迎え酒

二日酔いの症状を緩和させるために飲む酒(ただし二日酔いの状態が軽快することはない)

迎え酒(むかえざけ)とは二日酔いを緩和させるために飲む[1]

日本では、迎え酒を飲む風習が江戸時代にすでに存在しており、同時代の川柳でも「迎ひ酒あたまてんてんしては呑み[2]」「あはれなるつらでぐびりと迎へ酒[2]」と詠まれている[1]昭和中期にも、迎え酒は二日酔いの原因とされる体内のアセトアルデヒドの濃度を薄め、利尿作用によってアセトアルデヒドの尿中移行を促すといった意見もあった[3]

しかし平成以降の日本の研究では、エタノールの効果で中枢神経系が抑制されて痛覚などが鈍るため、二日酔いの症状である頭痛吐き気などが緩和されているに過ぎず[1]、いわば迎え酒による対処は「気のせい」「その場しのぎ」と考えられている[4][5][6]。さらに迎え酒によってアセトアルデヒドが新たに生じるといった悪循環も生じ、迎え酒が習慣化することによってアルコール依存症になりうることや[1][6]、飲み過ぎによる中性脂肪の増加の可能性も指摘されている[6]

ただし、海外の研究では迎え酒は、二日酔いを一時的にとめる(遅延効果)ことができるとされる。[7][8][9][10][11]

脚注 編集

  1. ^ a b c d 太田 2003, pp. 266–268
  2. ^ a b 太田 2003, p. 267より引用。
  3. ^ 中尾進彦『日本酒入門』保育社カラーブックス〉、1973年3月、266-267頁。 NCID BN04977841 
  4. ^ こんな飲み方は、しない、させない”. サントリーのアルコール関連問題への取り組み. サントリー. 2017年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月2日閲覧。
  5. ^ 二日酔いに迎え酒”. 心とからだの健康. 富士山マガジンサービス (2010年1月5日). 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月2日閲覧。
  6. ^ a b c 石原詢也 (2009年9月20日). “「迎え酒」は二日酔いの解消に本当に効果があるのか?”. 中性脂肪がみるみる下がる最新情報100. 2012年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月2日閲覧。
  7. ^ Jones, A. W. (1987-03). “Elimination half-life of methanol during hangover”. Pharmacology & Toxicology 60 (3): 217–220. doi:10.1111/j.1600-0773.1987.tb01737.x. ISSN 0901-9928. PMID 3588516. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3588516/. 
  8. ^ Calder, I. (1997-01-04). “Hangovers”. BMJ (Clinical research ed.) 314 (7073): 2–3. doi:10.1136/bmj.314.7073.2. ISSN 0959-8138. PMC 2125562. PMID 9001463. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9001463/. 
  9. ^ Chapman, L. F. (1970-05). “Experimental induction of hangover”. Quarterly Journal of Studies on Alcohol 5: Suppl 5:67–86. ISSN 0033-5649. PMID 5450666. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5450666/. 
  10. ^ Marx, Christopher J.; Van Dien, Stephen J.; Lidstrom, Mary E. (2005-02). “Flux analysis uncovers key role of functional redundancy in formaldehyde metabolism”. PLoS biology 3 (2): e16. doi:10.1371/journal.pbio.0030016. ISSN 1545-7885. PMID 15660163. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15660163/. 
  11. ^ Bendtsen, P.; Jones, A. W.; Helander, A. (1998-07). “Urinary excretion of methanol and 5-hydroxytryptophol as biochemical markers of recent drinking in the hangover state”. Alcohol and Alcoholism (Oxford, Oxfordshire) 33 (4): 431–438. doi:10.1093/oxfordjournals.alcalc.a008415. ISSN 0735-0414. PMID 9719404. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9719404/. 

参考文献 編集