうるすべての値に亘って取った積分
 
に等しい。被積分関数の各因子は一変数のみに依存するため、従ってこの逐次積分は積分の積
 
として書くことができる。動径成分の積分は Rn/n に等しく、また偏角成分の積分区間を対称性により [0, π/2] と書き換えれば
 
を得る。残った各々の積分はいまやベータ関数の特定の値で、
 
となる。ベータ関数はガンマ関数に書き換えることができ、
 
を得るが、この積は連鎖的に約分して畳み込める。値 Γ(1/2) = π, Γ(1) = 1 関数等式 zΓ(z) = Γ(z + 1) を組み合わせて
 
が導かれる。

ガウス積分編集

体積公式はガウス積分を用いることにより直接証明することができる。関数   を考えると、この関数は回転不変かつ各々一変数の函数の積になっている。これが積に書けるという事実とガウス積分の公式を適用して

 
が得られる。ここで dVn-次元体積要素である。回転不変性を用いれば、同じ積分を球座標に関して
 
と計算できる。ここで Sn−1(r) は半径 r(n − 1)-次元球面であり、dA は表面積要素(すなわち (n − 1)-次元体積要素)である。球面の表面積は、球体の体積に関するのと同様の比例関係を満足する。すなわち An−1(r) を半径 r(n − 1)-次元球面の表面積とすれば
 
が成り立つ。上記の積分にこれを適用すると
 
なる式を得る。置換 t = r2/2 を適用すれば、この式は
 
と変形でき、これはガンマ関数の n/2 における値である。

二つの積分を併せれば

 
が示される。この式から半径 Rn-次元球体の体積を導出するには、半径 r (0 ≤ rR) の球面の表面積を積分し、関数等式 zΓ(z) = Γ(z + 1) を適用すればよい。そうして
 
が得られる。

Lp-ノルムに関する球体編集

Lp-ノルムに関する球体の体積に対しても明示式が存在する。Rn のベクトル x = (x1, …, xn)Lp-ノルムとは (∑ |xi|p)1/p のことであり、Lp-球体とはその Lp-ノルムがその球体の半径と呼ばれる決まった数以下となるようなベクトル全体の成す集合のことを言う。p = 2 の場合は通常のユークリッド距離函数であり、それ以外の p情報理論符号理論次元正則化英語版などの様々な文脈において現れる。

半径 RLp-球体の体積は

 
で与えられる。これら体積は p = 2 に対する一次元漸化式と同様の漸化式
 
を満足する。2Γ(3/2) = π であるから、p = 2 として、ユークリッド球体の体積に対する漸化式が再び得られる。

例えば p = 1 および p = ∞ の場合、体積は

 
 
で与えられる。これらは正軸体および超立方体の体積に関する初等的計算と一致する。

ほとんどの p の値に対して、Lp-球面(Lp-球体の境界)の表面積は、Lp-球体の半径に関する微分として計算することはできない。一方、余面積公式英語版を用いて、体積を表面積上の積分として表すことができる。余面積公式には、点から点へ p-ノルムがどのくらい変化するかを考慮した相関係数が含まれる。p = 2 および p = ∞ に対してこの因子は 1 だが、p = 1 ならば相関因子は n である(半径 R(n − 1)-次元 L1-球面の表面積は n 掛ける L1-球体の体積の R における微分係数)。ほとんどの p の値に対してこの定数は複雑な積分になる。

体積公式はさらに一般化することができる。正の実数 p1, …, pn に対して、単位 (p1, …, pn)-球体を

 

と定義する。この球体の体積は

 
で与えられることがディリクレの時代から知られている[2]:164–168[3]:390–395

注釈編集

  1. ^ ここでは半径の n-乗に対する比の意味でいう。半径 1 の超球体の体積と言っても同じことである。n = 2 のときこれが円周率(の面積による定義)に等しいことを確認せよ。

参考文献編集

  1. ^ Equation 5.19.4, NIST Digital Library of Mathematical Functions. http://dlmf.nist.gov/, Release 1.0.6 of 2013-05-06.
  2. ^ Dirichlet, P. G. Lejeune (1839). “Sur une nouvelle méthode pour la détermination des intégrales multiples”. Journal de Mathématiques Pures et Appliquées 4. 
  3. ^ Wang, Xianfu (Dec 2005). “Volumes of Generalized Unit Balls”. Mathematics Magazine 78 (5). 

関連項目編集

外部リンク編集

  • http://www.brouty.fr/Maths/sphere.html (derivation in hyperspherical coordinates.)
  • Weisstein, Eric W. "Hypersphere". MathWorld(英語).
  • http://www.mathreference.com/ca-int,hsp.html