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都鄙問答(とひもんどう)は、江戸時代中期に成立した心学運動の経典というべき書である。町人道を説いた。問答体による構成は四巻16段からなっている。著者は丹波桑田郡東懸村(京都府亀岡市)の百姓の出の商人市井学者石田梅岩(いしだ ばいがん、1685年(貞享2年) - 1744年(延享元年))。1739年元文4年)刊。

概説編集

封建社会の儒教倫理に沿って職能として士農工商それぞれの社会的意義を考え、経済と道徳の一致を説き商人にも流通の役割の価値を見出し、利益を追求することの正当性を強調している。

  • 第一巻は序論として人の本性を知ることと、教養を高めようとする座学よりも、修行や実践を通じた経験に裏打ちされた物にこそ価値があると説いている。さらに、孝行の心や士農工商それぞれに階級的な職分に応じた倫理道徳があると述べている。
  • 第二巻は、仏教や神道についても、互いに反目しあうものではなく神・仏・儒・老荘のいずれの教えにも修養の助けになるものがあり教えから取り入れるべきであると説く。さらに商人にも学問が必要で、教育を受け正しい利益を得るのは侍の俸禄と同じで当然と説く、商人の社会的意義を強調し職分上は平等であるという。
  • 第三巻は「性理問答の段」で朱子学的な心の問題を追及している。
  • 第四巻では「学者行状心得難キヲ問ウ」の段以下6段。信仰や医学、はたまた借金に至るまでの身近な問題についての問答でいずれも観念的でなく、町人の生活に密着した実例を挙げその他対処法も平易に説くところに魅力がある。

人物編集

実践を重視し日常生活は質素倹約に徹し、独身を通し連日の講義を実施し門弟たちとの定例会を開いて信条の普及に努めた。私的な利益よりも公的な利益を優先し社会的な福祉事業にも意を砕いた。京の貧困者に施行を行ったり、大火のときは炊き出しをしたりしている。幕末まで続く「陰徳箱」等の嚆矢といえよう。こうした梅岩の意思を継いだ主な門弟に手島堵庵布施松翁柴田鳩翁大島有隣中沢道二等がいる。

参考文献編集

  • 柴田實 『石田梅岩全集』上下巻、清文堂出版、1972年
  • 石川謙 『石門心学史の研究』 岩波書店、1975年
  • R・Nベラー著 堀一郎訳 『日本近代化と宗教倫理 日本近世宗教論』 未来社、1981年
  • 石田梅岩著 城島明彦現代語訳 『石田梅岩『都鄙問答』』 致知出版社、2016年9月25日、ISBN 978-4-8009-1126-1

関連項目編集